ヒロイン(予定)の彼女達の心情を書いてみました。
女心は難しいですね。
挿話1
2人のヒロイン候補の独白
SIDEキュルケ
初めて彼に会った時はどう対応して良いのか分からずに、小さな声で俯いてしまったわ。
私の周りには、異性の同い年の友達なんて居なかったから……
遊んでくれるのは、年上の使用人達か下級貴族の女性ばかり。
今思えば分かるわね。
当時の同い年の子供など、幾ら言い含めても上位者たる私のご機嫌伺いや安全など考えもしないでしょう。
何か有ったら大変だ。
だから思慮分別の付くまで成長した、格下の相手としか接してなかった。
そんな時にツアイツに出逢ったの。
後でお母様に聞いたら、直接合わせる前に他の貴族の子供達もそうとう調べたらしいわ。
唯一合格したのがツアイツだけだった。
確かに初めて会った時からリードされっぱなしだったけど、さり気なく何時も気遣われていたわ……
毎日が新鮮で、あんなに笑ったのも初めてだった。
彼の話や仕草は全てびっくり箱で、何時もその行動に驚かされたわ。
寸劇では斬新さや内容にも感動したり驚かされたり。
知らない内に2人で色々な貴族の所に呼ばれ劇をしたわ。
劇の後でパーティーは主賓扱いだったけど、挨拶に来る貴族の子弟達と話しても全然楽しくないの。
普通主演男優は主演女優をエスコートする物なのに、ツアイツったら大人の貴族達に混ざり普通に会話をしていたわ。
そこで知らされた私とツアイツとの差。
何度目かの公演で呼ばれたハーナウ家のメイド達が、彼に向ける忠誠心の凄さ。
どれも普通じゃない事を思い知らされた。
彼と私との差ってなんなのかしら?
彼の見る世界を私が見る事が出来るのか……
暫く我が家に滞在していたけど、その間もお父様とお母様の難しい話にも普通に参加してるし、執筆している新しいお話も途中で読ませて貰ったけど凄く面白いの……
続きがとっても気になるわ。
そして聞いてしまったの。
お父様とツアイツとの会話を……
「ツアイツ、ウチのキュルケとは上手くいっているようだね」
「ええ、キュルケ嬢は良い子ですよ。
頭の回転も機転も良いですし」
「そう言う話じゃなくて、男と女としてどうかと聞いているんだよ」
「まだ子供に何を言ってるんですか?
そんな事考えられないですよ」
「ツアイツ……
私は君を普通の子供だなんて思ってないよ。
君も分かっているだろう?
自分は普通とは違うと」
「買いかぶり過ぎです。
僕はまだまだ子供です。
それに結婚相手は、自分で決めるつもりでいますから」
「もうそこで普通ではないだろう。
私の娘を要らないなんて普通言えないぞ」
「彼女は将来素晴らしい女性になるでしょう。
僕ではとても釣り合わないですよ」
「大人を煙に巻くか……
まぁ良い、しかし君の父上は何とかしろよ。
我が娘を見る目が怪しいかったぞ」
「すみません。自重させます」
ツアイツのお父様の見るあの怪しい目が、雄が雌を見る目なのね……
ツアイツは、お母様が私を見る目と似ている。
保護者の目……
慈しむ目……
でもけして対等ではない、一線を引かれた関係。
私はツアイツからは大切に思われているけど、1人の女性としては見られてないのね。
少しショックだけど、ツアイツのお父様の生々しい目よりは全然マシだわ。
将来性は有るって言ってくれてるし、頑張って自分を磨きましょう。
この胸の奥にくすぶる気持ちを貴男に向けるわ。
まだ燃え盛らない私の準備期間の気持ち……
そうね。
まだ微熱だけど、もう直ぐ貴男を取り巻く業火になるかも知れないわよ。
覚悟なさいねツアイツ。
SIDEルイズ
初めてツアイツの存在を知ったのは……
お父様があの憎っくきツェルプストーと和解する準備をしてると、エレオノールお姉様が話していたから。
ゲルマニアは野蛮な国で成り上がりだと、何時も聞いていたから私もそう思っていた。
そんな事より私には大きな悩みと問題が有ったの。
貴族なら皆が使える魔法が、私が唱えると全て爆発してしまう……
もう何人もの家庭教師に匙を投げられた。
ヴァリエール家の落ちこぼれ……
みんな表面上は心配や同情をしてくれるけど、本心はそう思ってるはずよ。
そんな中で何か1つでも、何時もチビルイズと苛めるエレオノールお姉様より秀でた物が欲しかったの。
暫くしてお母様とエレオノールお姉様が、部屋に篭もり何かを内緒でしているの。
こっそり見たら夢に見たら魘される様な必死な形相で、何か体操の様な事をしていたわ。
しかも毎日よ。
これは何か有ると思ったけど、そんな顔をしているお母様達には直接聞ける訳ないもの……
ある日、両親が言い争ってるのを聞いてしまったの。
何でもゲルマニアの同志から女性らしくなる体型の写本を入手したお父様が、お母様とエレオノールお姉様に実践させたけど効果が無いって、お父様がお仕置きされていたわ。
暫くして折檻したお父様を治療する為に、お母様がお父様を引きずって出て行った隙を見て写本?
をこっそり持ち出したの。
しかしまだ字が読めなかったので、何時も励ましてくれたメイドに読んで貰ったんだけど……
彼女が内容を確認していく過程で興奮して他のメイドも呼び集め、知らない内に10人位集まってその体操や食事療法を実践してみる事になったの。
だけど他の皆には内緒で……
だってあんなに必死だったお母様やエレオノールお姉様に知られたら、叱られると思ったし何か見返してやるまでは教えたくなかったの。
最初は効果はなくて諦めかけてたけど、1ヶ月後から少しづつ実感出来る様になるとどんどんのめり込んでいったわ。
そして同じプログラムを実践しているメイド達とは、奇妙な連帯感が出来たの。
苦労を共にする事で、彼女達使用人との間に有った壁が無くなったと言うか。
兎に角彼女達を名前で呼ぶようになり、彼女達も私に対して口調や態度は敬うけれども、その中に親しみを感じる様になったの。
そして3ヶ月が過ぎる頃には、お母様とエレオノールお姉様が手に入れる事が出来なかった
「ないすばでぃなルイズ」
になれたのよ。
この達成感と初めて味わう優越感はサイコー!
そしてこの写本の作者に最大の愛と感謝を……
魔法は相変わらず爆発してしまうけど、気持ちの通じ合う仲間と女性らしさを手に入れる事が出来たわ。
周りの態度も私を見る目が直ぐに胸元に来るのは仕方がないと思うけど、レディとして扱う様になったわ。
魔法が失敗でもこの
「ないすばでぃ」
には男は適わないって事ね。
それにエレオノールお姉様と一緒にお風呂に入った時の優越感ったら……
ねぇ。
お母様は……
この胸をもぎられそうになったわ。
アレハホンキノメダッタワ。
最近はちぃ姉様と2人で、美人巨乳姉妹とパーティーでは人気なの。
そして遂にツアイツが、我が家に来る事になったわ。
あれから何冊かの彼の執筆の本を読んだり劇も見に行ったして、お父様とのお話の中で出てくる彼の武勇伝は楽しみだったわ。
彼に直接会えたら何を話そうかしら……
先ずはお礼よね。
素晴らしい仲間と体型と自信を付けさせて貰った事に。