第110話
男、ウェールズ頑張る!
宗教庁の廊下を神官をかき分けて進んで行く。
何度か教皇には会っているので、大体の居場所は分かる……
「お待ち下さい。
ウェールズ皇太子!
教皇はお忙しいので……」
名の知らぬ枢機卿が制止するが、もう遠慮はしない。
「貴殿は、我がアルビオンにて武装蜂起したオリヴァー・クロムウェルの仲間と思って良いのだな!
私を止めるとは、そう理解するが宜しいか?」
この手の輩は責任を追求すると怯む筈だ!
「いえ、私は……
その様な考えは有りませんので……」
実際この枢機卿はワイロを貰っているからドキリとする。
しかし2日は足止めしたから、義理は果たしたと思う事にした。
「ならサッサと教皇に取り次いで頂こう!
一刻を争うのだよ」
「分かりました……
此方へ」
仕方無く、頭を下げて教皇の間に向かう……
昔は、ブリミル教の枢機卿ともなれば、それなりに気を使われた物だが今回は強行された!
まぁ国が滅ぶかの瀬戸際だし、呑気に構えてはいられないのだろう……
教皇政務室にて
「ジュリオ、何やら廊下が騒がしいですね?」
無駄に豪華な部屋で無駄にデカい机に座り、何やら書類を読んでいたヴィットーリオが側近で有り自身の使い魔でも有る少女?
に問い掛ける。
「ヴィットーリオさま。
様子を見て参ります!」
ちょこんと頭を下げて出て行く少女?の尻の辺りを凝視する。
やはり「男の娘」は良いなぁ……
今夜も張り切るか!
それに新しい聖歌隊のメンバーも交えて……
「ふっふっふ。
夕食は何か精の付く物を頼もうかな」
邪なオーラを発する聖職者のトップ。
この世界の教皇ヴィットーリオは、「男の娘」が大好きだった。
あれは女性?
穢らわしい!
何を言うのか……
僕の使い魔がこんなに可愛い訳が無い!
あの笑顔の可愛いジュリオが女の子の訳が無いじゃないか!
我がロマリアは、ハルケギニアで先立って「男の娘」文化を広めるのだ!
始祖ブリミルもきっとそうだった筈だ。
私は神の代弁者たる神官のトップ!
私の性癖が、世界スタンダードな電波をビビッと感じたのだ!
女性など、我が国の秘宝を奪い新教徒になったヴィットーリアと同じ異教徒!
「男の娘」を産む為に存在を許している奴らよ。
「ロマリアは男の娘文化発祥の地として、私と共に栄えるのだ!」
ヴィットーリオの魂の叫びが室内にこだまする……
ジュリオは騒がしい方向へ歩いて行くと、神官と揉めているウェールズ皇太子を発見した!
「ここは、教皇ヴィットーリオ様の居られる宗教庁ですよ。
何を騒いでいるのですか?」
「男の娘」姿のジュリオを見てウェールズが顔をしかめる。
「ジュリオ殿か……
久し振りですね。
相変わらず……
その、ヴィットーリオ殿の趣味は……
アレですね」
真っ赤になり騒ぐジュリオ!
「五月蝿い!
仕方無いじゃないですか」
「それで、もう謁見を求めて2日も待たされているのだが……
ヴィットーリオ殿はいらっしゃらないのか?」
「えっ?
その様な報告は受けていませんが」
その時、例の枢機卿がそっと離れようとするが……
「彼が、教皇は忙しいので取り次ぎに時間が掛かると言いましてね。
我が国でブリミル教の司教が武装蜂起をしました。
ロマリアが裏で手を引いているのか確認したいのですが!」
「ちっ一寸お待ちを!
其処の貴方も一緒に来て貰いますよ」
逃げ出しそうな枢機卿の首を掴みズルズルと引っ張って行く……
ちっ!やはり妨害か……
現教皇は美少年を女装させて侍らす変態だからな。
反教皇派が絡んでるとなると、一筋縄ではいかないか……
ウェールズは、この交渉が難航すると思い溜め息をついた。
「ウェールズ皇太子!
教皇様の下へ行きましょう!」
大の大人を引き摺るジュリオを見て、見た目は美少女でも男は男か……
と、思いながらついて行く。
確か「男の娘」と呼ぶのだろうか……
聖歌隊も全て幼い美少年を集めて女装させているヴィットーリオとは、絶対意気投合はしないな!
巨乳派だったが、最近ツアイツの影響で視野の広がったウェールズでも、無理な物は無理だった。
歴代の女好きな教皇とその神官達の中で、突然生まれた「男の娘」好きな教皇ヴィットーリオ!
彼と他の神官達との溝は広がる一方で埋まることは無いだろう。
この教皇の代で、ロマリアはどうなってしまうのか?
既にブリミル教に思い入れが少ないウェールズは早く話をまとめて、この神殿から出たいと思っていた。
教皇の間にて!
「ヴィットーリオ様!
アルビオンのウェールズ皇太子が謁見を求めてます。
宜しいでしょうか?」
いきなり扉を開けながら、1人の反教皇派の枢機卿を引き摺りながら、ジュリオが入ってくる。
その後ろから、ウェールズ皇太子も顔を覗かせる。
「ヴィットーリオ殿!
久し振りです」
「これは、どんな騒ぎなのでしょうか?」
流石に冷静沈着な謀略教皇でも、いきなりウェールズ皇太子が現れては驚きを隠せない!
「急ぎますので、単刀直入に聞きます。
オリヴァー・クロムウェル司教がアルビオンにて、武装蜂起しました。
既に国土の一部を制圧され現在も侵攻中です。
これは、ロマリアの差し金と思って宜しいか?
実際、貴方に会うのにも2日も足止めされてますから……」
密偵団より報告は受けている。
美乳派なる教義を広め、聖地奪還を目指す司教が居ると……
しかし、バックに協力者が居て資金援助をしている事も分かっているのだが。
トリステインには、そんな余裕は無い。
ガリアかゲルマニアか?
しかし、ゲルマニアなら攻略はトリステインが先だろう。
アルビオンはその後だ……
本当に侵略を考えているならばだが。
しかし、国内の安定を進めるかの国にも余裕は無い。
なれば、黒幕はガリアのジョゼフ王だ!
そこまでは、読めているのだが……
まさか、あの優等生的なウェールズ皇太子が此処まで強行するとは思わなかった。
何か心情の変化が有ったのか?
詳しい話を聞こう。
「まぁ落ち着いて、お座りになって下さい。
詳しい話をお聞きしますから……」
巨乳大好きウェールズ皇太子と男の娘大好きのヴィットーリオの会談が始まった!