第105話
ラグドリアン湖の園遊会を終えてヴァリエール公爵家に戻った。
あれからバタバタして、モンモランシーに少しだけ会ってから帰ってきた。
実りは少なくはなかったが、問題は有った。
ウェールズ皇太子やアンリエッタ姫のテーブルに同席してた所をロマリアの助祭枢機卿がガン見してた。
これは、教皇に報告が行く筈だ……
これからアルビオンでブリミル教の司教が起こす反乱。
その国の皇太子と救援の国の姫君……
それと同席していたとなれば、あの腹黒い教皇は必ず関係有りと考えるだろう。
そして大国ガリアのイザベラ姫による、新しい宗教的なアイドルファンクラブの存在……
調べれば、ブリミル教など霞む程の内容だから。
必ず、ロマリアは手を出してくる。
僕が先か、イザベラ姫が先か……
正直に言えば、ブリミル教などに関わりたくは無い。
大隆起だか知らないが、何時起こるかもしれないし防ぐ手立てが聖地奪還ってのも納得いかない。
こちらには、テファも居るから……
何か手を打たないと、危険かもしれないな。
イザベラ姫には苦労だけかけるけど、僕の考えを手紙で送っておこう。
宗教には気をつけなければ、民衆を敵に回す可能性が有るから……
最近、すっかり僕の思考場所になった感の有るベランダ。
前回はカトレア様だったが、今回はルイズか……
さっきから、ピンクの髪が扉から覗いている。
何か遠慮する雰囲気でも有ったのかな?
「ルイズ、どうしたの?
さっきから顔を覗かせて」
ガタガタっと分かり易い音を立ててから、ルイズが出て来る。
「何時から?」
真っ赤になって、手を前に組みながら聞いてくる。
「少し前から……
ルイズの綺麗な桃色の髪は、暗がりでも映えるからね」
とことことテーブルに近付いてくる。
「座る?」
「うん!」
わざわざ椅子を隣に移動して、並んで座る。
彼女の横顔しか見れないが、月明かりに浮かぶルイズは極上の美少女だ。
シンプルなナイトガウン姿だが、シルク生地は薄く体のラインを強調している。
「難しい顔してた……
普段私達には見せない、何か思い悩んでいる顔」
真っ直ぐ前を向いている為に表情は掴めないが、真剣なのは分かる。
「うん……
いよいよレコンキスタは動き出す。
手は全て打ったよ。
後は、細かい調整だね……」
ルイズの膝の上にギュッと握っている手に、自分の手を重ねる。
「全ては順調だよ。
自信も有る。
だから、心配しないで……」
「昔からツアイツは、どんな事でも出来た……
落ちこぼれの私と違う。
皆の期待を裏切らない。
私は違う。
期待に何も応えられなかった……
私、ツアイツの傍に居て良いのかな?」
ルイズ……
魔法が使えない事を気にしているのか。
君が、虚無の使い手だと言う事は教えられない。
僕が、悉く君の虚無覚醒のイベントを潰してるし。
出来れば、虚無として覚醒せずに僕が幸せにするのは傲慢か?
「ルイズ……
僕だって独りでは何も出来ないよ。
でも必要としてくれる人達が居て、補い合っている。
僕には君が必要だ!
君も僕を必要としてくれれば嬉しい」
ルイズは下を向いている。
ピンクブロンドの髪が顔を隠す。
「ツアイツに本当に私は必要?
今の私が有るのは、全てツアイツのお陰よ。
仲間も自信もこの胸も……
全て貴方が私に与えてくれた物。
私が、貴方にあげれる物は何かないの?」
ルイズ……
原作と違う、僕だけのルイズ。
「僕が、頑張れるのは大切な人達と幸せになりたいから……
その為に、周りにしわ寄せが行っても僕は行動するよ。
傲慢で自分勝手で我が儘で欲張りな上に凄くエロい。
しかもハーレムを作りつつ有るし、周りの仲間は変態か普通とは違う連中ばかり……
それが、僕さ!
こうして言えば、最低だよね……」
「…………ツアイツ」
「僕は、僕だけの幸せの為に君が欲しいんだ!
救い様の無い男だろ?」
「私で良いのかな?
私、貴族なのに魔法が使えないのよ?
貴方の邪魔にならないかな……」
僕は、ルイズの手を取って立たせるとベランダの手摺まで移動する。
天空には双子の月。
下に見える大きな池にも、双子の月が映っている。
幻想的な上下に有る月の世界に2人きり……
「ルイズ……
結婚しよう。
君となら、僕は幸せになる自信が有る!」
「くすっ……
普通は、私を幸せにする自信が有るでしょ?」
突然のプロポーズにも、ルイズは動じない。
彼女は、ほんのりと赤くなった顔で僕を真っ直ぐに見詰める。
「ルイズの幸せは、僕の幸せでしょ?
だから良いんだ。
それで、返事を聞かせてくれないかな」
「良いわ。
お嫁さんになってあげる。
絶対貴方を幸せにしてみせるから……」
「ルイズ……」
「ツアイツ……」
自然と顔が重なり合う。
月をバックに初めてのキスは、モンモランシーにされたのと同じフレンチな感じのキスだった!
少しだけ、ルイズのオッパイを揉んだのは僕達だけの秘密だ。
SIDEルイズ
今夜、勝負を賭けるわ!
ツアイツは明日、キュルケと共にゲルマニアに帰ってしまう。
チャンスは今夜しか無い!
お部屋には居なかった。
でも直ぐに見付ける事が出来たわ。
ベランダの椅子に座り、何か真剣な顔で考え事をしているみたい。
邪魔はしたくないけど、お話はしたいのに……
暫く様子を伺っていたけどバレてたみたい。
2人きりで話しをするなんて久し振り。
だから聞いてみたの。
魔法の使えない私なんて、本当にツアイツに必要なのか?
でも彼は……
私の為じゃなくて、自分の為に必要だと言ってくれたの。
私が、彼を幸せに出来る!
こんな嬉しい事はないわ。
もしもの為にと、下着も新品を用意したのだけど……
どうやらキスだけみたい。
自分で凄くエロいとか言ってるのに……
だから、モンモランシーみたくフレンチなのをお見舞いしたわ。
これで、ツアイツは私の物。
私もツアイツの物。
お姉様達が、何か企んでいても平気ね。
昔、彼の書斎から黙って借りたこの男の浪漫本。
本当に頼りになるわ。
男って、弱みを見せる女の子には優しくなるって。
半信半疑で実践してみたけど……
お父様とお母様とちい姉さまとエレオノール姉さまに明日の朝、報告しないと。
もう早い者勝ちだわ!
ヴァリエール家から、ハーナウ家に嫁ぐのは私だけ。
早く卒業してツアイツのお嫁さんになりたいわ!