第94話
おはよう。
私は、大国ガリアの王位継承権第一位。
普通なら何不自由なく、皆に蝶よ花よ!
と扱われる筈の、プリンセス・イザベラさ。
最近、自分でも飲酒の量が増えてヤバいと思っている。
しかし、飲まないとやってられない事が多過ぎなんだよ!
それに、ツアイツが贈ってきたタルブ産ワインと水の秘薬「そるまっく」がね……
二日酔いに効くもんだから、つい痛飲してしまう。
このままじゃイケないね。
お父様は無能王と呼ばれ娘がアル中姫じゃ情け無いよ……
ツアイツに意趣返しを含めて、カステルモール以下の極めて変態度の高い連中をレコンキスタ関係の報告書を添えて送り付けてやったんだ。
あいつ等の相手をしなければならない私の苦労を少しは思い知れ!
って意味でね。
しかし、ヤツは凹む所か、コイツ等をより強力な変態にして送り返してきやがった!
しかも、どう見ても私をイメージした……
ふぃぎゅあ?
それと、会員特典マント?
の裏地に私の色々なバージョンの豪華刺繍を施したマントを配布してやがる。
この特典効果が強力だ!
信じられるかい?
今まで無能王の娘として、親子揃って魔法が苦手な連中と陰口を叩かれていた私にさ……
公式ファンクラブの申込みが3団体も有ったんだよ。
それに、竜騎士団や北花壇騎士団以外の、私から距離を置いていた連中も、何かと私に接触に来やがる。
そして、色々なパーティーへの出席の依頼。
こんな事は初めてさ。
正直言って私だって年頃の娘さね。
嬉しいのは、嬉しいんだけどさ。
呼ばれたパーティー会場の護衛に必ず……
断っても断っても同行したがる、黒いマントの一団。
アイツ等が、マントを翻す度に周りが盛り上がる。
コレって何か違うんじゃないかい?
今では、ガリアのツンデレプリンセスとして
「大きなお友達」
からの忠誠が凄い事になってるんだ。
会員数も既に1600人を突破したよ。
会報も毎週出ていて私にも届くんだよ。
中心は、ツアイツに送り付けた連中だ!
ツアイツに報告書の中で、文句を書いておいたが……
アイツ、私の人気は私の魅力による物だから、これを機会にガリアの次期女王としての地盤を固めろって言いやがった!
確かに、人気の無かった腫れ物扱いの私がさ……
こんな人気者になれるなんてさ。
お父様ですら驚かれて、しかも嬉しそうに誉めてくれたんだよ。
今では、エレーヌよりも人気者だし旧シャルル派の連中からも接触が有る。
しかし……
しかしだよ……
私が斜に構えたり、毒舌を吐く度に今日はツンツンですねモエー!
とか、周りが盛り上がるのはどうかと思うんだ。
ツアイツ……
アンタが作り上げた、このガリア産の変態共を引き連れて会いに行ってやるよ!
報告書に書いて有った、ド・モンモランシ領の復興と水の精霊との交渉の件、見事だね。
アンリエッタ姫から、ラグドリアン湖で遊園会を催すと招待状が来たからさ。
必ず私が行くよ。
やっぱりアンタはぶん殴るよ!
周りは、今日のツンツンはバイオレンスだー!
とか、盛り上がるんだろうねぇ?
まだ、レコンキスタも潜伏してるし忙しくなる前に、アンタとはキッチリと拳で話を付ける必要が有る!
このままだと、歴史に刻まれる女王になる事すら難しく無いと思うよ。
歴代ガリア王族の中で、一番皆に愛された女!
ツンデレプリンセス・イザベラ、とかさ……
コンコン
「失礼します。
イザベラ様、今週の会報です。
それと、イザベラファンクラブの集いが、今夜プチトロア中庭で催されます。
ソウルブラザーから、フィギュアで着せた衣装と同じ物が贈られて来ましたので参加時にお着替え下さい。
それと、これが今週分のファンレターとプレゼントです。
全てディティクトマジックにて確認しましたが、異常は有りません。
来週ですが、東花壇騎士団への慰問について……」
ジャーマネみたいな竜騎士団員が、トップアイドルさながらの予定を読み上げて行く。
「来週は、トリステインに行くよ。
お前らの大好きなソウルブラザーも来るラグドリアン湖の遊園会に呼ばれてね。
スケジュールはコレが最優先だ!
調整しな」
ジャーマネは、メモ帳に予定を書きながら……
「来週ですか?
んー難しいですが政務を優先しなければなりませんね……
了解しました。
それとイザベラ様の護衛の件ですが、カステルモール団長が不在の為に、副長とイザベラ隊が行います」
ん?
なんか、今変な単語が聞こえたけど……
「一寸待ちな!
カステルモールのヤツが不在って……
私は任務を与えてないよ?
それにイザベラ隊って何さ?」
ジャーマネは眼鏡をくぃと持ち上げながら
「団長は、ワルド殿とサビエラ村に向かわれました。
クーデレ様のトリステインに向かう日迄には戻られるそうです。
イザベラ隊とは、ソウルブラザーより中級会員以上のツンデレプリンセスマントを贈られた連中の集まりです!
皆、魔法と武術に長けた所属を超えて集まった漢の一団です」
なっななななな……
「ばかー!
所属を超えるなー!
問題有るだろー」
嗚呼……
罵倒すると恍惚としやがって、この変態共がー!
「今日のツンは困った感が出ていて可愛らしい……はぁはぁ!
はっ!
しかし、イザベラ隊設立の要望書を正式にジョゼフ王に提出・承認を承けておりますれば……」
お父様が?
何を考えているのですかー?
「ジョゼフ王は、イザベラ様の護衛は貴様等に任せた!
と、笑顔で言われました」
ツアイツ……
やっぱりアンタは、グーで殴るよ。
アンタが、謝るまで殴るのを止めないからね!
「まぁ良い。
楽しみだねぇ……
ツアイツに会えるのが、さ」
思わず拳を握っちまうよ。
殿方の事をこんなに思うなんて初めてさ。
殺意が湧く程にね……
「はっ!
ソウルブラザーには、ご指導願いたい事がマダマダ沢山有りますので」
……これ以上、アンタ達の変態度を上げたら私の血液は飲み過ぎでワインになっちまう。
「それと、ソウルブラザーよりイザベラ様に今週の贈り物です。
何でも、アイスワインと言って一度材料の葡萄を氷結させ絞る事で甘みの強いワインだそうです。
それと……」
律儀に毎回贈り物をしてくるけどさ。
そんな事で許されるレベルは既に超えているんだよ。
しかし、アイスワインか……
ちょっと美味しそうじゃないか。
イザベラが、大国ガリアのアイドルとして君臨する日は近い!
アンリエッタ姫とはまた違う、比較にならない人気と熱狂的な信者を集めている!
シャルロット……
タバサは、まだその存在を知る者が少ない為、知る人ぞ知るアイドルとして少しづつ人気が上がっている。
彼女達の人気を不動の物とする男の浪漫本……
「2人はマジカルプリンセス・第1章 禁断の従姉妹姫」
は完成しているが、まだ世に出回っていない。