第3話 家族
八神家に新しい家族が増えたよ。
やったね!(以下省略。タローのキャラじゃないのと、タローはそのネタを知らない)
「まずは家族として、家主としてみんなにやらなあかんことがある!」
はやての言葉に畏まる4名。
「それは……衣・食・住の用意や!」
「「「「は?」」」」
ポカーンとする4名。
そりゃ、訳がわからないよね。
「とりあえず住む場所はあるから、お夜食でも食べながら、みんなの服のことを考えようか?」
その言葉にイレインとリニスは台所へ移動する。
きっと、誕生パーティーの残り物を食べられるようにするんだろうな。
「でも、服を買いに行きたいけど、その格好で買いに行くのはちょっとなぁ〜。通販も届くまで時間かかるし……」
はやては、う〜んと言いながら悩み始める。
4名は話についていけてない……。
「あら、とりあえずでいいなら用意するわよ」
プレシアさんがそう言ってどこからか服を取り出す。
きっとデバイスからなんだろうけど、明らかに手品師だよな……。
「私のサイズのだから、シグナムとシャマルは着れると思うわ。ヴィータのはフェイトのだから問題ないと思うんだけど着てみてくれるかしら?」
「で、ですが……」
「あら、私よりスタイルがいいから着れないってこと? それとも胸がガバガバで、腰回りが窮屈で着れないのかしら?」
「「な!?」」
「自信がないなら逃げても良いのよ……守護騎士さん」
プレシアさんの挑発にワナワナと震えるシグナムとシャマル。
はやてはそれを見てニコニコと笑ってる……って、止めなさいよ。
2人とも服を奪うように取り、その場で着替え始める。
「プレシアと言ったな……。ベルカの騎士に逃亡の二文字はない!」
「若い私たちが着ても大丈夫なセンスなのかしらね?」
「あら、何百年も
バチバチと火花を散らせる3名。
いや、最初に煽ったのプレシアさんだから。
それよりも目の前でやらないで……。
「お前ら着替える場所を少し考えろ。タローが目の前に居るんだぞ」
「「はっ!?」」
ザフィーラの言葉に気が付き、半脱ぎの状態で隣の部屋へ移動して行く。
ちなみにヴィータは既に隣の部屋から着替えて出てきた。
「どうだ? あたし、こんな白い服は似合わねーんじゃねーか?」
「ヴィータ、かわええで!」
白いワンピースを着てきたヴィータに対して、はやては喜びの声を上げる。
わざわざセットで出した麦わら帽子までかぶって……。
プレシアさんはそれを見て頷いている。
「うん、これならフェイトに似合うわね。もう一着……いえ、三着ほど買ってこなければ……」
貴女真面目にやってませんね……。
そして、隣の部屋から出てきたシグナムとシャマル。
シグナムはデニムのショートパンツに、かぎ編みレースのタンクトップ。
シャマルはロングのスカートに、ノースリブラウス。
どっちも似合ってるね。
「ふん、丁度良いサイズではないか。動きやすくて中々にイイ」
「悪くないセンスね。これなら私が着ても平気だわ」
騎士とはいえ女性だけあって良い服は嬉しいようだ。
「あら、良く似合ってるわ。それはあげるから、とりあえず明日……いえ、今日の買い物には着て行きなさいよ」
「ありがたい」
「ありがとうございます」
「ありがとな」
三人三様の返事だったが、ちゃんと感謝しているのは分かる。
そこへ隣の部屋からジャージを着たザフィーラが出てきた。
「これは動きやすくてありがたい。プレシア、感謝する」
「男物は無いんだけど、アルフ用に買った大きめのジャージなら大丈夫だったみたいね」
「これはアルフと言う者の物だったのか……。すまないことをした」
「イイのよ。また買いに行く楽しみができるのだから」
頭を下げるザフィーラに、上手く返すプレシアさん。
さすがは大人のかわし方だね。
そんな着替えと雑談をしていると、お夜食の準備が整ったようだ。
暖められて湯気の出ている美味しそうな料理の数々。
新たに準備したであろうオニギリと味噌汁。
「はやて、準備できましたよ」
「イレインありがとうな。それではみんなで食べるで」
「ですが……」
「はい、シグナム減点1!」
遠慮しようとするシグナムにはやては減点を言い渡す。
……減点って何すんだよ?
「家族に遠慮は無用や! 迷惑をかけない範囲で好き放題やるんやで。ちなみに減点がたまると身体で払ってもらうで……」
ニヤニヤと笑いながら、手をニギニギするはやて。
お巡りさん、この人です!
「いや、冗談やからね」
「僕の心を読んで答えないでください」
「愛の力やね」
「……ポーカーフェイスを覚えないと駄目なのかな〜?」
毎回はやてには読まれている気がするんだよね。
いや、最近はみんなにもか……。
「はやてー、これ食べて良いのか?」
「ヴィータ!?」
「ええでー。好きなだけ食べるんや—」
「うん!」
ヴィータは我慢できずに言葉を発する。
お腹減ってるんだろか?
シグナムの反応を置いておき、みんな席に着いて食事をはじめる。
シグナムも慌てて食事を始めるが、途中で涙を流し始める……。
「こんな美味しい料理は久し振りです」
「前回のは酷い扱いだったからなー」
シグナムの言葉にヴィータが反応する。
「毎回記憶って残ってるの?」
「いえ、闇の書……夜天の魔導書に戻されると、記憶は薄れていくんですけど、それでも残ってるという記憶は大概嫌なことばかりなんです」
僕の質問にシャマルが嫌そうな顔で答える。
食事の場が少し暗くなったな。
その空気を打ち消すように、はやてが手を叩く。
「ほな、今回はたっぷり楽しもうや。闇の書を夜天の魔導書に戻して、開放されればずっと一緒に居られるんや」
「「「「はやて(ちゃん)……」」」」
4名ははやての言葉にまた涙ぐんだり、鼻水をすすったりしている。
余計シンミリさせてどうするんだこれ?
「さ、今は食べよ食べよ。これから忙しくなるんや。地球には“腹が減っては戦は出来ぬ”って諺もあるぐらいなんやで」
「はい! このスープは美味しいですね」
「それは味噌汁っていうんやで」
「そうなんですか……。この握り飯も美味しいです」
はやての言葉を皮切りに4名はガツガツと食事を食べる。
シグナムは味噌汁が気に入ったようだ。
「うまい、ギガ美味いよはやて!」
「ほんと、美味しいですよはやてちゃん」
「うむ、美味だ」
みんな思い思いに食事を摂る。
僕達も一緒に食べておかないと、お腹減っちゃうからなー。
食事を終え、イレインとリニスの入れてくれた食後のお茶を飲み、くつろぐみんな。
夜食と言いつつ、結構な量を食べた気がするなー。
「美味しかったなぁ〜」
「こんな時間にお腹いっぱい食べると……はやて太るぞ」
「タロー! レディにそんな事言うたらあかん! デリカシーに欠けるで」
「ごめんごめん。その分運動すれば良いんだよね……どうやって?」
「むー、そんな事言うタローはもう知らん。ちゃんと車椅子の移動で運動になるんや!」
僕の言葉にはやては拗ねてしまった。
女性に体重関係のことは禁忌だね〜。
小学生だから気にしなくても良いと思うんだけどな。
「はいはい、そこで遊んでるタローとはやて。悪いんだけど、監視が居ないうちにある程度動きたいから、今日は学校休みなさい」
「「はーい」」
プレシアさんの言葉に返事をする僕とはやて。
クロノがどれぐらい引き止めてられるかわからないから、先にやれることはやらないとね。
「イレイン、申し訳ないけどタローの家族への連絡と、学校への連絡はお願いね」
「はい、わかりました」
僕は後でノムさんにも連絡しておかないとな。
また野球の練習を休まないといけないのか……。
でも、闇の書を夜天の魔導書に戻す作業は八神家のためにも、しっかりやらないといけないからね。
僕が居て役に立つわけじゃないんだけどさ。
「リニス、ユーノにも連絡を取って、闇の書が起動したことを伝えておきなさい」
「はい、既にエンゼに送ってあります」
「ありがと。さて、これからが忙しくなるわ。闇の書が夜天の魔導書になれば、はやても歩けるようになるでしょうし、リハビリの準備もしないとね」
「そんときはタローが付き合ってくれるんやろ」
「イイよ。ちゃんと水の上や空中が歩けるように頑張ろうね」
「なんでやねん! そんな事出来るはずあらへんがな!」
ビシ! っと音のなるようなツッコミを僕にするが、良く分かっていないヴィータがボソッと呟く。
「でも、あたしたち飛べるぜ」
「くぅ、そう来たか! やるやないのヴィータ! ……あれ、私も魔導師やから飛べるんやないの?」
「ええ、練習すれば飛べるかもしれないわね」
はやての疑問にプレシアさんがあっさり答える。
そういえば魔導師組はみんな飛べるんだよね。
僕も空を自由に飛びたいな〜♪