第106話
おはよう!
キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ。
キュルケで良いわ。
先程、部屋に乱入してきたルイズが……
抜け駆けして、ツアイツと夜中に逢い引きして、プロポーズされたと惚気られたわ!
幾ら貴女の実家でも抜け駆けは万死に値するわ。
よって今までくすぐりの刑に処したのだけど……
この幸せそうな顔で寝てるのがムカつくわね。
次は私の実家に行くから、最後を飾るのは私よ。
キッチリとツアイツから、プロポーズして貰うから……
ヴァリエール公爵邸食堂にて……
今朝の食卓は……
不思議な雰囲気だ。
ヴァリエール夫妻とルイズはご機嫌だ。
ルイズは分かるんだけど、カリーヌ様もって事は昨日のプロポーズは報告済みなのかな?
しかし、カトレア様は普通だ。
エレオノール様は、寝室から出て来ない。
キュルケも不機嫌だから、みんな知ってるんだろう……
色恋沙汰を知られるのは、恥ずかしいんだけどね。
等と考えていたら、執事さんが驚きの報告をしてくれた!
「大変です!
レコンキスタが遂に、武装蜂起しました。
アルビオンの北方、ダータルネスを占拠し声明をだしました!」
遂に動き出したか!
オリヴァー・クロムウェル率いるレコンキスタ。
SIDEレコンキスタ
オリヴァー・クロムウェルは焦っていた。
資金は潤沢に有る。
最初こそ資金をばら撒き、わが教義で有る美乳派を広めようと頑張り賛同者も多かった。
自慢では無いが演説には自身が有った。
平民出身の司教と軽く見られる場合も有ったが、ブリミル教の権威とは素晴らしく些細な事でしかなかった。
勿論、金の無い平民などに美乳教は広めてない。
そんな奴らを相手にしても時間の無駄だし、何もメリットが無いからだ。
金が有り複数の女を囲える裕福層じゃなければ、そんな乳の好みでどうこう出来る者などいない。
最終的には買収し、唆した貴族を王家にぶつけてこの国を牛耳る予定だ。
美乳などは貴族に取り入る手段に過ぎず、話す切欠さえ出来れば金と利権と女を宛がって自分の思うように操るつもりだ。
そう!
性欲の強い、取り込み予定の貴族に会うまでが難しいのだ。
普通のブリミル教の司教としてでは、美乳の話は出来ない。
最初こそ我が話術で美乳の良さを説き、巨乳派を強要する王家との軋轢を誘う方法は上手く行っていた。
しかし最近になり
「男の浪漫本」
なる妖しげな物が出回り始め、買収が難しくなってきた。
美乳の良さを語っても所詮は言葉でしか無く、物語や挿絵を伴った
「男の浪漫本」
には適わず段々と話に喰い付く貴族が、少なくなってきている。
我が陣営でもこの様な本を製作・出版しようと思ったが難しい。
私の話を纏めて本にしてみたが、元々我が話術とは相手の対応をみて臨機応変に説得をするものだ。
人気など出る物ではない。
それに最初こそジョゼフ王を使いとして、頻繁に顔を出していたシェフィールドと言う女も最近では来なくなった。
資金は潤沢に寄越すのだが……
もはや新規の信者の開拓は不可能だ。
当初予定の半分以下しか貴族を抱き込めなかったが、挙兵する事にする。
補填として、金に飽かせて傭兵を雇い入れる。
奴らは乳などは関係なく、ただ金の亡者だが仕方ない。
兎に角、捨て駒として大量に雇い入れる。
戦力は整った。
だが、大義名分が弱い……
本来の予定では民の事など考えず、あまつさえ趣味の違いから王弟さえも抹殺する非道な巨乳教妄信者。
アルビオン王家を全ての女性が平等に持つ乳の美しさ……
すなわち美乳派が成敗する!
的な流れで進めようと思ったのだが、既にその内容では説得力が無い。
この国の貴族や平民の間で流れてしまっている、男の浪漫本には住み分け理論が展開され
「争うべからず、偉大なる乳の下に集え!」
のスローガンの下に各種多用な経典が出来て、誰でも気軽に購読出来る様になってしまった。
しかも
「男の浪漫本ファンクラブ・変態と言う紳士の集い」
などと言う、怪しさ爆発の団体に入信する貴族が大勢いる。
彼らは、敵対しなくとも我々に非協力的だ!
しかし事が起これば、敵に回る可能性が高いだろう。
最早ただの軍事クーデターでしか無く、金で動く輩しか廻りにはいない。
しかし盟主として顔を出してしまった以上、後には引けぬ。
申し訳程度にブリミル教の司教としての最後の意地で、聖地奪還も掲げておいた。
少しは敬虔なブリミル教徒を巻き込めるかもしれない。
戦力は3:7と劣勢だが、一転突破で押し切るしかないだろう。
まさか貧と巨の2大教祖が手を組む等と……
忌々しいハーナウ家よ。
ツアイツ・フォン・ハーナウよ!
覚えていろ。
アルビオンの次はトリステインだが、貴様等は許さない!
特別な刺客を送ってくれるわ。
SIDEアルビオン王宮
ウェールズ皇太子は、王宮の廊下を走っている。
普段の落ち着きは全く無く、王座の間の扉を荒々しく開けると、父王に向かい報告した!
「父上、レコンキスタが北方のダータルネスにて反乱を起こしました!」
「落ち着け、ウェールズよ。
ワシにも報告が着ている。
厄介なのは、奴は美乳派などとほざいていた。
小物と思い侮ったが、聖地奪還を表明した!
これは問題になるだろう。
分かるな、ウェールズよ?」
はっと、異端と言う言葉に思い当たる。
ヤツはブリミル司教だ!
「父上!
直ぐにロマリアに行きます。
あの男が、殉教者などと言われては我々が異端扱いになります」
「良かろう。
直ぐにロマリアに飛べ。
幸い、美乳派などと戯れ言のお陰で取り込まれた貴族は少ない。
これも、ツアイツ殿の男の浪漫本のお陰か……
しかし、我らは再び乳を戦乱に用いてしまった」
「もはや、我らの上級会員昇格は夢と潰えた……
許すまじオリヴァー・クロムウェルめ!」
「ウェールズよ。
急ぐが良い!
ワシが防衛線を構築し時間を稼ぐ」
「分かりました、父上。
必ずオリヴァー・クロムウェルの処罰が可能な様に話をつけてきます!」
後手を踏んだ、アルビオン王国。
しかし原作より、取り込まれた貴族は少ないが、その分傭兵は多い。
戦力比は3:7と有利だが、一カ所に集中して運用出来るレコンキスタに対して、こちらはこれから召集をかける。
即戦力は、常備軍のみ。
ウェールズ皇太子が、ロマリアと話をつけないと戦局はひっくり返る可能性は高かった!
しかし、アルビオンの親子の一番の怒りは上級会員昇格が、ほぼ不可能となった事だった!
オッパイが戦の大義名分になる事は防いだが、当事者にとってはオッパイの方が重要だった。
乳の恨みは恐ろしい……