第19話 無限書庫
わざわざミッドまで来てユーノに届けたなのはのお弁当。
食べる前に一騒動あったけど、それもやっと落ち着いた。
まぁ、あまり気にすると疲れるから良いけどね。
片付いたテーブルの上には、なのはが作ったお弁当が所狭しと並べられる。
オニギリから始まり、卵焼きに竜田揚げ、ポテトサラダ……。
あれ、この間屋上で見たメニューな気がするんだけど。
(なのは、もしかしてこれ……)
(え!? タロー君が念話を使ってるの!?)
(そうだよ。便利そうだから使えるように頑張ったんだ)
(えっと……リンカーコアがない人が頑張っても使えるようなモノじゃないの!)
(そうなの? それよりこのメニューって、屋上のお弁当対決の?)
(う、うん。あの後、アリサちゃんにすずかちゃん、はやてちゃんに作り方を教わったの)
(そうなんだ〜)
ほー、それでこれだけ作れれば大したもんだ。
ユーノもお腹が減ってるようだし、アルフは既にヨダレが垂れてるみたいだから、早く食べ始めないと可哀想だな。
「じゃあ、なのは。どうぞ」
「は、はいなの。一生懸命作ったんだけど、まだあまり上手くないから美味しくないかもしれないけど、どうぞ召し上がってくださいなの」
「「「「いただきまーす」」」」
一応ユーノが最初の一口を食べるまで待ってから食べ始める。
なのはもジーっと見ていたしね。
「ユーノ君、味はどうかな?」
「うん、美味しいよ」
その言葉を聞き、見るからにホッとするなのは。
不安だったんだろうね。
「良かったの……」
「これなら毎日でも食べたいね」
「そ、それは……その……うん……。私、もっと色々な料理が作れるように頑張るね」
「うん、楽しみにしてるね」
真っ赤になりながらなのはは答え、ユーノはどんどんと食べていく。
(ねぇ、リニス。あれってプロポーズかい?)
(何だかそんな気がしますけど、気にせず自然に言ってる節がありますね)
(そうだよねぇ〜)
(ある意味ユーノはタローに近いかと)
(あ〜、なるほどね)
おや、念話で僕の悪口が聞こえたような……。
(あの言葉で誤解するなという方が難しいでしょ)
(うんうん)
(さ、そんな事より残さず食べましょう)
(そうだねぇ)
お昼ご飯の時間が遅くなったせいもあり、みんないっぱい食べてたよ。
なのはがいっぱい作って来たはずのお弁当は空っぽだ。
「「「「ご馳走様でした」」」」
「お粗末さまでした」
リニスがお茶を入れてくれて、それを飲みながら一息つく。
ユーノがいっぱい食べてくれたのが嬉しいのか、なのははニコニコしっぱなしだ。
「そう言えばユーノ。今日中に調べ物が終わるって言ってたけど、どんな具合なんだい?」
「ん? そうだね。無限書庫から検索でヒットした資料は、全てここにあるだけまで絞り切ってるんだ。ほとんど確認も終わってるし、後2時間もやれば欲しかった情報は全て手に入るよ」
「それじゃ、ユーノ君と一緒に帰れるの?」
僕とユーノの会話になのはが急に入って来た。
まぁ、ユーノがもしかしたら一緒に帰れるなら、そんな反応にもなるのかもしれないけどさ。
「そうだね。魔力が回復できて、集中出来ればもっと早く終わるかも」
「うん、分かったの。レイジングハート!」
『All right. my master!』
ユーノの言葉になのはは笑顔で返事をして、レイジングハートを起動させる。
そして杖の先をユーノに向けるんだけど、大丈夫だよね……。
「ディバイドエナジー!」
『Divide Energy.』
レイジングハートを通してユーノになのはの魔力が流れ込む。
……流し込み過ぎ?
「な、なのは。もう僕の魔力は満タンだから大丈夫だよ」
「そうなの? まだまだ渡せるから言ってね」
「う、うん。ありがとう。それじゃ残りを張り切って、急いで終わらせるね」
「うん! ユーノ君が集中して出来るように、アルフさんとタロー君は外に連れて行っておくね」
「「え!?」」
なのはの言葉に思わず声を出してしまった僕とアルフは悪くないと思うんだ。
だって集中を妨げる原因と言ってるようなものじゃないか……。
「さ、二人共。お外へ逝こうなの」
「「う、うん……」」
何だか不吉な字が見えたけど、気のせいだよね。
アルフは耳も尻尾もしっかり畳んでしまったし……。
扉を出る際にみんなに手を振り、僕とアルフはなのはの後を歩いて行く。
それにしてもプレシアさんの依頼から、まだ2週間かかってないのにユーノは凄いな〜。
管理局をアルフの案内で見学……とは行かずに、カフェテラスでコーヒー飲んだりしながら時間を潰したよ。
なのははずっとソワソワしていたけど、一度も部屋に戻ろうと言わなかったな。
1時間ちょっと経つと、ユーノからなのは宛の念話が聞こえてきた。
(もしもし、なのは?)
(ユーノ君!)
(全部終わったから無限書庫に資料を返してくるね。アースラ集合で良いかい?)
(うん!)
(それじゃ、アースラで)
(分かったの!)
丁度良い時間だね。
2時間って言ってたのに、1時間ちょっとで終わらせるとは、恐るべしユーノ……。
既に帰り道が僕には分からなくなっていたので、アルフの案内でアースラへ向かう。
なのははご機嫌でニコニコしっぱなしだ。
「ただいまー」
「お帰りー」
アースラの食堂へ戻ると、プレシアさんとフェイトが仲良く話をしていた。
親子水いらずでゆっくりと出来たみたいだね。
「プレシアさん。ユーノが……」
「あ、大丈夫よ。既にリニスから報告が来てるわ」
「そうなんだ」
さすがは主人と使い魔の関係だね。
この便利さは凄いね。
そしてしばらくするとユーノ達が戻ってきた。
使い魔契約解除の儀式を済ませ、使い魔たちを開放する。
開放すると言っても元は死体なので、管理局にある使い魔用の共同墓地に埋葬してもらうらしい。
ちゃんと供養してあげられるのは良いね。
その後補給を済ませたアースラは地球へ向かうこととなった。
まぁ、僕達を送り届けてくれるだけなんだけどさ。
行きよりも時間がかかるというので、暇な時間が結構ある。
そこでなのはとフェイトは模擬戦をやりに行ってしまった。
なんでも、フェイトがプレシアさんに新しく教えて貰った魔法の練習も兼ねるらしい。
そのため、アルフが結界担当で付いて行き、クロノも安全管理として行ってしまった。
リンディさんとエイミィさんはブリッジへ戻っているので、食堂に残ったのは僕とユーノ、プレシアさんとリニスの4人だ。
「丁度みんな居ないので、今のうちに報告をさせてもらいます」
ユーノの言葉にみんな頷き、リニスは防音効果などがある結界を張る。
その結界が発動したのを確認し、ユーノは話を始める。
闇の書は本来“夜天の魔導書”と呼ばれ、主と共に旅をして、各地の偉大な魔導師の技術を収集し、研究するために作られた収集蓄積型の巨大ストレージ。
しかし、現在は歴代の持ち主の何人かがプログラムを改変し、旅をする機能が転生機能に、復元機能が無限再生機能へと変化してしまった。
「じゃあ、そのプログラムを直せれば良いの?」
「タロー、そんなに簡単に行かないんだよ……」
真の持ち主以外によるシステムへのアクセスを認めないし、無理に外部から操作をしようとすると、持ち主を呑み込んで転生してしまう。
ゆえにプログラムの停止や改変ができないので完成前の封印も不可能。
「じゃあ、持ち主にお願いすればシステムにアクセス出来るんだね」
「そうだね。でも、そう簡単じゃないんだ……」
まず闇の書が起動し、蒐集をしてページ数が400頁を超え主の承認があると管制プログラムの人格が起動。
管制プログラムの発動と具現化には、闇の書の全頁である666頁の蒐集と主の承認が必要。
「あれ? 全部埋まったら駄目なんじゃなかった?」
「そうなんだよ。マスターが強い意志を持ち、暴走をする前に抑えこまなきゃいけない」
「それに、管理者権限を得るには管制プログラムだけではなく、防御プログラムの認証を受けなければいけないんです」
「そして最大の問題点である防御プログラムの破損により、この認証が正常になされず幾度も暴走を起こしていたんだよ」
僕の疑問にユーノとリニスが答えてくれる。
あまり難しい話は分からないけど、闇の書って厄介なんだな〜。
プレシアさんはそれを聞きながらずっと悩んでるし……。
どうすればいいんだろうね?