第95話
おはようございます。
ツアイツです!
寝不足で有ります。
今朝は、ヴァリエール公爵家より御挨拶です。
昨夜遅く、ド・モンモランシ伯爵の家臣の方から駆け込みで報告が有り、明け方近くまでヴァリエール公爵と話し合いをしていたので……
あの姫様、あろう事かモンモランシーの交渉役就任をラグドリアン湖にて盛大な園遊会を兼ねて発表したいのです!
と宣った事を、王宮勅使のモット伯が伝えに来たそうです。
モット伯も、我が
「男の浪漫本ファンクラブ・変態と言う名の紳士の集い」
の上級会員。
昇格時に、かなり厳しく性癖を改めて女性に対して優しくする様に指導した!
最近では、紳士によるオッパイ嗜好対談で僕を唸らせる提案をする位に……
そして、彼も随分と王宮と言うかアンリエッタ姫に対して妥協案を提示してくれたらしい。
主に、予算と人員だ!
普通は、各国王室を招待するなんて何ヶ月も段取りにかける物だし、招待状も来週催します!
って、こちらの常識を疑われる日程だぞ……
準備に当たり、僕で手配出来る分とヴァリエール公爵より予算と人員を追加で送る。
それでも間に合うか?微妙なラインだ……
ハーナウ本家にも、要請をする。
「ツアイツ殿、折角の休暇なのにすまんな」
ヴァリエール公爵は、自国の姫の奇態振りに申し訳なさそうに苦笑しながら謝ってくれた。
「いえ……
一寸急ですが、御披露目は早い方が良いですから。
僕は呼ばれないと思いますが……
その辺はド・モンモランシ伯爵も察してくれていますから」
「そうだな。
しかし、アヤツの事だ!
娘に悪い虫が付かない様に婚約発表をするかもしれんぞ?」
「まさか、それは無いですよ」
笑い合う僕とヴァリエール公爵!
只でさえ、トリステイン貴族から妬まれているのに、公式の場でそんな事を言わないだろう。
と、思っていたから……
しかし、暴走特急アンリエッタ号は甘くはなかった。
僅かな睡眠の後、ヴァリエール夫人&愛娘ズとキュルケとシェフィールドさんで朝食後の紅茶を楽しんでいた。
「ヴァリエール公爵も大変ですね」
などと、カリーヌ様に話したり
「ツアイツ殿、どうですか?
午後に手合わせなどは?」
とか、一部危険な単語も有ったが概ねノンビリムードだ……
因みにヴァリエール公爵は自ら、ド・モンモランシ伯爵領に家臣を率いて手伝いに向かった。
何だかんだで、共に陣頭指揮を執るみたいだ!
ド・モンモランシ伯爵とは仲が良いんだな。
夏の日差しをテラスで浴びながら寛いでいると、見知った顔の……
アニエス隊長自らが、ヴァリエール公爵及び僕に
(僕はハーナウ家としてではなく、モンモランシーの級友と言う事で)
招待状を持って来た……
アニエス隊長は、シェフィールドさんに熱く艶めかしい視線を送っている。
邪魔したくないが、仕方が無いので声を掛ける……
「アニエス隊長、申し訳無いが国に戻るので園遊会には欠席で……」
「へんた……いや、ツアイツ殿。
それは無理だ。
アンリエッタ姫は、園遊会で貴殿とウェールズ皇太子を引き合わせる約束をしたらしい。
最初はアンリエッタ姫直々に国賓として招待したいと言うのを私が止めた」
「貴女が?何故?」
アニエス隊長は、やや照れながら
「シェフィールドお姉様にも被害が及びそうだし、何よりアンリエッタ姫の立場も悪くなる」話の前半はスルーして、後半のアンリエッタ姫の立場も悪くなる……
に、アニエス隊長が普通の判断も出来る事に安心した。
「そうですね……
僕もですが、アンリエッタ姫も自身の立場を良く考えて頂きたいのです。
このままでは……」
アニエス隊長は憮然として
「言うな!
承知しているのだが……
最近の姫様は浮かれ過ぎている。
足元を掬われなければ良いのだが」
このガチレズネーちゃんも、隊長迄上り詰めるだけの事は有る訳か……
「アンリエッタ姫に伝言をお願いします。
何故、ウェールズ皇太子が僕に会いたいのか?
他国の貴族に関心を向けすぎるのは危険な事。
例の手紙の件、下書き等はまだ駄目です。
もし有るなら全て焼却処分をする事。
以上三点をお願いします。
それと、園遊会はあくまでも級友として参加します。
余計なサプライズは要りませんから」
アニエス隊長も、言われた事を
「すまん。
覚えられんから、手紙にしてくれ」
と、脳筋振りを発揮した!
「僕が、アンリエッタ姫に手紙をおくる事が周りに知られたら、危険な事は分かりますよね?」
頼むよ、隊長殿。
アニエス隊長は、恥ずかしそうに
「いや……
大切な話だから忘れては駄目だと思ってな」
見かねたルイズが
「私が姫様にお手紙を認める(したため)わ。
お友達の私なら問題無いでしょ?」と、助け舟を出してくれた。
アンリエッタ姫……
早くアルビオンに、ウェールズ皇太子に押し付けないと大変かもしれないぞ。
アニエス隊長は、ルイズの書いた手紙を持って王宮に帰っていった。
カリーヌ様とエレオノール様は、難しそうな顔をしていた。
しかし、あの顔は何かを企んでいる時の顔なんだよなー。
しかも、大抵被害は僕が被る種類の顔だ……
見詰めているとカリーヌ様は目を逸らし、エレオノール様はニッコリと微笑んでくれた。
益々怪しい。
あのカリーヌ様が目を逸らしたなんて……
「カリーヌ様何かk」
「そうだわ!
ツアイツ様、今日はこれから私のお友達達をキュルケさんとシェフィールドさんに紹介したいのですが……」
あの、ハルケギニア版ムツゴロウ王国に連れて行くだとー?
ぐいぐいと2人の腕を掴んで自室に連れて行こうとするカトレア様。
「ちょおま、待って……」
慌てて追い掛ける。
SIDEカリーヌ&エレオノール
「カトレアの機転で疑いが有耶無耶になったわね。
ツアイツ殿のリスク回避スキル……
本当にやっかいね」
「でもお母様。
やはり、アンリエッタ姫にこの国を治める事は無理かしら?」
「しかし……
ツアイツ殿は、ガリアに行かれる可能性が高い。
この国の要職にも就く可能性も低いし……
何より本人が辞退するわね」
「「何か良い方法は無いかしら?」」
こちらの母娘は悩んでいたが、王宮の母娘は呑気な物だった……