第107話
こんにちは!
ツアイツです。
実家に帰る前に、キュルケを送る為にツェルプストー辺境伯の屋敷に向かっています。
シェフィールドさんがガリアに帰っているので、レンタルグリフォンでなく、キュルケと2人で竜籠に乗っています。
ソフィアは先にハーナウ本家にロングビルさんと遍在ワルド殿と共に行かせました。
流石に連れ回すのも気を使わせますし……
貴族なら他家に行ってもお客様ですが、彼女はメイドさんですから待遇もマチマチですし……
さて長い夏期休暇ですが、漸くゲルマニアの地に入りました。
先にキュルケから連絡が行っていたのでしょう。
ヘルミーネさん達の風竜が、国境付近から護衛に付いてくれました!
昔なら国境付近で風竜とか展開したら、軍事行動と言われかねない関係だったのに、融和政策は上手く機能してるみたいで一安心。
等と考えていたら
「ツアイツ……
ルイズから聞いたわよ。
プロポーズしたのね?」
逃げ場の無い空の上でこの質問は辛い……
しかも2人きりだし。
「えっと……うん」
「そう。次は私よ。
楽しみにしてるわね」
嗚呼……
なんて笑顔で言ってくれるんだ!
そして後ろから抱き締めてくるし……
こんなに積極的なキュルケは初めてだからドキドキしてしまう。
しかしこれは、実家でプロポーズを受けてその場で両親に報告パターンか?
遂にツェルプストー辺境伯を義父さん!
と、呼ぶ日が来るとは……
不思議な気持ちだ!
ヘルミーネさん達のニヤニヤも止まらないし……
等と考えていたら、ツェルプストー辺境伯の屋敷に付きました。
わざわざ夫妻がお出迎えの為に玄関まで出て来てくれるとは……
「ツアイツ殿……
いや義息子よ、良く来たね。
暫く滞在してくれ!」
「ツアイツ殿、ご無沙汰してましたわ」
ツェルプストー夫妻から挨拶を先に貰ってしまった!
しかも夫人のお腹は大きいぞ……
「此方こそご無沙汰しておりました。
今日は、わざわざ出迎えまでして頂いて感謝の言葉もありません」
「良いのです。
新しい家族になるのですから……
このお腹の子も、貴方の義弟になるのですよ」
ポンポンと幸せ一杯な笑顔で自分のお腹を叩く。
「立ち話もなんだ。
さぁ入ってくれたまえ。
お前も身重なのだから安静にな……」
「お母様、私に掴まって……」
キュルケを伴い入っていく母娘をツェルプストー辺境伯と見送る。
「ツェルプストー辺境泊……」
「義父上でも義父さんでも構わないぞ、義息子!」
どうにもこの人には適わない気がする。
「義母上ですが、今回の件は詳細までご存知なのでしょうか?」
「いや、アレには教えていないよ……」
「そうですね。
母体に不安は禁物でしょうから……
そのつもりでいます」
2人並んで玄関を見詰める変な格好だ。
しかし、漸く世継ぎの男子を授かった夫人に心配事は無用でなければ。
「義息子よ……
キュルケはもう抱いたか?
これから死地に向かうのならゲンを担ぐ意味でも一発やっておけ!
迷信では無くお守り変わりだよ」
「なっなななな何を……」
「君は、有能だ。
周りに頼りになる者も居るし慎重で用意も周到だ。
しかし、無謀な事も仕出かすからな。
何処か抜けている所が有る……
人は守るべき者を持つと強くなる。
沢山居れば、より強くなるだろう」
「しかし……
死地に向かう身なれば」
「それだ!
最初は工作だけの筈。
しかし、君は既に前線に立つ気でいるのかい?」
「……………」
「自分だけの家族を持て。
人はそれで強くなれる。
さぁ妻達の所へいこうか!」
SIDEツェルプストー辺境伯
ツアイツ……
君は、自分が思ってるより周りの人達の愛情を受けているんだよ。
君にしか収められない此度の騒動でも分かった。
君は、何処か無謀な時が有る。
今回の件でも、ガリア王ジョゼフから難題を押し付けられたが……
その寵妃と一人娘を籠絡するのは危険じゃないか?
下手をすればガリアと開戦の危機だったが、オッパイと変態で何とかしてしまうんだろうね、君は……
そして私の情報では、黒衣の魔女と義姉弟になるそうじゃないか!
分かっているのかい?
あの女の義弟とは、ガリア王族の一翼を担うのだよ。
しかも君は、既にイザベラ姫と竜騎士団と縁を結んでしまった。
もうゲルマニアとて静観は出来ないだろう。
既に君は、ゲルマニアの一貴族では無い。
この国に縛るのは不可能だろう。
だから、この滞在でキュルケとは本当に結ばれて貰うよ。
既に、ハーナウ夫妻にも使いを出した!
明後日には、身内だけで略式だが結婚式を行う。
君は、君の弱点と言うか強みはね……
底抜けのお人好しで有り、身内と認めれば無条件で信じてしまう事さ!
時として、魑魅魍魎の跋扈する貴族社会では……
直ぐに付け入れられるだろう。
しかし、我が娘と結ばれれば介入は容易だし理由もたつからな。
君の不足分は、我々大人が補おう!
「義父上?
皆がまってますが……」
思わず、玄関先で思考に耽ってしまったか。
「ああ、すまないな。
それでは、行こうか」
これからのハルケギニアは、誰も予測がつかぬな。
しかし……
フィギュアか。
我が一族の若い娘達をシリーズで売り出してはどうだろうか?
第一段は、色気が足りぬ。
第二段は、ちとマニア受けを狙いすぎ。
第三段は、ファンを選ぶだろう。
大多数の、エロい大きなお友達を取り込むには……
やはり我が一族の、赤髪の妖艶さが必要だ!
これは早速、義息子と協議せねばなるまい。
第四段は、ツェルプストー辺境伯の赤い髪の女性騎士団!
早速ヘルミーネ・イルマ・リーケを呼び出そう。
キュルケは……
ピンで売り出して人気を集めさせよう。
アイドルか……
ツアイツ殿も、わざわざガリアなどで探さずとも、周りに素質ある美女・美少女は沢山居るだろうに。
まぁこれも、義息子の人身掌握術だな。
地盤の弱かったガリアとアルビオンはもう……
オッパイ一色だからな。
全く敵に回すと、常識が通じない手段にでるから厄介だろう。
レコンキスタか……
何時まで持つやら?
「あの……
義父上、途中から喋ってますが?
第四段は、ツェルプストー辺境伯の赤い髪の女性騎士団!
シリーズ化が希望ですか?」
あれ?
私とした事が……
まぁ丁度良いか!
「そうだ!
我らゲルマニアにも、テファ殿以外のアイドルが必要だろ?
彼女は、そうそう表には出れない理由が有るのだから?」