第26話 誕生パーティー
野球の試合に久々のスタメン出場。
チームも絶好調でコールド勝ちするほどだった。
毎回こんな調子で勝って行けるとイイね。
午後の練習を終えて帰る時に、携帯電話を見てみるとメール受信があった。
相手はプレシアさんからで、内容は八神家監視の使い魔が先ほどいなくなったというもの。
クロノは上手くやってくれたようだね。
これで明日は安心してはやてに説明出来る……かな?
そして次の日。
はやての誕生パーティーだ。
出席者は僕、はやて、アリサ、なのは、すずか、プレシア、リニス、イレイン、ユーノの9名。
10時前に八神家へお邪魔する。
敷地に入る前に気配を探るけど、特に知らない人の気配はないようだ。
「お邪魔しまーす」
「嫌やわ〜。タロー、ただいまって言ってみてくれへんか?」
「ん? 良いよ」
玄関を開けたらはやてにそんな事言われたので、一回外に出てまた入ってくる。
「ただいま」
「おかえりなさいア・ナ・タ。食事にします? お風呂にします? それともワ・タ・シ?」
はやてがお約束の冗談を言ってくる。
これは答えてあげるのが僕の役目なのかな?
「それなら、はやてをいただこうかな」
そう言ってはやての顎に手を添える。
ボッと音がする様な勢いではやての顔が真っ赤になる。
「え、あ、その……なぁ……」
「冗談だよ。家に入って良いのかい?」
「う、うん。……アホ(ボソ)」
折角ノってあげたのにアホ呼ばわりとは酷いな。
リビングへ行くとプレシアさんがいそいそと働いていた。
「こんにちは。早いですね」
「あらタロー、こんにちは。今日は料理係だから貴方で遊んでる暇はないのよ」
僕で遊ぶ……?
そんな事を思っているとキッチンからリニスの声がした。
「プレシアー、こっちは準備できましたよー」
「はーい、今行くわよー。それじゃ、料理を楽しみにしてなさい」
プレシアさんはパタパタとキッチンへ行ってしまった。
忙しそうだから、邪魔しないでおくか。
しばらくはやてが玄関から戻って来なかったけど、アリサとすずかを連れて戻ってきた。
2人と挨拶してソファーに座る。
「はやて、玄関から戻ってくるのが遅かったけど、何やってたの?」
「え? あ、い、いややわー。何もしてへんよ。10時にアリサちゃんとすずかちゃんが来るって言(ゆ)うてたから、待ってたんよ」
はやては慌ててそう返すけど、顔が真っ赤だな。
まぁ、いいか。
「そうなんだ」
「そうやで。別に何もあらへんよ。それよりも私をソファーへ移動させてくれへんかな?」
「ん? 良いよ」
はやてを抱きかかえてソファーへ移動する。
妙にアリサから視線を感じるんだけど……。
「ありがとさん。タローも座りぃや」
「うん、分かった」
はやての横に座ると、さらに僕の横にアリサが座ってきた。
「ゲーム持って来たからやりましょうよ」
「ええで。ゲームで私に勝てるかな?」
「持ち主を舐めてもらっちゃ困るわよ」
そして4人でゲームを始めるんだけど、実はテレビゲームってさっぱりわからないんだ。
かろうじて分かるのは、ゲームウォッチのドン○ーコング。
今のゲームは操作方法がさっぱり分からないんだけど、キャラクターはドンキー○ングがいたので僕はそれを使う。
案の定みんなにヤラレっぱなしだったけど、わいわい楽しめたから良いんだ。
言うだけあって、アリサとはやては凄い上手かった。
だけど4人での乱戦だから、その隙に勝利を重ねていくのはすずかだった。
僕は当然全敗でした……。
ゲームをやってると、なのはとユーノがやってきた。
翠屋のケーキを持って来たんだけど、これは作るのに2人も参加したようだ。
だからお昼前になっちゃったんだね。
時間的に料理も完成したようで、イレイン達が料理を並べて、みんなでテーブルへ移動する。
はやてはまた僕に移動するように頼んで来たけど、イレインは……忙しそうだから僕なのか。
ケーキと料理が用意できたので、ロウソクに火を灯し、Happy Birthdayの歌を歌う。
そして歌い終えると、はやてがひと息でロウソクの火を消す。
みんなの拍手を聞いてなのか、はやての目に涙が……。
「嫌やわ……。泣くつもりなんてあらへんのに……」
一生懸命涙を手で拭くはやて。
「今までずっと1人やったんや……。それが今年になってこんなに友達が……」
「泣きたいなら泣けば良いさ。でも、誕生パーティーはこれから毎年やるんだぜ」
「そうよ。これで泣いてたら脱水症状になるわよ。あんたは笑ってツッコんでなさい」
「はやてちゃん。私たちはずっと友達だからね」
「名前を呼び合ってるから、私たちはもう友達なの。これからもずっと」
「そうだよ。はやてはいずれ歩けるようになる。そしたらもっとみんなで遊べるんだよ」
ユーノ、それはまだ未確定……いや、違うね。
「そうさ。必ず脚も良くなるし、色々あるけどそれが落ち着けば、はやても普通に過ごせる。だから今は思い切り泣いて、その後は誕生パーティーを楽しもうよ」
「うん……うん……」
はやては僕の胸に顔をつけて思い切り泣く。
1人で生きてきただけあって、色々と溜め込んでたんだろうな。
他のみんなも涙ぐんでるよ。
その後、はやてが落ち着いてから、みんなで料理を食べる。
プレシアさんの料理の腕は着実に上ってるね。
まだ、アリサやはやての方が料理上手なのは黙ってよう。
食事も終わり、誕生日プレゼントをはやてへみんなが渡す。
「はい、僕からプレゼント」
「ありがとうな。開けてもええか?」
「どうぞ」
僕の返事を聞く前にはやては開け始めていた。
じゃあ、聞かなくても良かったんじゃ……。
「これは……」
「ん? グローブだよ」
「足の動かん私にグローブ渡してどないすんねん! それに女の子にプレゼントするもんやないわ!」
「そう? 実用性たっぷりだよ」
はやては笑いながらツッコミを入れてくる。
本気で怒ったりしてる訳じゃなさそうだ。
「タローだからしかたがないわよ」
「タロー君ならその選択はするね」
「タロー君らしいの」
「タローじゃ、そうなるよね」
そして全くフォローしてないみんな。
何だか酷い言われようじゃないか?
「そや、タローならこれぐらい想像するべきやった……。私のミスや……」
「ドンマイ」
僕はそう言ってはやての方に手を置く。
「タローが言(ゆ)うな!」
笑顔でツッコミを入れられても困るな。
他のみんなも笑ってるけどさ。
みんなからのプレゼントも受け取り、はやてはゴキゲンだ。
なんで僕のだけツッコミを入れるかな〜?
その後はゲームをしたり、お喋りをしたり、リニスが焼いたクッキーをおやつに食べたりと、遅くまで騒いだ。
テレビゲームは僕が全敗記録を更新した。
ユーノも初めてのゲームの癖に、何だか上手くやっている。
ちくしょう……。
トランプやUNOなら、そんなに負けないんだけどさ。
夕方になったので、各自解散となった。
アリサは鮫島さんが迎えに来て、すずかも一緒に乗って行く。
なんでもこれからバイオリンのお稽古だそうだ。
大変だな〜。
なのはとユーノは普通に2人で帰って行く。
きっと見えなくなったら手を繋ぐんだろうな。
僕はイレイン達のお片付けを手伝ってるよ。
高速皿洗い!
ほら、油汚れもスッキリ取れて、乾燥まで完了だ。
片付けが全て終了したところで、リビングにみんなが集まる。
はやては膝の上に闇の書を載せて……。
「さて、みんなが帰ったところではやてに説明をさせてもらうわ」
「よろしゅうお願いします」
「タローから話を聞いているようだけど、何処まで伝わってるか分からないから、最初から話すわね」
「はい」
プレシアさんの言葉に真面目な顔をして頷くはやて。
イレインとリニスも無言で頷く。
あれ、これ僕のことを酷く言ってるんじゃ……。
「まず、闇の書の前に魔法の存在からね。実は次元世界と言うものが……」
そこから長い説明が始まった。
途中に何度かイレインがお茶を入れなおしたりしたけど、魔法や管理局、ロストロギアに闇の書……。
全てをプレシアさんは話した。
「これで説明は終わり。何か質問はあるかしら?」
「今日来てくれたみんなも魔導師なんですか?」
「いいえ、魔導師はなのはとユーノだけよ。アリサとすずかは一般人」
「……タローは?」
「何かに分類できると思ってるの?」
「無理やね」
「じゃあ、良いわね。話を続けるわよ。闇の書に対する今後の方針なんだけど……」
あれ、軽く僕のこと除外した?
もう、いいや……。
プレシアさんは今後の方針をはやてに話し終える。
とりあえず闇の書が起動してからが勝負だから、必ず起動したら知らせることを約束をしたね。
イレインが闇の書に対して警戒をすることも。
「さて、これで話は終わりね。随分と時間がかかったわ」
「プレシアさんお疲れ様」
「ありがとうございます」
はやてとイレインは深く頭を下げる。
でもまぁ、こんなことを良く信じられるよね。
イレインが機械人形ってのを信じたから、その辺ははやての頭が柔軟なのかな?
……そういえば僕も普通に信じていた気がする。