第114話
ツェルプストー辺境伯領に滞在し3日目になりました。
おはようございます。
ツアイツです!
今朝はキュルケと2人、ツェルプストー辺境伯の屋敷を散策しています。
無駄にデカい!
久し振りに、キュルケとのんびりと歩きながら出会った頃の事を話し合っています。
まだ幼女だったキュルケと初めて会った時も、こうして屋敷を案内して貰ったなぁ……
「ツアイツ、覚えている?
この池の辺(ほとり)を……」
懐かしいな。
初めて魔法を使った演劇を披露した場所だ。
でも、少し変わってしまったかな……
「初めて君と出会った時に2人で演劇を披露した場所だね。
でも、少し変わってしまったかな?」
「そうね……
この薔薇なんて、当時は苗木だったのに今では立派な枝振りだわ」
ちょうど、キュルケの腰位まで成長した薔薇の木に真っ赤な花が咲いている。
薔薇って今が時期だったっけ?
「あの頃より君は変わってしまったね……
まだ蕾だったのに、艶やかな大輪の花になるとは」
キュルケは、花に例えれば薔薇だろう。
艶やかに存在感を主張する大輪の花……
僕の知りうる女性の中で、最大の豪華な花だ!
「くすくすくす……
珍しいわね。
ツアイツが、そんなにストレートな褒め言葉を言うなんて」
自分の家なのに、シンプルだけど体の線を強調するタイトなドレスを着込み、髪をアップさせているキュルケはゴージャス美人だ!
彼女にプロポーズをするのが、本日最大のイベントなのだ!
柄にも無く緊張する。
「キュルケ……
聞いて欲しい」
彼女と並んで歩いていたが立ち止まって話し掛ける。
キュルケは三歩先に進んでいたが、振り返る……
「僕はこれから、レコンキスタと戦う。
前線に出る気はないが、向こうは明確に敵対の意志が有る。
もう裏から暗躍は不可能かも知れない。
本来ならば、全て解決してから話す事なんだが……」
彼女は真面目な顔をしている。
大体の予測は付いている筈だが、言葉にしなければ駄目なんだ!
「それで……僕は……」
いきなりキュルケが、僕の胸に飛び込んできた!
思わず受け止めたが、そのまま唇を奪われる。
「ツアイツ!
ツェルプストー家の娘はね、情熱的なのよ!
散々待たされて、三人の中で一番最後なんて許さないわ」
「御免ね……
でも気持ちはr」
「黙って聞いて……
だから私から言うわ!
貴方が好きなの、愛しているわ!
だから、結婚してあげる。
貴方にだけしか言わないわ……
愛してるわ、ツアイツ」
そう言って、再度フレンチなキスをされた!
原作の二つ名は微熱だったが、今は情熱なんじゃないだろうか……
しっかり彼女を抱き留めて愛に応える。
暫く抱き合ったてから、お互いの体を離す……
「そのプロポーズお受けしよう!
初めてだよ、プロポーズされたのは」
「そうね。
私がツアイツにプロポーズした初めての女……ね」
三番煎じは嫌だから、プロポーズを待たずに逆に自分からするか……
流石はツェルプストー家の娘だね。
その後は手を繋ながら庭を散策に屋敷に戻った!
玄関でツェルプストー夫妻が待ち構えていたのは……
見られてたのかな?
「キュルケ、おめでとう!
流石はツェルプストーの血を引く娘だ。
ツアイツ、キュルケを宜しく頼む」
「そうですわ。
貴女はもう、ハーナウ家の娘として行動しなさい。
向こうを優先するの……
分かるわね?」
「お父様、お母様……」
「必ずキュルケは幸せにしてみせます」
周りから拍手が沸き起こる!
見渡せば、殆どの使用人の方々が居るんだけど?
代表して執事の方が祝辞をしてくれた。
「ツアイツ様。
幼少の頃よりお屋敷に遊びに来られ、私達使用人にも貴方は分け隔てなく接して下さいました。
自ら治療を施して頂いたメイドも多数居ると聞いています。
そんなツアイツ様を若様と呼べる日が来るとは……
感激で有ります」
ああ……
彼らとも10年近い付き合いだもんな。
「有難う。
キュルケはウチの家にお嫁に来るけど、こちらにも顔を出すから……」
初老の執事に男泣きなどされては、テレるよ。
「勿体無いお言葉を……」
しかし、周りをガチガチに固められた感が有るな。
別に婚約破棄とかしないけど、男的にキツい物が有るのも確かだ……
これが、マリッジブルーってヤツか?
これで婚約者で残すはテファだけだ!
実家に帰ったら直ぐに気持ちを伝えよう……
SIDEデルフリンガー
俺っちは、竜籠に入れられっぱなしで忘れられている……
兄さん、幾ら何でもこの扱いはヒデーぜ。
しかも縛られて固定されてるから、喋れもしないんだよ。
折角、何人か近くに来た使用人にも話せねー!
俺っちヤサグレちまうぜー!
「すまないデルフ!
すっかり忘れてた……」
やっと兄さんが気付いてくれて、紐を解いてくれたぜ!
「兄さんヒデーぜ!
幾ら6000年も生きてるったって寂しいと死んじまうんだぜ!
本当にヒデーっすよ。
こんなに剣扱いのヒデー相棒は久し振りだー!
こう見えても、このデルフ様は……
昔の相棒は単騎で敵軍の中に……
俺っちが敵の魔法を吸収してやって……
ソイツが、命尽きたのはルーンのせいで……
最初の娘っ子はなんとエルフだった……
だから兄さんも、もっと剣の相棒を大切に……
兄さん、聞いていますかい?」
一生懸命話しているのに、兄さんは何処か心此処に有らずって感じだ。
「ん?
ちゃんと聞いてるよ」
「……そうですかい?
おでれーた!
ああ、おでれーた!
おでれーた!
ビバおっぱい!
兄さん、本当にちゃんと聞いてますかい?」
「ん?
ちゃんと聞いてるよ」
「テキトー言ったのに、同じ言葉が返ってキター!
嘘だー適当だーもう知らねーっす!」
「いや聞いていたよ。
てか、デルフやばい情報が有ったよ」
「何ですかい?」
「初代ガンダールブはエルフだった!
しかも女性だ。
彼女はルーンの影響で命が削られた。
そしてデルフは魔法を吸収出来る……
どんだけヤバいか分かる?」
信じてくれないんすか?
これでも必死で思い出してるんすよ!
「兄さん、嘘じゃないっすよ!」
「デルフ……
これは、2人だけの秘密だよ。
これが本当なら、ブリミル教に知られたら、デルフ溶かされるよ!
だってエルフを倒して聖地奪還とか言ってるのに、根本的な部分で問題になるから……」
「いけ好かねえフォルサテの野郎の国ですかい?
分かりやした!
もう言わねーっす」
「明日は2人で馬に乗ってハーナウ領に帰るよ!」
「兄さん、竜籠の方が早いっすよ?」
「……良いんだ。
僕は高いところが苦手なんだよ」
「おでれーた!
兄さんにも苦手が有るんすね」
女性同伴なら我慢出来るが、インテリジェンスソードだけなら無理だから……
陸路で帰るのが決定した瞬間だった!