第128話
男の浪漫本・ファンクラブ
会報休載のお知らせ!
作者急病の為、今回号より無期限の休載となります。
平素より、会報をご愛読有難う御座います。
作者である、ツアイツ・フォン・ハーナウ氏が、レコンキスタを名乗る傭兵団に襲撃されました。
賊の主犯たる、白炎のメンヌヴィルは撃退したものの、傭兵12人は未だ逃亡中で有ります。
ツアイツ氏は重体で有り現在、帝政ゲルマニア・ハーナウ領の実家にて治療を行っておりますが、予断を許さぬ状況で有ります。
誠に遺憾では有りますが、ツアイツ氏の回復まで会報は無期限休載とさせて頂きます。
尚、未確認ですがレコンキスタはツアイツ氏の暗殺成功に一万エキューを支払うと言う、情報も有ります。
男の浪漫本ファンクラブとしても、レコンキスタ首魁オリバー・クロムウェル氏に対して抗議の書簡を送っております。
この襲撃事件に関連する、諸兄らの情報をお待ちしております。
追伸……
ロマリア連合皇国の教皇ヴィットーリオ様より、男の浪漫本シリーズ・実物大衣装の大量発注が有り、敬虔なブリミル教徒として優先生産を余儀無くされた為、皆様のオーダー品に対して納期の遅れが生じています。
ご理解・ご協力をお願い致します。
尚、教皇ヴィットーリオ様は「男の娘」なる美少年達201人に対して、衣装をオーダーしております。
ブリミル教徒の我らとしましても、寄付と言う形で納品を望まれており、ご希望に応える所存で有ります。
この、最新号の男の浪漫本ファンクラブ会報により、関係各所に波紋が広がっていった!
特にツアイツに交流の有る、二人の王女は……
ガリア王国プチトロア。
イザベラ執務室。
エルザを伴ったカステルモールは、イザベラ姫に面会を求めた。
エルザは吸血鬼。
日の光に弱い為、面会は日が落ちた夕刻以降だ……
カステルモールは、イザベラ姫に会う前に楽しみにしていた会報を読んでいた。
「なっ何だと!
先に帰したワルド殿は、何をしていたんだ」
この情報を知り、直ぐにでもハーナウ領に向かいたいが……
先ずはイザベラ姫に面会し、報告しなければならない事が有った。
「イザベラ様……
お暇を頂きましたが、目的を果たした為にご報告とお願いに参りました!」
イザベラ姫は両目を真っ赤にしている……
「カステルモール団長か……
先ずは報告を聞こうか」
心此処に在らず……
そんな表情だ。
「はっ!
我が伴侶を見つけ出したので、ご報告に上がりました。
彼女は、エルザ。
さぁエルザ、ご挨拶しなさい」
カステルモールの隣に控えていたエルザが、ちょこんとお辞儀をする。
「エルザだよ。
イザベラ姫様、宜しくお願いします。
カステルモールお兄ちゃんとは夫婦になったんだ!」
年相応?の可愛らしい挨拶をするエルザ……
イザベラ姫は溜め息を付きながら
「ついに部下から、犯罪者を出してしまったか……
お前、ツアイツにどう報告するんだい?」
「その件ですが……
男の浪漫本ファンクラブの会報をお読みになりましたか?」
「ああ……読んだよ」
「ならば……」
イザベラ姫は、両手を膝の上で握り締め何かに耐える様にしている。
「ツアイツが心配だよ……
アイツは、初めて出来た、私の大切な友達なんだ。
アイツだけが、無能王の娘、魔法の苦手な無能姫ってフィルターを通さずに、私を対等に見てくれたんだ。
アイツのお陰で、今の私が有るんだよ。
出来れば直ぐにでも会いに行きたい……
容態を確認したいんだよ!
……でも、私の立場がそれを許さない」
握り締めた拳に、彼女の涙が落ちる……
「イザベラ様……」
「カステルモール……
この幼女愛好家の性犯罪者め!
暫く謹慎を申し付ける。
原因で有るツアイツの下に向かい、共に反省してろ」
「はっ!
不肖カステルモール、ツアイツ殿の下へ向かい共に反省をするつもりで有ります」
イザベラ様が、何枚かの書類を投げてよこした!
「私の命令書だよ。
サインはしてある……
それを持って財務と兵站の担当者に必要な物を請求しな。
それとイザベラ隊を全員付けてやる。
あいつ等は、ツアイツに誑かされて私の着替えを覗きやがった!
みんな纏めて謹慎だ。
何処に行こうが私は知らないよ」
手に取った書類を見れば、イザベラ姫のサイン入りの命令書だ。
項目が無記入だが、必要な物を書けば直ぐにでも支給される様になっている。
「イザベラ様……」
「流石に軍用船は貸せないよ。
金を貰って民間機をチャーターしな」
此処まで配慮してくれるなんて……
イザベラ姫に深く頭を下げる。
「もう行きな……
カステルモール、覚えときな。
私はレコンキスタが嫌いだよ、分かるな?」
そう言って、執務室から出ていかれた。
あの我が儘で意地悪で、その癖ガリアと言う国を思う気持ちは、誰にも負けない意地っ張りな姫が……
こんなに小さく見えるなんて。
ツアイツ殿、知っていますか?
貴方をこんなに心配している女性が、此処に居るのですよ……
「カステルモールお兄ちゃん……」
エルザがギュッと手を握り、心配そうに見上げている。
「ああ……
大丈夫だよ、では行こうかツアイツ殿の下へ」
レコンキスタ首魁、オリバー・クロムウェルか……
殺す、貴様は必ず殺すぞ!
先ずはツアイツ殿の容態を確認し、イザベラ姫に報告をするが……
その後で、殺してやる!
気がつけば、イザベラ隊30人が周りを囲んでいた。
「「「カステルモール団長!
お供しますぜ」」」
彼らは皆、重装備。
正に戦争に行く装備だ!
「先ずは、ツアイツ殿の容態の確認だ。
その後は……
俺は、感情のままに行動するぞ!」
「「「我らも同じ気持ちですぜ!」」」
ガリアの精鋭達がハーナウ領に向かった。
SIDEイザベラ
あの後、自室に向かいベッドに潜り込む。
知らない感情だよ。
涙が止まらないなんて……
こんな絶望感と喪失感を味わうなんて……
ツアイツ、また迷惑を掛けますがって。
こんな迷惑なんて、心が壊れそうだよ。
どう責任を取ってくれるんだよ?
もう、アンタの事だけで思考がパンクしそうだ!
この私に、こんな感情を抱かせるなんて……
お願いだから無事でいておくれよ。
レコンキスタ……
直接の介入は、お父様に止められているけど……
もしツアイツに何か有れば許さない。
アルビオン大陸を壊してでも、お前に責任を取らせてやる!
私からアイツを奪おうとするのなら、覚悟するがいい。