第76話
おはようございます。
ツアイツです。
今日は、久し振りの虚無の日です。
日本人的な感覚だと日曜日ですね。
日頃の感謝を込めて、シェフィールドさんをトリスタニアに誘ってみました。
何故か仲の良くなったソフィアは夕方に合流して、他にもルイズ達も一緒に
「魅惑の妖精亭」
で夏季休暇前の打ち上げの予定です。
本当なら、ビスチェウェイトレスVSメイド軍団だったのだが、例の件で僕の周りがきな臭くなったので、ハーナウ家に帰しました。
エーファ達を危険に晒す訳には行かないからね。
さて、今回の移動方法ですが、マジックアイテムで移転ではなく、前に使った馬ゴーレムに二人乗り。
今回は、僕が後ろに座ってます。
やはり手綱はシェフィールドさんですが、長閑な初夏の日差しを浴びながら、パカパカと走ってます。
この馬ゴーレム、結構乗り心地が良いんです。
シェフィールドさんとの会話は、普通に時事ネタが通用します。
驚きです!
流行の食べ物とか、衣服とか……
こうしてると、本当に頼りになるお姉ちゃんです。
転生前も姉は居なかったので、新鮮な感情です。
神の頭脳!
ミョズニトニルンな彼女の気を引くために、うっかりインテリジェンスソードが有ると言ってしまった……
すまん!
まだ見ぬ、デルフリンガーよ。
彼女にプレゼントする予定だし、使い手じゃないけどマジックアイテムの君ならミョズニトニルンの方が、お似合いだよ。
トリスタニアについて、先ずは気の利いた喫茶店?で喉を潤す。
今日の彼女は、長い黒髪に合わせて、黒のロングドレスを纏っている。
黒曜石から削りだした様な艶の有る黒髪に、白磁の様な滑らかな白い肌。
最近良く見せてくれる、穏やかな微笑み。
体のラインを強調するドレスは、スタイルに自信がなければお笑いレベルの逸品なのだが……
完璧に着こなしている。
ぶっちゃけ、客の視線を独り占めです!
髪の色が違うけど、どう見ても恋人同士ではなく姉弟にしか見えない雰囲気な2人……
周りの貴族共が、そわそわしだした……
馬鹿な貴族に絡まれない内に目的の武器屋へ行く。
原作を思い出しながら歩いていくと、良くゲームで有る板に剣と盾が描かれた看板を見つけた!
迷わず入る。
「いらっしゃい!
……貴族様?
ウチは真っ当な商いをしておりやす。
何かご用ですかい?」
警戒心バリバリな親父が、怪しい敬語?で話し掛けてくる。
「ああ……
問題を起こすつもりは無いんだ。
こちらのレディがマジックアイテムを収集していてね。
ここに、口の悪いインテリジェンスソードが有ると聞いたんだ。
見せてくれないかな?」
フレンドリーに話し掛ける。
親父は、改めてシェフィールドさんを見て……
彼女に微笑みかけられた!
デレデレな親父は
「へい!ありやす。
しかし、小汚く口の悪い駄剣ですから、お美しい若奥様のお気に召すか……」
言葉は遠慮がちだが、ガサガサと樽の中を漁って、見せる気満々なんだが……
「けっ!
いい年こいてデレデレするなよ親父!
気持ち悪りーんだよ」
「五月蝿えな!
大人しく行儀よくするんだぞ……
若奥様、コレでやす」
そう言って、恭しくシェフィールドさんに、抜き身のデルフリンガーを差し出す。
「あら、有難う」
にっこりと微笑んで、親父からデルフリンガーを受け取る。
彼女の額のルーンが、僅かに輝き出す。
「ネーチャン……
神の頭脳か?
すると隣の糞餓鬼が虚無n」
ゴギャ!
っと凄い音がしてデルフリンガーの柄の部分を踏みにじるシェフィールドさん。
「貴方……
ツアイツ様に対して口が悪いわよ。
次に生意気な口をきいたら……
分かるわよね、始祖の剣なら?」
一転して、しっとりとした美女が凶悪な女王様に豹変した事で、親父がカウンターから飛び出して土下座した!
「すいやせん。
許して下せえ。
ほら、お前も謝れ!」
「おっおう!
すまねぇ。もう言わないったら言わないぜ」
平謝りな2人?
1人と1本?
「シェフィールドさんどう?
面白そうな剣でしょ?」
シェフィールドさんはデルフリンガーを踏みながら
「ええ、擬態してるけど、面白そうな剣よ。
ツアイツ様、コレの本来の姿も知ってるのね?」
グリグリとデルフリンガーを苛めながら、にこやかに質問してくる。
「多分だけど、ね。
確信が無かったから見て欲しかったんだ。
親父、頭を上げてよ。
この剣は貰うから……」
そう言って、親父を立たせ200エキューの入った皮袋をカウンターに置く。
「おい親父!
オレを売るなよな、後生だからよー売らないでー」
親父は金貨を数え終わると
「毎度あり!
この鞘に入れれば大人しくなりやすから」
あっさりデルフリンガーは売られた。
「ツアイツ様行きましょう。
ほら、さっさと元の姿にお戻り」
デルフリンガーは、刀身を輝かせると見事な剣に変身した。
「おどれーた!
あの小汚い剣が……」
驚く親父をそのままに、僕らは店を出る。
「やはり本物かな?」
「そうですね。
6000年の重みを感じます。
多分ですが、初代ガンダールヴの使用した剣かも知れませんね」
「シェフィールドさんの役にたつかな?」
彼女は首を傾げて考えて……
「どうかしら?
私は剣を振り回す接近戦より、マジックアイテムで広範囲な殲滅戦が本来の戦闘スタイルだから……」
サラッと、ヤバい発言来ました。
シェフィールドさん、マジで無双出来るんだ……
「そうか……
役立たずか、残念だ」
落ち込み気味に言ってしまったら
「いえいえ、嬉しいですわ。
価値は有る物ですし。
何よりツアイツ様からの贈り物ですから大切にしますわ」
にっこりと微笑む抜き身の剣を持つ美女。
周りが遠巻きに眺めて、何やらボソボソ話している。
衛士に通報される前に、「魅惑の妖精亭」に行こう!