この話から、ド・モンモランシ領の復興に入ります。
長いですが90話迄続きます。
その後、挿話を何話か入れてレコンキスタ対決編に入ります。
気が付けば、毎日連載3ヶ月を超えました。
自分でもビックリだ!
それでは、我が妄想尽きるまでお付き合いお願いします。
第81話
ド・モンモランシ伯爵領
ラグドリアン湖の一角と領地が接しており、ハルケギニア一の景勝地として有名で有り、過去に何回も他国の王族も招いた遊園会が催された土地で有る。
今でこそ開拓事業に失敗し、水の精霊との交渉役も辞した形になってしまったが、伯爵本人も家臣団もそれなりに有能な人物だ。
ド・モンモランシ伯爵は怒り狂っていた!
娘に害虫が付いた……
苦労して育て、トリステイン魔法学院に送った娘から……
会わせたい男性が居る。
と、手紙が来たのだ。
何でも相手は、ゲルマニアからの留学生で有り、あのヴァリエール公爵家と懇意にしてるらしい。
かの家と、ゲルマニアのツェルプストー辺境伯家との経緯は聞いている。
暫定だが、融和政策を実施し貿易で黒字を出しているらしい。
そして三姉妹の1人を嫁がせるようだ。
その相手と、中心的役割を果たしたのがハーナウ家の次期当主。
つまりツアイツ・フォン・ハーナウ本人だ!
忌々しい……
儂は、ヴァリエールの阿保たれの様には騙されないぞ。
向こうの娘達は、いき遅れの長女、病弱な次女。
そして魔法が使えない三女と、どれも問題児だ。
押し付けるのと訳が違うのだよ。
ウチの娘は!
何処に出しても恥ずかしくない、出来の良い子なのだ。
むざむざと嫁にはやらん!
腐っても伯爵家。
この日の為に、領内から選りすぐりの使い手を集めた。
のこのこと来てみろ!
叩き出してやる。
「旦那様、配置は完了です。
あと奥様がお呼びです」
古参の家臣から声を掛けられ我にかえる……
「すまんな。
興奮してしまった。
妻が呼んでいるとは……
アイツは娘に甘いからな。
モンモランシーの味方をしそうで危ないぞ」
呆れた顔で家臣から
「この日の為に、領内中から腕の立つ家臣団をお呼びになった旦那様よりですか?」
苦笑しながら諌められた……
子供の頃から仕えている彼には頭が上がらない。
見渡せば、この日の為に選りすぐりの強者達が苦笑いして列んでいる。
総勢10名の全てトライアングルの使い手達だ!
皆、領地にて盗賊や亜人討伐担当の武闘派連中。
武門ではないが、我が家の中では最強の連中よ!
「さぁ来いツアイツ!
このワシが、このワシの家臣団が叩き出してやるわー!」
高笑いを始めた、ド・モンモランシ伯爵!
「旦那様……
そろそろ奥様の元へ行きましょう。
大分待たせてますよ」
「……そうだな。
行くか」
威勢の良い、ド・モンモランシ伯爵も妻には頭が上がらなかった……
妻の待つ庭に設えたテーブルセットに向かう。
彼女は優雅に紅茶を飲んでいる。
「何だ?
ワシは忙しいのだぞ!」
妻は落ち着いている。
「あなた、落ち着いて下さい。
自分の娘が選んだ相手が信じられないのですか?」
何を呑気に言っているのだ!
「ああ、信じられん。
眉唾な誇大妄想に近い調査報告だそ!」
「私も、女としての情報網で調べてみました。
実際に学院に通っている娘を持つ親達に……
調書は全て本当みたいですよ」
「あんな報告書がか?
学院の一年生に君臨しているとか、我が国の魔法衛士隊隊長と仲が良いとか……
演劇の名作を何本も書く傍らに、男の浪漫本なる怪しい本を手掛ける文豪。
女性の悩みを解決するバストアッパー!
学院の二年生を粉砕したとか……
出るわ出るわ、怪しい物ばかりが!」
はぁはぁと、肩で息をしながら妻に詰め寄る。
「しかし、事実として受け止めなければ……
あの子には私達が不甲斐ない所為で、物心ついた頃から金銭面で苦労をかけています。
だからこそ相手は、見てくれ等では選ばない、完全能力主義な子なのですのよ」
何を呑気な……
「あの子は優しい子だ!
騙されているんだ!」
深いため息をつかれたぞ。
「兎に角、失礼が有っては我が家など、お家断絶の危機なのですよ。
それに我が家の復興のお手伝いを申し出てくれたとか……
落ち着いて下さい」
「しかしだな……」
「旦那様、お取り込み中すみません。
先ふれと称してグリフォン隊隊員の方が到着しました。
直接の面会を求めていますが……」
「グリフォン隊だと?
王族の方が来られるのか?
まさかアンリエッタ姫か?
ちっ!
この忙しい時に……
仕方ない、お通ししてくれ!」
この大事な時に王家絡みとは……
あのアホ母娘が、もっと国の為に動かないからこんな事になるのだ!
全く面倒臭いな。
颯爽と1人の青年貴族が現れた。
「お初にお目に掛かります。
ド・モンモランシ伯爵!
ゲルマニアのツアイツ・フォン・ハーナウ殿がこれからみえられます。
準備は宜しいか?」
「貴殿は先ふれと伺ったが……
トリステイン王家の関係ではないのか?」
「ああ……
私達は休暇中です。
ツアイツ殿がこちらの領地の立て直しをすると聞き及び、微力ながら手伝いを申し出たのです」
「はぁ?
私達?
貴殿は伝統有るトリステインの魔法衛士隊員であろう。
何故、他国のゲルマニアの貴族の手伝いなど?」
魔法衛士隊の若者は、爽やかに笑って
「友情に国の違いなどありませんな。
最初に言っておきます。
今回のメンバーは、みなツアイツ殿の人望故に自然と集まった構成員ですよ。
ド・モンモランシ伯爵も驚かれるが良い!
そろそろ見える頃ですな……」
はぁ?
何をとち狂ってるんだ!
この若者は……
そんな訳が有るk
「あなた!
グリフォンと風竜の一団が向かってきますわ!」
空を見上げる……
なんだ!
数が多い。
10……11……12……15騎は居るぞ。
「皆の者、警戒態勢を……お前とメイド達は屋敷の中へ」
「落ち着いて下さい。
ド・モンモランシ伯爵!
あれは、ツアイツ殿の一行です」
苦笑を噛み殺す様な……
してやったりの表情で、魔法衛士隊員は言いやがった。
遠目でも分かる、巨大なグリフォンと風竜。
あんなものを連れ回す奴とは……
「さて、そろそろ着陸態勢ですな」
呑気に手を振るコイツを絞め殺したくなる。
気が付けば、我が家臣団がワシの周りに集まっている……
初手は負けを認めよう。
だが、これからが勝負だ!