第112話
世界はエロに優しくないのか……
こんにちは!
ツアイツです。
2日ほど掛けてツェルプストー3人娘フィギュアの彩色が終わり御披露目をしています。
今回の紅い髪の乙女シリーズは次回の会報及びカタログにて発表する予定ですが……
「ツアイツ君、私はもっと胸が大きいと思うの?」
「私のは、少し足が太くないか?」
「……お腹引っ込めて」
やはり自分がモデルとなると、客観的に物事を判断出来ないのかな?
しかし、反論は許されない雰囲気だ!
粛々と修正をさせて頂きます。
午後からずっとフィギュアの手直しをしていたから、体が固くなってる……
コキコキと肩を鳴らしながら凝りを解していく。
ん〜気晴らしに外気に当たろうかな?
部屋を出て夜の屋敷内を適当にうろつく。
二階の廊下を歩いていると雲が晴れたのか、月光が廊下を差し込み2つの色で僕の視界を照らす……
独り静かに月光を浴びながら歩いていく。
ふと、ベランダに出るドアを見付けた。
見れば4メートル四方の小さなベランダだ。
外に出て軽く柔軟体操をする。
ん〜体がバキバキと鳴るなー!
ラジオ体操第一を終えて手摺にもたれ掛かる。
最近、すっかり夜のベランダで考え込むのが多くなったよな……
てか、夜更かしばかりしてないかな?
思考をこれからの事に戻す……
男の浪漫フィギュアは順調だ。
しかし、これからの普及には女性のファンを獲得するべきか?
「女性の夢フィギュア」
とか言ってイケメンフィギュアも作ってみようか……
執事とか騎士とか、人気でないかな?
購買層が有閑マダムだと、ちょい露出とか……
駄目だな。
どのみち雛型は僕が作らなければならないのに、半裸の男など妄想爆発で作れる訳が無い!
しかし……
諜報が探ってきた教皇ヴィットーリオ。
何とこの世界の教皇は、美少年好きな上に彼らに女装をさせて聖歌隊を作り上げたとか……
総勢200人の男の娘のハーレムか。
溜め息が出る規模だな。
流石はロマリア!
自身の欲望にまっしぐらかよ……
これは、僕とは敵対したと同義だ!
我らオッパイ大好きな変態連中が、美少年と仲良くなれだと。
無理な物は無理だ……
そして無理だ!
どう考えても無理だよ。
大切だから複数回言いました。
しかし……
先に謀略を仕掛けられる前に何か手を打つ必要が有るかな。
「ツアイツ殿、不思議な体操でしたね……
でも端から見ても合理的に感じましたよ」
振り向くと、ツェルプストー夫人がにこやかに立っていた。
何故だか、夜のベランダは原作キャラとのお話の場所なのか?
「義母上、お腹の子供に障りますから……
夜風に当たらぬ様に中へ」
「大丈夫よ。
もう夏なんですもの……
少しは夜風に当たっても。
貴方も心配性ね。
主人と同じ位に」
やんわりと室内に入るのを断られた。
仕方無く錬金で椅子を用意する。
「せめて座って下さい。
それで、何かお話が有るのですか?」
「ふふふっ
貴方は何時も冷静ね。
初めてキュルケの遊び相手として招いた時も、幼子なのに大人と話していると錯覚する位に……」
自分は手摺にもたれ掛かりながら話をする。
「自分でも早熟だと思います。
周りに比較対象も居なかったのも有るのですが……
少々異常でしたね」
自虐的に笑ってみせる。
「稀に生まれる、時代を動かす英雄とは、そういう者だそうです。
主人も内緒にしてるつもりでもね……
女には女のネットワークが有るのよ」
あーバレてるのか……
「身重の女性に話す内容では無いですから。
それに既に手は打ちました」
「それよ!
普通はね、そんな大問題をおいそれと対処出来ないわ……
本当に不思議な子ね。
あの主人が、息子程の貴方に頼り切りなのも分かるわ。
でも、本当に義息子になるのよね。
主人の喜びようは凄かったわよ。
この子も貴方の様に育てるんだって」
お腹をさすりながら、愛おしそうに生まれて来るだろう我が子に話し掛けている。
いや、僕は特殊な変態だから真似しちゃ駄目だと思うのだが……
でも、本当に義理の息子になるんだなぁ。
「ええ……
明日、キュルケにプロポーズする予定です」
夫人はヨッコラショと立ち上がると近付いて来た。
「キュルケを宜しくね。
あの子は貴方しか見ていないの……
言い寄る他の殿方など、鼻で笑う位に」
そう言って軽く抱き締めてくれた。
「必ず幸せにしてみせます!」
それしか言えなかったのだが……
「それと……
女性関係は、もう少し抑えて下さいね」
そう釘を刺して行かれました。
いや、確かに女性関係は自重してないけどさ。
貴女の旦那さんも30人位居ますよね?
僕は……
ナディーネ・エーファ・ルーツィア・シエスタ・ソフィアのメイド5人。
テファ・ルイズ・モンモランシーそしてキュルケで9人か……
まだ15歳の小僧が9人も囲うなら釘も刺すか。
暫くは自重しよう!
SIDEジェームズ一世
「陛下、防衛拠点の構築が粗方完了しました。
多数の偵察隊を送ったので状況確認も順次可能です」
急拵えだが、中々に豪華な作戦本部でジェームズ一世は配下からの報告を聞いている。
「うむ。
ご苦労様だった。
それと増援の方はどうだ?」
「多数の兵を動かす故、まだ暫くは時間が掛かるかと……
先発で少数を率いて参戦しているのが殆どです」
「そうか……
彼らの忠誠心には応えねばならぬな」
「陛下……
言い難いのですが……」
伝令が言い辛そうにしている。
「何だ?言う事があるなら構わぬぞ」
「参戦した貴族からチラホラ話が出ていますが……
此度の戦、乳を用いての反乱では有りませんか?
例の男の浪漫本思考が、蔓延しています」
思わず溜息がでる。
「大いなる乳の下へ集え……
確かにその考えに反する行為だな」
まさか敵対はしないが、協力が消極的になろうとは。
「一度、皆に話された方が宜しいかと……
表立って騒いではいませんが、何れ士気に関わるかと具申します」
ツアイツ・フォン・ハーナウ殿か。
彼の理想は共感するし、奴らの勢力も大きく削いでくれた事には感謝している。
あとは、我ら王党派がしっかりすれば問題は無いのだろうが、最悪の事も考えねばなるまい。
「誰か、ゲルマニアに使者を送るぞ。
親書を書くので準備してくれ」
ジェームズ一世は正式にゲルマニアに国交と、ツアイツとの面会を希望する。
彼の頭の中には、男の浪漫本思想がこの戦の鍵を握ると思えてならなかった……