第101話
ガリアのツンデレアイドル現る!
イザベラ姫が、ラグドリアン湖に両用艦隊所属の大型船で到着する。
今回は正式訪問の為、王族専用の戦闘大型船だ。
タラップが降りると、黒いマントの一団がフライで周囲に降り立ち警戒する。
勿論、彼等はガリアが誇る精鋭イザベラ隊だ。
マントの内側の刺繍もツンデレプリンセスバージョンが施されている。
タラップに蒼い髪の美少女が現れる。
今日は白を基準としたショートライン。
裾はふくらはぎ迄の丈の短いドレスだ。
大き目のコサージュをあしらいどちらかと言えば小悪魔的魅力を演出している。
実はこのドレスは、フィギュアが着ていた物を原寸に仕立て直しツアイツから贈られた一着だ。
ツアイツは、婚約者達よりイザベラに数多くの贈り物をしていた。
それも毎週だ!
ツアイツ的には、ジョゼフ王よりイザベラ姫にガリアでの地位を高めようと画策していたのだが……
周りはすっかりソウルブラザーは、ツンデレ姫の魅力を高めるアイテムを沢山届けていると思っている。
彼女も悪い気はせず、出来も良いので多用しているが、今日はマズかったかもしれない……
周りから歓声が上がる!
「おい!
アレって男の浪漫フィギュアのツンデレプリンセスの小悪魔バージョンだろ?」
「噂通りモデルはイザベラ姫なのか……
嗚呼、罵られたい踏まれたい」
「お前、性癖だけは上級会員並だな……
まさかテファたんも実在のモデルが居るのか?」
「知らないのか!
我らが教祖が在野の女神を探し出したらしい。
孤児で平民らしく、この話はタブーなんだが実在しているぞ」
「流石はツアイツ殿!
巨乳女神もゲット済みかよ……
羨ましいな」
モブな貴族達が、イザベラの元に殺到する!
しかし、強力な公式ファンクラブ
「イザベラ隊」
がそれらを寄せ付けない。
公式ファンクラブ会員と一般ファンの攻防が始まる。
増援として、こちらも公式ファンクラブ
「ツンデレプリンセス隊」
「蒼い髪の乙女隊」
が参戦し一般ファンは周りに押しやられた。
「お前ら、ここは他国だ!
程々にしな。
周りの連中も今日の主役は私じゃないんだ。
空気を読みな!」
「「「うぉー!
ISABELLA
イ・ザ・ベ・ラさまー!」」」
投げ遣り気味にイザベラが手を振る。
既に会場はイザベラコール一色、コンサート会場に来たみたいだ!
アウェーなにそれ?
美味しいの?
続いて、アルビオンが誇る大型戦艦ロイヤル・ソヴリンが着水。
プリンス・オブ・ウェールズこと、ウェールズ皇太子が小船に乗り移り岸辺に向かう。
こちらは、アンリエッタ姫がいそいそと迎えに飛び出そうとするのをアニエス隊長が押さえていた。
「姫様、自重して下さい。
落ち着いて!」
ウェールズ皇太子を歓迎するのはアンリエッタ姫のみだ……
哀れウェールズ。
次に、ゲルマニアから、アルブレヒト三世の名代のモブ貴族が地味に現れた!
残りのめぼしい招待客は……
クルデンホルフ大公国からベアトリス・イヴォンヌ・フォン・クルデンホルフとお供の三人衆と空中装甲騎士団が竜籠にて到着。
このベアトリス姫殿下……
膝まで有る金髪ロングを白い髪留めでツインテールにしたペッタンコちゃんだ!
原作ではテファに色々意地悪をしたが、最後は和解した我が儘で自尊心の強い小柄な少女だ。
彼女の目的は1つ。
嫌われ者だったガリアのイザベラ姫を一躍トップアイドルに押し上げた秘密を探る事。
美少女振りなら負けない自負が有るが、登場時点で敗北感が溢れてしまった。
あの強力なファンクラブを私も欲しい。
必ず彼女のブレインを探し出す!
彼女は心に誓った。
そして一番怪しいのが、ゲルマニアの貴族。
ツアイツ・フォン・ハーナウ!
自他共に認める巨乳派教祖で有りハルケギニアに巣くう変態の親玉!
なるべくなら近寄りたくないと思っている。
触られたら妊娠しそうだ!
彼女の中では、まだ見ぬ彼は、チビで小太りな油ギッシュな眼鏡だった。
彼女のイメージは貧困と言うしかない。
まぁ空中装甲騎士団は、ツアイツを知っているのだが……
当然初級会員でも会報を読むから情報は主の少女より詳しかった。
しかし、ベアトリスが毛嫌いしているので言い出せない。
最後はロマリアだが……
急な催しで有り国内の地盤固めの方を優先した教皇ヴィットーリオは、腹心であるバリベリニ助祭枢機卿を送った。
彼は原作でもシャルロット即位に伴いガリアの宰相になった程の人物。
特に問題は無かった。
それに、今回の話では何も活躍しないから……
取り敢えずモブとして園遊会に参加した。
園遊会自体は、滞りなく進んでいる。
本来の主役たるモンモランシーには、ド・モンモランシー伯爵家の代々伝わる家宝で身を包んでいるし、ドレスは最新の物をプレゼントした。
水の精霊を実際に呼び出した時のどよめきも凄かったので、ド・モンモランシ家としての面子は保たれただろう。
問題は、その後の宴会だ。
ガリアのトップアイドルと、数々の名作を世に送り出している巷で噂の巨乳派教祖!
ゲルマニア貴族のツアイツ・フォン・ハーナウが参加するとなれば騒動が起きない方が可笑しい。
「男の浪漫本ファンクラブ・変態と言う名の紳士の集い」
の会員も多数参加するこの園遊会で、2人に接触を持ちたい人々は多数居る。
ツアイツも自分が居ては騒ぎの本だと、モンモランシーのお披露目の時は席を外していた。
当然、水の精霊との接触を避ける為だが、廻りの警備は安心し彼の配慮に感謝した。
しかし、その後の宴会には出無い訳には行かない。
今回は、最強の守護者シェフィールドさんはガリアのジョゼフ王の下に報告に行っており
ワルド&カステルモールの変態コンビはサビエラ村に向かっている。
彼の直属の護衛は居ない……
有るのは、牙の腕輪と魔力の指輪、それと魔人召喚用の木札だけだ。
しかし、イザベラの護衛をしている公式ファンクラブ
「イザベラ隊・ツンデレプリンセス隊・蒼い髪の乙女隊」
の皆は、ツアイツと懇意にしているので平気だろう。
この遊園会で一番の護衛を侍らせているのは間違いなくイザベラだ!
その彼女が寛ぐテーブルに一番にやってきたのは、ベアトリス姫殿下。
護衛のファンクラブ会員も、ツンデレの素養を持つ美少女には、当然道を空けた!
しかし、護衛の空中装甲騎士団は二の足を踏んでいる……
「イザベラ隊」
三隊ある公式ファンクラブの中で、彼女の名を冠するこの部隊は、ガリア中の武闘派の中から選りすぐった所属を超えた連中だ!
この威圧感に適う者は一流だろう……
その時、空中装甲騎士団を威圧している連中にイザベラが声を掛ける。
「お前ら誰彼構わず威圧するな!」
ザッと左右に分かれるイザベラ隊。
見事な統率力だ。
「掛けなよ。
何か話が有るんだろ?
ベアトリス姫殿下」
SIDEベアトリス
くっ……
駄目だわ。
最初から呑まれてしまったわ。
大国の姫って割には、言葉使いが悪いけど……
勝てる気がしない。
「しっ失礼しますわ。
噂のアイドル、イザベラ姫とお話したいと思いまして……」
「アイドルかい?
好きでなった訳じゃないよ。
アンタもアイドルになりたきゃツアイツに部下を派遣するんだね。
後は勝手にやってくれるよ」
「ツアイツ殿?
ツアイツ・フォン・ハーナウ殿ですか?」
イザベラ姫は、意地の悪い笑みを浮かべ
「そうさ!
あの変態に感化されちまったのさ」
何処までが本気なんだろう?
周りの護衛騎士団、イザベラファンクラブ会員を見る……
彼等は一様に頷いている。
「そっそうですか?
あの悪い噂の絶えない、怪しい彼にです……か……」
ソウルブラザーを悪く言われた彼等の無意識に漏れた殺気に反応し、ベアトリスが固まる。
「オラッ!
小さな女の子を威圧するんじゃないよ!」
何処からか取り出したワイン瓶を投げつける。
「今日のツンはワイン瓶か……
上手いことやりやがって」
「アイツ、ワザとだな。
俺にもブツけて欲しい」
危険な単語を聞いたベアトリスが、違う意味で固まった。
これが、ツアイツ殿の洗脳効果……
絶対の忠誠を誓わせるのね?
「どうした?
これ位、御せないとアイドルにはなれないよ」
「………失礼しました」
無理、無理よ……
お父様から預かっている空中装甲騎士団をあんな変態にする訳にはいかないわ。
しかし、クルデンホルフのアイドル・ベアトリスになりたい……
未来のアイドルベアトリス姫殿下、悩みながら退場!
現トップアイドルイザベラの圧勝だった。