1話 すべての始まり
1998年 11月20日
朝鮮半島
地獄を見せる、という言葉はよく漫画で主人公が味方を傷つけた悪役相手に使う『怒り』という
リミッターを解除するために使われている
だが実際地獄とはどういうものだろうか?
大体の地獄は『死』につながる出来事だろう
幸福だった家庭が一瞬でなくなる時
優勢だったのが一瞬で敗北になった時
そして何より『死』そのものに繋がったとき
今朝鮮半島では彼の者・・・いや地獄の代名詞といわれる物<BETA>に攻められている所だった
このBETAに関しての情報は、追々説明いたしましょう
え?君は誰だ、と?
自分は何者でもありませんよ、しいて名前を申し上げるならばそうですね———————————————
主人公side in
僕の人生は他人と比べてみたらそれは、最悪以外の何者でもないだろう
幼稚園の頃はいじめばかりだった
小学校に入学して3年には、友達はいなかった
4年生までで親友が1人しかいなくて、遠くに引っ越した
引っ越した先の小学校では、5年生まで校長と担任の先生達と給食を作ってくれていた人達以外は
みんなが僕の敵だった
中学校では、部活に入ってはいたが正直いたくもなかったから、嘘をついてサボってやめた
知っていたから
僕は裏切られる都合のいい存在としか見られていなかった事を
だけど親友だけは違う事が分かっていた
どんな時も味方になってくれた、どんなに拒絶を強いられても拒絶しないでくれた
だけど中学3年生になってから最悪が起きた
そこから僕の本当の地獄が始まった
唯一の親友が殺されたと、警察の人から電話越しに聞いた
半月以内に殺しの準備をして、半年以内に犯人探しをして、卒業式の時に精神的に犯人を殺害した
犯人には躊躇は必要なかった
だって、小学校のときに『友達』と呼ばれる一時期『親友』の一部に入っていた人達を脅して
僕を自殺に追いやって、親友の手を汚した糞以下な奴らだったからだった
高校に入ってからは、『友達』も『親友』も作るのをやめた
死んでほしくなかったから
裏切られた時の絶望をしたくなかったから
だけどどんなに拒絶しても近寄ってくる人達はいた
だけど結局裏切られた
裏切られたのはどうでもよかった、家族を殺された時は腹が煮えくりかえそうだった
そして妹を犯されそうだったときは、リミッターというものがブッチっと音が鳴りそうなぐらい
感情をあらわにした
そしてまた大切な者がいなくなったと分かった時には
珍しい事がない限り流れない涙がとめどなく流れていた
そして僕は、寝て夢であることを願って目を閉じたのだった
・・・・・・・・・・・・・・・・・のだったのだが
「なんで、ここにいるのかなぁ?」
目の前には何かを操縦するためのものである事が分かっていた
そして横たわっているはずの自分の体が何かに座っている事が分かった
何に座っているのも分かった・・・・・・・・大きな椅子だった
自分の身長よりも少し大きい椅子だったが、視界は真っ暗だった
だがとても高いのが分かっていた
そう、まるで高層ビルの最上階から見下ろしているかのように
ドォォォン!
とても高いところから落ちてきたのか、とても大きい落下音がした
直後視界が明るくなった、が
「・・・・・・・・・・・・・・ゑ?」
知り合ってから裏切られるのは分かっていたが
会う前から武器と分かるものを向けられるのは初めてだった
『BETAでは・・・・・・ない!?』
『デュラハン13より!デュラハン1!反応炉は、戦術機そっくりだ!どうすればいい!』
なぜだか分からないが、向こうの通信が丸聞こえである事が理解できた
それを理解したうえで通信をしてみたくなった
「あのう、聴きたいのですがあなた達はどなたでしょうか?」
『BETAが・・・・・・・しゃべった!?』
『で、デュラハン1!BETAから交信を求められている!指示を!』
「それで悪いのですが、先ほどから通信がだだ漏れですけど?」
『『!?』』
通信越しでも呆けた顔が分かる事が想像できた
僕はその顔を想像してくすっと笑ってしまった
「大方敵の本拠地らしきものからそちらの乗っている物とそっくりだったから混乱している、ですかね?」
『そこまで分かっているのならば問おう、貴官は誰だ?』
今まで聞いていたどの声よりも落ち着いていて、威厳のある声だった
そしてなにより、一番信用の出来る声だった
だけど今まで名乗っていた名前は使いたくなかった、
『光に成る』という意味を持った名前じゃないもっと別な名前がよかった
ふと頭をよぎった名前、そうだこれにしよう
「鉄克影という日本人です」
『光に成れなかった』から『影に克つ』意味を持った僕は、別の人生を歩み始めた
そして僕は、僕の物語はここから始まった———————————————————————————