第109話
レコンキスタ本部
「圧倒的ではないか!
我が神の軍団は……」
オリヴァー・クロムウェルは悦に浸りながらワインを飲む。
初戦は完勝だ!
ダータルネスの制圧は完了し繋留中の軍船も幾つか拿捕出来た。
此処を拠点とし、次はロサイスを目指す。
しかし敵も軍港としての機能の有るロサイスに軍を展開し始めている。
なんと、ジェームズ一世が直接の指揮を執りに出張っている。
息子は、ロマリアに私の処遇について言質を取りにいったのだろう。
しかし、甘いな。
取り込みは何もアルビオン貴族だけではないのだよ。
ロマリア本国の反教皇派の何人かにも取り入っているのだ。
しかも聖地奪還を唱えている殉教者なのだ!
簡単にはいかないぞ!
ロサイスを落とせば、サウスゴーダを経てロンディニウムまで一直線だ。
果たして間に合うのかな?
「アーッハッハー!
ブリミルの司教たる私を簡単に害せる訳がないだろう。
ブリミル様々、万歳だ」
初戦はレコンキスタの完勝であり、アルビオン王党派は苦戦を強いられていた。
SIDEツアイツ
僕は今、苦境に立たされている……
ツェルプストー三人娘のうち、ヘルミーネとイルマさんのフィギュアの原型は出来た。
しかし……
この天然娘リーケ嬢に苦戦している。
「何故、リーケさんはそのホワイトセーラー服を着ているのですか?」
そう!
彼女は、男の浪漫本シリーズのフィギュア。
ソフィアの着せ替え用のホワイトセーラー服と全く同じものを着ている。
しかも手には、ネコミミと尻尾のオプションを持ってますけど?
「前に貴方に会った時に興味を覚えた。
色々調べたら、男の浪漫本ファンクラブまで辿り着いたので入会した。
まだ初級会員だけど……
この服は自作よ」
なんと!
女性の入会を禁止する事はしてないと言うか……
もとより想定外だった!
だって、エロい大きなお友達の集いだから……
「そっそうですか……」
「色々勉強した。
この装備の時の仕草や言葉使いとか……
クスクス、実践する?」
2人の会話に付いていけるのは、ツェルプストー辺境伯のみ。
しかし彼もニヤニヤだ!
「ほう?
義息子よ……
何故、義理の父たる私にはその会員になれるのだろうね?」
ツェルプストー辺境伯のニヤニヤが止まらない。
しかも、トンでもない事を言い出した。
貴方も既に中級会員ですよね?
「すみませんが……
確か、紅い髪のパパさん……
でしたよね?
一族幽閉のエーさんと張り合っていた?」
女性陣は、不信な顔だ。
見た目、可愛い服なのに何をコソコソ言い合っているのか?
「なっ?
知らんぞ、私は無関係だ」
「お父様……
そのエーさんとは閣下ですか?」
リーケさんが呆れた顔で見ている。
でもそれは、一寸周りに知られてはいけない情報ですよね。
「リーケさん……
そのオプションを着けて台詞とポーズをお願いします」
「そっそうだな。
今はフィギュア作成が大切なのだよ」
2人して話題を変えようと必死になる……
「お父様とツアイツ君のエッチ」
彼女は、ハニカミながら爆弾投下!
この後、ツェルプストー女性陣に囲まれて尋問を受ける羽目になった……
そしてリーケさんは、コスプレ不思議ちゃんで売り出す事にする。
このツェルプストー三人娘シリーズは結構な人気が出て、彼女等に求婚する若手貴族が増えたそうだ。
国外の貴族も居たが全て玉砕しているらしいが……
SIDEウェールズ皇太子
ロマリア連合皇国、宗教庁にて……
教皇に謁見を申し出て、既に2日が経っている。
しかし、宗教庁の豪華な一室に軟禁状態だ。
待遇は良い。
これでも一国の皇太子だから当たり前だ。
対応する神官達の慇懃無礼な態度と待遇も我慢出来た。
しかし中々に教皇との取り次ぎの許可が下りない。
これでは、アルビオン王党派は、レコンキスタに積極的に攻められない。
守勢に回らずにはいられないし、敬虔な信者は反乱軍に志願してしまうかもしれない。
焦りだけが増えていく……
このままでは駄目だ。
ツアイツ殿の話の様に大切な者を守る為には手段を選んでは駄目だ!
しかし私に何が、アルビオンの皇太子として何が出来るのか?
今こそ、私の漢度が問われる時だ!
ツアイツ殿の言われた通り大切な者を守る為に手段は選ばんぞ!
軟禁された応接室の扉を開けて、大声をあげながら進んで行く。
扉の外で待機していた神官達が慌てて進行を止めようとするが構わない。
「私は、アルビオン王国の皇太子、ウェールズ・デューダー。
何時まで私を待たせば気が済むのだ!
今は我が国が、ブリミル教司教を名乗る男に侵略されている。
なのに足止めをするならば、奴の武装蜂起はロマリア公認と認めるが構わないのだな?」
抑えようとしている神官達に告げる。
彼らも責任を取れるのか?
と言われれば、上に確認するしか無く道を空けた!
「これはこれはウェールズ皇太子。
ブリミル様の神殿でご無体な事は関心できませんな」
妙に金ピカな枢機卿が出てきた。
実は彼はレコンキスタに買収されていた。
なるべく教皇との謁見を延ばす様にと……
「貴方は一番最初に対応した枢機卿ですね?
王族たる私が、アルビオンの危機を訴えても尚、足止めをすると考えて良いのですな?」
覚悟……
国を護る為に、立ち止まる訳にはいかない。
例えそれが、強迫と思われても……
「そっそれは……
教皇も多忙を極めているので、中々調整がつかないのです。
ですから……」
「時間は取らせない。
質問にイエスかノーで答えてくれれば良い。
返答次第では、我が国と敵対する事になるが、な。
さぁ教皇の所まで案内をしてもらおう。
まさか、貴殿まで多忙だから無理とは言わないですよね?」
覚悟を決めたウェールズは、最早ブリミル教とて遠慮する気は無くなった。
ノーならば、レコンキスタを倒した後にロマリアにも責任を取らせるだけ。
イエスでも、あの様な凶人を育てたロマリアに抗議する。
ああ……
なる程、覚悟が決まれば道は幾らでも開けるのか。
これが、父上が仰ったツアイツ殿の本質を見極めろ!
と、言う事か……
この先を歩くギラギラと着飾り太っている枢機卿を見て考える。
父上、待っていて下さい。
ツアイツ殿から学んだ覚悟を持って教皇と謁見してまいりますから!