第126話
ハーナウ家の使用人達は大忙しだ!
仮にも一国の皇太子が、非公式とは言え急に訪問しているのだから……
そして歓迎の宴を催すともなれば、総出で掛かりっきりです。
バタバタと支度をする使用人達を申し訳なさそうに見送る……
トリステインのアカデミー評議会議長ゴンドラン……
原作でも元素の兄弟を雇いサイトを暗殺しようとした奴だ。
やはり若い頃から、悪どい事をしてたのか?
エレオノール様をこんな奴の近くに置いておいて平気か?
心配だな。
しかもこの世界では、レコンキスタから金を貰っている。
何故分かったのか?
それは、買収リストをシェフィールドさんが貰ってきたから……
証拠も一緒に。
しかし、このリスト……
リッシュモンやゴンドランなど、トリストイン王国の要職に居る連中の多い事。
あっチェレンヌも居た。
レコンキスタが台頭すれば、何れ国が滅ぶのを理解出来ないのかな彼らは?
これはヴァリエール公爵辺りが国政に参加しないと、本気でヤバいかも……
あの夫の喪に服すだけの気力の無いマリアンヌ様と、色に走る暴走特急アンリエッタ姫だと、ロマリア辺りにコロッと騙されかねないぞ。
アンリエッタ姫をウェールズ皇太子に押し付けてアルビオンに嫁がせたらトリステインの安定に力を入れないと駄目かな?
これは、ヴァリエール公爵とド・モンモランシ伯爵と相談する必要が有るね。
先に、このリストと証拠は渡しておこう。
奥様の実家とその国が、どうにかなっちゃったら嫌だからな……
等と思考に耽っていたら、ドアを叩く音で現実に引き戻された。
「ツアイツ様……
ティファニア様とシェフィールド様のお召し替えが終わりました。
お二方がお待ちしております」
ルーツィアが、呼びに来てくれた。
「有難う。今行くよ」
トリステインの行く末は、義父さん達に任せれば良いや。
必要な資料は渡すから、後はお願いしますね。
ルーツィアに伴われて、ウェイティングルームへ向かう。
ドアの外にエーファが控えていて直ぐに部屋の中へ通された。
「失礼するよ。
着替えを終えたと聞いたから……」
其処には、純白をベースに金糸で刺繍を施したプリンセスバージョンのドレスを着たテファ。
漆黒をベースに紅の糸で刺繍とレースをふんだんに使い、ボディラインを強調したタイトなドレスを着こなすシェフィールドさんが居た。
装飾品はテファはダイヤモンド、シェフィールドさんはルビーを基本としている。
「2人とも見違えたよ!
元が美人だけど更に美しい貴婦人姿だね」
テファは真っ赤になって俯いてしまったが、シェフィールドさんは妖艶に微笑んだ。
一瞬、クラッときた……
着替えを手伝ったソフィアとシエスタも、呆然と見詰めている……
流石は王妃として自己鍛錬してるだけの事は有る。
そこら辺の貴婦人では、束になっても太刀打ち出来ないだろう。
ジョゼフ王も彼女はヤンデレさんだけど、お買い得だよね!
今回の宴に出席する前に、最初にテファに言っておく事が有った。
「テファ、落ち着いて聞いて欲しい。
今日のお客様はウェールズ皇太子だよ。
色々含む物も有ると思うけど、我慢して欲しいんだ。
彼はテファの事を知らないから……」
彼女はあっさりと
「旦那様が、おもてなしする方なら私は大丈夫ですよ」
そう可憐に笑ってくれた!
その後は、2人を誉め捲った……
「ツアイツ様、宴の準備が整いました」
ナディーネが呼びに来てくれたので、先に会場入りをする。
本日の主役を待たせる訳にはいかないから……
宴の最初は、貴族的礼節に則った堅苦しい挨拶だ。
しかし、ウェールズ皇太子御一行は驚いただろう。
テファとシェフィールドさんを紹介した時も凄かったが……
ゴスロリファッションをキメた母上の時が一番驚いていた!
「母上?
失礼ながら後妻ですか?
えっ実母?
はははっ……
ハーナウ領は人外魔境ですね。
女神様が三人も居るとは……
是非、我が国に招待させて頂きたい」
SIDEウェールズ
宴の間の休憩として、宛がわれた部屋で寛ぐ。
巨乳派教祖ツアイツ殿か……
気持ちの良い若者だった。
私の誠意を受け止めて、信念を曲げて迄……
いや、謀略で曲げずにか。
レコンキスタに引導を渡すとは、中々の策士だ。
しかも王党派の士気を高める為なら、戦時中の我が国に来ても構わないとまで言ってくれた。
まだ僕よりも若いのに、なんて胆力だ!
これが、オッパイ最大教派を率いる漢と言う訳だな。
なる程、勉強になる。
彼が最大限協力してくれれば、我らの勝利は確実。
後は……
大変気になる事が有る。
ツアイツ殿はアンリエッタ姫と交友が有る。
彼女からの手紙でも分かる依存度だ!
その……
ツアイツ殿は、アンリエッタ姫から僕達の事を頼まれている気がしてならないんだ。
有る事無い事、吹き込まれて勘違いをしていたら一大事だよ。
レコンキスタを倒せたら……
アルビオン貴族の取り込み防止、兵の激励、私の上級会員昇格と恩は計り知れない。
その彼に仲を取り持たれたら、私はアンリエッタ姫を拒絶出来るのか?
無理だ……
でも、彼女の雰囲気は危険な香りがする。
覚醒した漢の本能が、アレは地雷だニゲロと言っている。
しかし、ツアイツ殿の顔を潰す事など出来ないのだ。
そんな負のスパイラル思考を止めてくれたのは、1人のメイドだった。
「ウェールズ様、宴の準備が整いました。
皆様、会場でお待ちしております」
「有難う。
では、会場に行こうk」
思わず、案内の彼女を見詰めてしまう。
なっナディーネたんじゃないか!
「ナディーネたん……か?」
「はい。
私はナディーネですが……
何故、私などの名前を?」
何てこったい!
テファたんだけでなく、メイドシリーズの彼女に会えるなんて……
「嗚呼……
ツアイツ殿に知り合えてなんて幸せなんだ。
レコンキスタ……
今なら大いなる慈悲の心で、この言葉を贈る。
有難う、そしてサヨウナラ!」
「あっあの?
何か不手際でも……」
しまった!
ナディーネたんが怯えているではないか。
「いや、何でもないんだ。
さぁ会場まで案内して欲しい」
「…………こちらへ」
ここは、パラダイスか!
この後、テファたんに会ってしまったら……
萌え!
そう、萌え死んでしまうかも知れない。
ウェールズの頭の中では、既にレコンキスタは亡き者となり、ツアイツのフィギュアシリーズのモデル達の事しか考えてなかった……
素晴らしきかな、オッパイ屋敷なり!