第111話
無駄に豪華で金ピカな部屋……
歴代の教皇の権威の象徴のつもりか、何度来ても呆れる成金趣味丸出しだ!
本人は質素と言うか、「男の娘」関係以外は無駄を省く性格なのに……
いや、「男の娘」に全てをかけるから他には予算を回せないのか?
確かロマリアの聖歌隊って200人から居るぞ。
ハーレム200人なら費用は莫大だよな……
どんだけ、エロに金使ってんだ!
私だって男の浪漫本購入の予算捻出には苦労しているんだが……
これだから生臭さ坊主は嫌なんだよ!
SIDEヴィットーリオ
なんだ?
その批判的な眼差しは……
貴様も巨乳とかほざいてるから国が割れるんだぞ!
貴様に「男の娘」の良さを叩き込んでやろうか?
「それで、ウェールズ皇太子のご用件を伺いましょう」
不穏な空気が漂う室内で感情の籠もらない声で訊ねる……
「ブリミル教の司教……
オリヴァー・クロムウェルをご存知ですか?」
ジュリオに拘束された枢機卿を見て答える。
「そこの枢機卿の派閥の一員ですね。
一応、知っていますよ」
「そうですか……
その男が、美乳派なる教祖となりアルビオンにて武装蜂起。
ダータルネスを占領しロンディニウムに侵攻しています。
これはロマリアがアルビオンに対して宣戦布告した!
と、理解して宜しいか?」
「なっ……
口が過ぎますよ、ウェールズ殿!
教皇に対してなんと不敬な」
嗚呼……
ジュリオ!
真っ赤になって私の為に怒ってくれるんだね!
今夜の相手は君だけだ。
聖歌隊のメンバーは呼ばないし今夜も君を寝かさないよ。
ハァハァ……たまらんなぁ!
「ジュリオ、良いのだ。
ウェールズ殿、何故オリヴァー・クロムウェル司教がロマリアの尖兵と思われるのか?」
「聖地奪還……
そう唱えてアルビオン国内から有志を募っています。
殆どは傭兵とアルビオン王家に隔意有る一部の貴族ですが……」
なる程、殉教者として認められては困る訳だな。
「聖地奪還……か。
殉教者では無いのですか?」
「何ですと!」
さて、殉教者で無いと認めてあげるのに、どれだけの譲歩を引き出しますかね?
寄付を募るか、アルビオン国内にブリミル教会を新築させるか……
「つまり……
教皇は、美乳派がブリミル教の教えと公式に認められるのですな」
「なっ何故そうなるのですか?」
「男の娘……
でしたか?
教皇のお気に入りの聖歌隊やジュリオ助祭枢機卿も、偽りの寵愛ですか?
美乳派か……
所詮は教皇も女性のオッパイ好きなのですね」
なっななな、何を言い出すんだ!
私が、私の「男の娘」への気持ちが偽りだと!
「いえ、公式にアルビオンで美乳派を押し進めるなら、オッパイ好きな教皇として国内外に伝える迄です。
我らアルビオンは巨乳派で有り、ゲルマニアは貧乳と巨乳の住み分けの地。
トリステインは貧乳派が台頭しています。
ガリアは……
聞けばジョゼフ王は巨乳派だそうです。
我ら始祖の子らに、始祖の弟子たる貴方達が美乳派を力ずくで押し付けるのですから……」
何を言い出すのだ?
ロマリアが、ロマリア全土が美乳派だと……
フザケルナ!
「もうお話する事はないでしょう。
美乳派の頭領ヴィットーリオ殿……」
「お待ちなさい。
それは間違った認識ですよ!
私は美乳派など認めてません」
「では、アルビオンに滞在する連中は、オリヴァー・クロムウェルは、ロマリアのヴィットーリオ殿とは趣味が異なりブリミル教とも無関係の連中として扱って良いのですね?」
くっ……
私の大切な「男の娘」をタテに取られては何も言えないではないか。
「そうです。
そして美乳派なる悪の集いは、そこの彼の派閥の独断で有り処罰もこちらで行います」
「なっ……
何故だ!
私は無関係だぞ」
話の流れに乗れずボーっと聞いていた枢機卿は、いきなり処罰されると言われ混乱した!
「黙りなさい!
貴方のお陰で、アルビオンとロマリアが開戦の危機だったのです。
当たり前でしょう。
しかも、アルビオンの皇太子に対して引き留め工作までしている。
もはや言い逃れはできませんよ……
ジュリオ、彼を異端として拘束し彼の派閥全員を捕らえなさい」
「はっ!
こちらに来るのだ、異端者め」
小柄な体格で、小太りの枢機卿を引き摺って行くジュリオ……
アルビオンから毟り取れない分は、反教皇派の貴方達から貰いますよ。
私は無駄と損は嫌いなのです。
「見事な対処ですね。
無意味に足止めされた件は、無かった事にします。
では、オリヴァー・クロムウェルは、ブリミル教と無関係の異端者として扱いますが宜しいですね」
「良いでしょう。
正式に書類にして渡します」
全く、今までのウェールズ皇太子ならプライドや建て前論しか言えず、ブリミル教に対しても遠慮が有った筈だ。
今回は何だ?
王族が言い掛かりか恐喝紛いの方法で、良いように話を進めてきた。
しかも私の性癖をタテに取り、周りの国々と連携して噂を広めるだと……
このボンボン皇太子を変えた要因はなんだ?
一礼し出て行くウェールズ皇太子を見ながら考える……
これは、レコンキスタも長くはないですね。
つまりブリミル教の元司教の反乱軍は負けると言う事です。
疲弊したアルビオンでのブリミル教の威信は地に落ちるか……
全く問題ばかり起こしてからに。
トリステインの園遊会に出たバリベリニ助祭枢機卿からも、気になる報告が有りましたし……
私の「トリステイン全土「男の娘」普及計画」の障害となるか?
巨乳教祖ツアイツ・フォン・ハーナウよ!
我が道を阻むなら、貴様は敵だぞ。
SIDEツアイツ
思わず、怖気が走り身震いする……
折角、ツェルプストー3人娘フィギュアの色付をしていたのに失敗してしまった……
しかし、さっきの怖気は何だろうか?
凄く嫌な気分だ。
考え込んでいると、ドアをコンコンと叩く音が聞こえた。
「ツアイツ、お茶にしない?」
もう3時か……
キュルケがお茶に誘ってくれた。
「ああ……
有難う、今行くよ」
気のせいと思い、気晴らしにお茶でも飲もう。
そろそろシェフィールドさんとも合流出来るし、此処はツェルプストー辺境伯領だ。
そうそう危険は無いだろう。
ヴィットーリオに目を付けられたが、流石にそれは分からなかった……