にじファンではこれがラストになります。
移転先などの情報はあとがきに書いてあります。
050あらたに友達が出来たみたいです
「それじゃあ達也君、お願い」
「……っと、これで大丈夫かな?」
僕が魔法を覚える為に来ていた桜台の登山道で、再び魔法の練習をしています。今僕が使ったのが、封時結界になります。
僕程度がデバイスもなしに使えるレベルだと、なのはちゃんの単純な射撃魔法が当たっただけで崩されかねないのですが……。
「……うん。なのはが、思いっきり撃ったりしなきゃ大丈夫」
なんとリラちゃんが結界の強化が出来るというので、今日はリラちゃんも一緒に来ています。本人が言うには
「……境界がしっかりしてれば、何とかなるかも」
とのことだったので、やってもらっています。
「わ、ほんとだ。リラちゃん、すごいよ!」
割と強めに射ったディバインシューターが結界にあたりましたが、全くびくともしていません。……普段だったら、あの半分くらいの威力でも維持できるか怪しいんですけどね。
「……でも、内緒だよ……?」
興奮した様子のなのはちゃんに手を握られながら、リラちゃんが言いました。何かに怯えるような、そんなリラちゃんの様子を見ていると、この強化も『レアスキル』に分類されるのかな、と思います。
「じゃあ、僕たち三人の秘密だね」
まあ、この先魔法に関わる意思も必要性も無い僕にとってはどうでもいい訳なんですが。せいぜい、こうしてなのはちゃんが魔法の練習をするときに便利というくらいで。
そんなことを考えながら、リラちゃんと二人で桜色の光を放ちながら空を飛び回るなのはちゃんを見ていました。
「…………がとう」
小声でリラちゃんが何かを呟いた気もしましたが、口数が少なくても伝えたいことははっきりと言ってくるというのは分かっていたので、大したことじゃないんでしょう。
「じゃあ次は達也君の番だね」
「……?」
一通りやって満足したのか、僕たちのところに降りてきたなのはちゃんでしたが、僕の方を見ると急にそんなことを言いました。
「……? 達也君は、魔法の練習しなくていいの?」
あ、そういうことですか。
「しないよ?」
「ええー!? せっかく才能あるのにもったいないよー……」
僕があっさり練習を拒否すると、なのはちゃんは本当に残念そうな顔をしました。
「才能があるも何も、使えるってだけで才能があるかどうかは分からないよ」
そもそも、D+——じゃなくて、この間また上がってたからCか。……とにかく、さして高くないランクだし、才能があるとは思えないんだけどね。なのはちゃんとは、ええと……4つも違うわけで、それに高くなればなるほど上げるのも大変だろうし。
「でも、やってみないと才能があるか無いかは分からないよ?」
「それは否定しないけど、もっと他にやらなきゃいけないことはたくさんあるよ?」
例えば勉強とか。
まあ、僕もなのはちゃんも学年では上位に食い込んでいますし、そこまで必死にやる必要は無いのかもしれませんが。……上位にいる、というだけで、トップ争いをしているアディリナちゃんだったりアリサちゃんだったりには勝てる気がしないんですけど……。
「それに魔法が使えるようになって、将来何に使うのかなぁって」
僕が言った事の意味が分からないのか、なのはちゃんがきょとんとした顔をしています。
「そこまでは考えてなかったけど……で、でも! 空を飛ぶのは気持ちいいよ?」
あー、それはちょっとだけ気になってるんですよね。一応、初級の最後くらいの魔法らしいので、飛ぶだけなら近いうちに何とかなりそうです。
でも、僕が言いたいのはそういうことじゃなくて。
「んー……そうじゃなくて、この魔法を何に使うのかなって」
何とはなしに空を見上げて、今僕が知っている魔法を思い浮かべて見ます。
射撃・バインド・シールド・自己強化……。どう見ても、戦闘以外に使い道の無い魔法がたくさん並んでいました。もちろん、それ以外の使い方もたくさんあるのでしょうが、今まで見てきた魔導師全員が戦うことを前提にしていたみたいです。
「僕たちが教えてもらった魔法って、大部分が戦うための魔法だよね? もちろん、念話とか飛行魔法とか、それ以外のもあるけど。
……それでも、射撃魔法とかはすごく細かく分類されてて、たくさん使われてるだろうなっていうのは透けて見えるし。だから、魔法はどんな風に使われてるのかなって」
そこで言葉を止めなのはちゃんを見ると、真っ青な顔をして、レイジングハートを握り締めていました。よく見れば、細かく震えていて何かに怯えているようでした。
……何か、なんて考えるまでも無いんですけどね。どう考えても、僕の言ったことが原因でしょうし。
「なのはちゃん」
出来るだけ優しく声をかけ、僕から離れようとしたなのはちゃんの手を取ります。
「あ……」
「大丈夫、なのはちゃんが魔法を使って人を傷つけるなんて思って無いよ。
……でも、さ。もし、このまま魔法に関わるっていうなら、しっかり考えなきゃ駄目だよ? それに、困ったら士郎さんに色々聞いてみればいいんじゃないかな」
士郎さん達も、結構危ない世界に身を置いているみたいですし、力を持つことの意味を教えてくれると思います。
「誰かを守るためなら強くなれる」
そう言っていた士郎さんなら、きっとなのはちゃんを正しく導いてくれると思います。
僕の言葉に安心したのかなのはちゃんは僕に抱きつくと、声を抑えて嗚咽を漏らしました。
僕の胸の中で泣いていたなのはちゃんを安心させるように、しばらく頭をなでていましたが、ようやく落ち着いたのか、目元を赤く腫らせながらも僕から離れました。
「にゃはは……達也君、ごめんね?」
「ううん、べつにいいよ」
何だかんだで、なのはちゃんとの付き合いも5年以上と長いですしね。次に付き合いの深いアディリナちゃんたちでも2年ちょっとですし。
それに、アディリナちゃん達と仲良くなるきっかけもなのはちゃんと言えなくもありません。そういう意味でも、これくらいはなんでもないことですね。
そんなことを考えていると、ふと裾が引っ張られました。
「……?」
何かと思って見てみると、リラちゃんでした。まあ僕となのはちゃんの他には、リラちゃんしかいないので当然といえば当然なんですけどね。
どうしたんだろうと見ていると、とことことなのはちゃんに近づき、少し背伸びをしてなのはちゃんの頭をなでました。
「えっと……」
「……大丈夫、なのははいい子」
どうやら励ましているみたいですね。会ったときよりもずっと話すようになっているとは言っても、まだまだ口数が少ないリラちゃんですが、この様子だと少なくともなのはちゃんには大分心を開いているみたいです。
「リラちゃん、ありがとう。でも、リラちゃんに励まされるなんて思わなかったかな」
「……私の方が、お姉さん」
小さな体で、精一杯胸を張る姿はとても微笑ましいものがあります。とはいっても、なのはちゃんの誕生日は3月15日と大分遅いので、学年が同じだったらリラちゃんのほうが年上というのは強ち間違いではありません。……まあ、転生者というところまで含めてしまえば、精神的には確実に年上になるわけですが。
「にゃ!? お姉さんも何も、なのはのほうが大きいもん!」
なのはちゃんは一番下でしたし、リラちゃんを妹みたいに思っていたのかもしれませんね。
どこか楽しそうに口論をしている二人を見ていると、自然に口が緩むのを感じました。
なのはちゃんとの魔法の練習……というかなのはちゃんの練習でしたが、終わった今図書館へと向かっています。大きな出来事が無いと、こうやって頻繁にこれるからいいですよね。
……リラちゃんは本には興味が無いのか、外の休憩スペースで飲み物を飲んでいます。実際5月も終わりが近づいてきており、そろそろ水分補給とかもしっかり考えないといけないかもしれません。
今日は本を返してから、何か面白いのが無いか探して変える予定だったんですが……。
「私は八神はやてや。よろしゅうな」
「高町なのはだよ。何回か会ってたけど、こうやってきちんとお話しするのは初めてだね、はやてちゃん」
今までしっかりと話したことの無い、例の車椅子の女の子と自己紹介をしています。
「達也君、どうかした?」
……それも、何故かすずかちゃんに紹介される形で。いや、まあすずかちゃんも本を読むから、知り合いだったとしてもおかしくはないんですけど。
「あ、ごめん……えっと、清水達也です。それにしても、はやてちゃんがすずかちゃんと友達だったなんて知らなかったよ」
世間って狭いんだなー、などと思っていると、すずかちゃんとはやてちゃんが思わず、といった様子で顔を見合わせました。
どうしたんだろうと首を傾げると、すずかちゃんたちは苦笑を浮かべました。
「あんな、実はすずかちゃんと話したのも30分くらい前やねん」
ふむふむ、なるほど。それなら確かに苦笑しか浮ばないかもしれません。
「え、そうなの!?」
納得している僕と違って、示された事実に素直に驚きの声を上げるなのはちゃん。この辺り、大人びているとは言っても、やはり小学3年生なのだなぁと思います。
「そうだよ。ちょっと高いところにある本を取ろうとしていたのを手伝って、それから今まで話してたんだ」
はやてちゃんは車椅子ですし、高所にある本は面倒ですよね。近くに職員の人でもいれば頼めば済む事ですが、そうそう都合よくいるとは限らないですし。
「そんでな、すずかちゃんのお友達も本が好きやから今度紹介してもらうことになってたんや。そこに丁度なのはちゃんらが来たから、さっと紹介してもらった、いう訳や」
「そっか……まあよろしくね?」
「こちらこそ、や。こんな足やし学校にも通えへんから、なかなか友達も出来へんかったから、これからもよろしくな」
……さらっとヘビーなことを言われた気もしますが、これはしないでってことなんでしょうか。まあ本が好きな子に悪い子はいないと思いますし、漫画じゃなくて小説の話が出来る友達が増えるのは嬉しいんでいいですけどね。
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家に帰ってから図書館で借りた本を読んでいたのですが、ふと思い立って原作改変ノート(仮)を手に取りました。なるべく新しく人にあった後は見るようにしていたのですが、何がなんだか分からないことが多くて半ば以上放置というのが現状です。……いや、まあもっとしっかり観察していればもう少し法則も見えるのかもしれませんが、こんなものよりもっと時間をかけるべきことはありますしね。
正直、取扱説明書を要求しなかった過去の自分にあったら絶対に蹴り倒してやります。さて、何が変わっているのやら……。
転生者の欄にある名前は6人と変わっていません。アディリナちゃん、リラちゃん、ローザちゃん、
あ、それからはやてちゃんは登場人物欄にしっかりと載っていました。足が悪い原因が全く分かっていないそうなので、もしかしたら結構重要な立ち位置にいるのかもしれません。
……それは無いか。PT事件に主に関わった人を考えると、どう見ても普通の人なはやてちゃんが参加しても、あっという間に力尽きてしまいそうです。いや、逆にはやてちゃんの足を治すのがメインなのかもしれません。
原因不明の病を原理不明のロストロギアで治す……何か、ご都合主義にもほどがありますね。まあ何にしても、今度こそ平穏無事に過ぎ去ってくれるといいなぁ……。
それはともかく、はやてちゃんの誕生日が6月4日と近いそうなので、アディリナちゃんやアリサちゃんも誘ってはやてちゃんの家で誕生会兼親睦パーティーをするそうです。プレゼントを買わないといけないので、来週みんなで買いに行くことになりました。
図書館の帰りにリラちゃんにも話したら、何かを諦めたかのように首を横に振っていました。行かないのかと思ったら、そういうわけでもないみたいですし。……まあ大切なことならそのうち話してくれると思ってますけど。
にじファン閉鎖のお知らせ。
いつか来るかな、とは思っていましたが、予想以上に早くて驚きました。
社会人になって、ようやく慣れてきて続きを書こうかと思った矢先だったので本当にどうしてくれよう、等とも思いました。
続けてほしいという声が多少なりとも聞こえていたので、期待してくれている人が少しでもいるのなら頑張らなきゃなぁ、と思い、最悪個人サイトを開いてでも……と思っていましたが、幸いにもゼーレア様から
「〇〇を応援・支持するHP」
への掲載を打診されましたので、これからはそちらで続きを書かせていただくことになりそうです。
さすがに、これほどの期間をあけることはもう無いかと思いますので、これからも温かく見守っていただけると幸いです。