第24話 ギル・グレアム
八神家を監視している魔導師が猫素体の使い魔だと判明した。
しかもリニスクラスの高性能な使い魔である。
それにより主は最低でも魔導師ランクがSオーバーとなる……。
「情報を整理したいわね。タロー、貴方が知ってることを全て教えなさい」
「え? 闇の書とかのことってプレシアさんとかから聞いた話しか知らないよ」
イキナリの振りに戸惑ってしまう。
僕が魔法とかについて知ってるわけないじゃないか。
「いや、タローは何だかんだと全員に関わってるだろ。君が気にしていないだけで、実は重要な情報っていうのがあるかもしれないよ」
ユーノの言葉に頷くプレシアさん。
そんなものなのかね〜?
「大体、ジュエルシード事件の時だって、事件前からリニスを知っていたり、フェイト達と関わっていたり……」
「余罪はたくさんあるということよ」
2人して酷い言いようだな。
でも、僕には気にして無くても、2人はそれを情報として役に立てるか。
「分かりました。でも、あんまり役に立たなくても許してよ」
「大丈夫だよ。あくまで役に立つ情報があるかも知れないって程度だからさ」
「はいはい。んじゃ、はやてとの出会いからか……」
今日まであったことを程々に話す。
起きたイベントや、誰が何をやったか……。
たまに2人が詳しく聞いてくるものもあったけど、それも合わせて答え終える。
「「…………」」
「以上だよ。何か役に立つことあった?」
「タロー……クロノにあっさり話してるってどういうこと!?」
「いや、仲間ハズレは良くないし、クロノなら僕よりも考えてくれるからさ」
「まぁ、それは良いとしても、対象の八神はやてにまでバレたとかって……」
「いやぁ、子供でも女性は鋭いもんだね」
「明らかにキミがバラしているようなものじゃないか……」
ユーノはそう言うと心底疲れた顔をしてため息をつく。
何かいけなかったかな?
「そのことについては後でゆっくりお仕置きするとして、八神はやての財政管理をしてくれるおじさんって人が、ギル・グレアムと言うのは本当なのね」
ちょっと強めの口調でプレシアさんが僕に問い詰めてくる。
びっくりしたけど、ちゃんと頷いたよ。
「間違いないよ。はやてが僕らと撮った写真を送った相手だから」
「それなら監視の使い魔が現れた時期、その使い魔の強さが納得行くわね……」
僕の言葉にプレシアさんはブツブツと喋りながら考えをまとめている。
何か役立つ情報あったのかな?
それよりもお仕置きが気になるんですけど……。
「タローは本当に凄いよ。キミのもたらした情報で色々理由がついた」
「ホント、タローは何なのかしらね。とりあえず貴方が言ったことが、どれだけ重要な情報なのか教えてあげるわ……」
ギル・グレアム……はやてのおじさんと言う顔だけでなく、11年前の事件で提督を務め、クロノの父親の最後を看取った人。
そして時空管理局歴戦の勇士と呼ばれ、時空管理局顧問官を務める局の重鎮。
多分闇の書への恨みは人一倍有るだろう。
しかも、はやてが現況を手紙で送ってから、八神家監視の使い魔が現れた。
「そして管理局では数少ない魔導師ランクSS+よ。私のように条件付きSSなのと違い、純粋なランクだから相当の実力者よ」
「しかもリーゼ姉妹という、猫素体の使い魔を2人持っていることでも有名なんだ。その片方が八神家を監視している訳」
僕の言葉からここまでまとめるって流石だね。
「2人ともすごいな〜」
「「はぁ〜」」
2人して深いため息をつく。
なんで?
「私達よりもタローがそこまでの情報を持っていることのほうが驚きよ」
「はっきり言うと、足りなかったピースが殆ど埋まったようなものなんだ。それで今後の流れだけど……」
はやてにプレシアさんが詳しく説明するために、使い魔を誕生日の日だけ八神家から離す。
闇の書の起動を待ち、出てくる守護騎士と話し合いの場を持つ。
闇の書を直接分析し、管制プログラムと防御プログラムの詳細調査。
闇の書に魔力を補充し、400頁を超えたら管制人格と対話。
666頁を集め管制人格の具現化、防御プログラムのオリジナルデータをインストールする。
そして、管制プログラムと防御プログラムの認証を受け、管制人格を通し改悪プログラムを書き換えて呪いを解き、元の夜天の魔導書へ戻す。
「とりあえず使い魔の件はクロノに頼んでみたらどうかしら?」
「うん、分かった。今日は遅いから明日電話で頼んでみるよ」
「それと問題は闇の書への魔力補充だね。この辺もクロノに協力してもらわないと……」
「それも伝えれば良いかい?」
僕の言葉に2人は頷く。
何だかんだとクロノがキーパーソンなんじゃないか。
「リンディには折を見て私から話すわ。ユーノはなのはにお願いね」
「はい。なのはは純粋だから、ポーカーフェイスとか苦手なんだよね。だから、落ち着いたら話します」
ナチュラルに惚気た?
まぁ、いいや。
「あら、ウチのフェイトも純粋で可愛いわよ」
「いや、張り合わないでください……」
プレシアさんの言葉に思わずツッコんでしまったよ。
それにより凄い睨まれたんだけど……。
「フェイトの可愛さは今度話すとして……。ユーノ、貴方のデバイスが完成しているのよ」
「本当ですか!」
「ええ、これよ」
プレシアさんが出してきたのは指輪。
両手で囲まれ王冠が載ったハートのデザインがある。
ユーノはそれを大事に受け取る。
「最初はグローブにしようと思っていたのだけど、エンゼと接触して干渉する可能性があるから避けて、リングにしたわ」
「ありがとうございます。それで、このデバイスの名前はなんですか?」
「クラダリング。基本的に防御魔法の強化に特化しているから、自分で把握しておいてね。頼まれた通り、鋼糸や飛針が直接展開出来たり、普通に収納できるような細工になってるわ」
「助かります。これで僕もなのはの隣で戦える」
ユーノは右手の中指にクラダリングを装着する。
よほど嬉しいのか、指輪を触ったり眺めたりしているね。
いや、デバイスそのものより、なのはの隣で戦えるのが嬉しいのか……。
そして今日は解散となった。
次の日の夜、クロノに連絡をとる。
「もしもし、クロノ? タローだけど、今は大丈夫かい?」
「ああ、タローか。ちょっとだけ待ってくれ」
そう言うと電話の向こうからキーボードを叩く音がしばらく続く。
「もう大丈夫だ。今日の仕事は終わりにしたよ」
「忙しいところに悪いね。頼みたいことがあってさ」
「夜天の魔導書の事か。……それとも次の厄介事か?」
そう言ってクロノの笑い声が聞こえる。
僕をバカにしてるんだか、遊んでるんだろうな。
「次って何だよ〜。夜天の魔導書のことに決まってるだろ」
「冗談さ。話を続けてくれ」
「ああ。まずは新しい情報からだけど……」
昨日プレシアさん達がまとめた情報を伝える。
そして今後の流れも……。
グレアムの名前を出した時点で、クロノはかなり動揺してしていたな。
「それは本当のことなのか?」
「プレシアさん達の推測も多少は混ざってると思うけど、あの2人が言うんじゃ間違いないよ。後でユーノ経由になるけど、使い魔の猫形態の画像を送ろうか?」
「あぁ、一応頼む。何かに使えるかも知れないからな。とりあえず使い魔の件は何とかするから、僕に任せておいてくれ」
クロノの言葉に安心する。
しかしバレなければいいけどね。
「あぁ、頼むよ」
「その後の話は地球に行った時に、直接みんなで話し合おう。それじゃ、色々やることが増えたから電話を切るぞ」
「ありがとうね」
「お互い様さ。これが父さんの供養にもなる。それじゃ、また……」
「ああ、またね」
電話を切った。
その後、ユーノにメールで画像を送ることを依頼しておく。
これからが本番となるわけか。
闇の書の起動っていつになるんだかな〜?
次の日、いつもの様に学校が終わり、放課後にやる野球の練習が終わって帰る途中に、はやての誕生日プレゼントを探しに芽野町へやって来た。
ここにはヤマダスポーツと言うスポーツ用品店がある。
なかなかの品揃えで良いんだよ。
とりあえず、はやてのグローブを購入っと。
僕とキャッチボール出来れば、色々と分かることもあるからね。
これを女の子の誕生日プレゼントにするのは、オカシイんだろうけどさ……。