今日から「幸せワルド計画」が始まります。
この挿話の遍在達及び遍在魔法には独自解釈が有ります。
そんな魔法じゃねー!
と言われても、こんな軽く虚無った紳士のパワーだと思って下さい。
それとTurugiさんから遍在反乱のアイデアを貰いましたから、少しだけ組み込んでます(笑)
幸せワルド計画挿話16・第一部
「幸せワルド計画」
この壮大な計画を実行するのは、たった三人の……
いや1人は遍在だから、正確には2人+αだ!
難問だよ、これは……
あの後、仮病で引き篭もりなツアイツを残して旅立っていった。
何通りものシミュレーションをこなした。
多分大丈夫だと思いたい……
ワルドの相棒のグリフォンと、レンタルグリフォンの二匹にてガリアの孤島、セント・マルガリタ修道院に居るミス・ジョゼットに会いに……
騙くらかしてワルドとくっ付ける為だけに。
「ねぇワルド!
もう1人のワルドを何て呼べば良いんだい?」
「「ワルド・ダッシュで頼む!」」
「……何でユニゾン?」
本体に迷惑を掛けられ続けても遍在は本体に忠実だった。
「しかし、ツアイツ殿が大変な時に出掛けてよかったのかね?」
「「大丈夫だ!
直ぐに解決して戻ろう」」
アンタ(本体)が不安だから言っているんだよ。
ロングビルは既に、このミッションを引き受けた事を後悔していた……
大体、私だってツアイツ様に手を出して貰ってないし……
テファの後にと我慢してるんだよ。
何でマダオが先に恋愛成就するんだよ。
何だか、ムカムカしてきたよ……
「ツアイツ様のバッキャロー!
何で適齢期の美女に手を出さないんだよー!
ワルドのアホタレー!
ロリコンのペドヤロー!」
レンタルグリフォンの上で暴れ出したロングビルを宥め賺して、何とか飛行を続けた……
幸先が悪い一団だった。
ゲルマニアからセント・マルガリタ修道院までは、グリフォンに乗っても2〜3日は掛かる。
途中で、中規模な街を見繕い宿屋に泊まりながら漸く目前にセント・マルガリタ修道院が見えた時には感動したものだ!
「んじゃ先ずは調査から開始だね。
アンタらは見つかると作戦自体が失敗するから……
私だけで行くよ。
大人しくしてなよ」
そう言って、慣れない手綱捌きでグリフォンを操って島に向かった。
SIDEロングビル
マシな遍在とマダオを置いて偵察にでる。
先ずは情報だ!
この作戦の成功率は、情報とマダオの扱い方が鍵だ。
面倒臭くなったら、遍在を替え玉にと思ったが、それはツアイツ殿に止められている。
レンタルグリフォンを何とか操って島に上陸。
そのまま修道院まで気配を消して接近。
ガリア貴族の問題有る子らを集めているにしては……
警備なんて無いねぇ。
確かマジックアイテムでフェイスチェンジしてるけど、名前はジョゼットのままなんだっけ……
何たる中途半端!
蒼い髪を銀髪に変えて……
誰か出てきたね。
「ジョゼット、水くみを頼みます」
桶を持った少女が出てきた。
銀髪に名前がジョゼット……
彼女に間違いないかね?
念の為、距離を置いて尾行する。
全然、気付かないのか?
普通の小娘だねぇ……
あっ?
水の入った桶ごと転んだよ……
ドジっ子ってヤツかな?
ツアイツ様の男の浪漫本で有ったね。
確か、マルチ……か。
あの子の攻略は近くで見守り支えてやる、か。
マダオには難易度が高いかな?
あれ?
桶を蹴って文句を言ってるよ……
桶を指差して。
これは何てタイプだい?
ツンデレ?
いや違うね……
一旦帰って遍在と相談しよう。
その前に、修道院の間取りや中に居る連中も調べとくか……
全く世話が焼けるねぇ。
再度ジョゼットを見れば、慎重に水の入った桶を運んでいた。
修道院には5人のシスターと22人の子供達が居た。
シスター2人はメイジだね。
しかも、所作に鍛えていた感じがするよ。
しかし、使い手かと言われればそうでは無いね。
まぁこんな辺鄙な場所に居る位だから。
でも彼女らが監視役だね。
再度、夜に調査に来よう。
そっと修道院を離れた……
SIDEワルドズ
焚き火をして、昼食の準備をする。
風のスクエアたる我らの着火方法は……
「ライトニングクラウド!」
紫電纏いし無駄に高威力な魔法を枯れ木にぶち込む。
ヨシ!
火がついたぞ……
手早くダッシュが、細かい枝を足し火を強めていく。
何故か手慣れている。
途中で仕入れた干し肉を炙り、パンをかざして温める……
既に空腹を覚え始めた。
「手慣れてないか、ダッシュよ」
「アルビオンに潜伏中の家事は全て私がやった。
ミス・ロングビルは食べるだけだ」
「あの女、私には色々言うのに自分は家事が出来ないのかよ。
嫁に行くつもりはないのかね?」
溜め息をつく……
適齢期ギリギリで花嫁修行なしか。
私の後はあの女だな。
焚き火を囲み座りながら、ヤレヤレだぜ!
と言っておく。
「ただいま!
良い匂いだね、私は牛肉が好きだよ」
「駄目だ、この亭主関白振りは……」
ダッシュと共に掌を上に向けて首を左右に振る。
「何故私を可哀想な娘を見る目で見るんだよ?
それに何だい、そのポーズはさ?」
ダッシュが、沸かしたお湯で紅茶をいれ始めた。
辺りに紅茶の芳醇な香りが漂う……
「ダッシュは良い嫁さんになるよねぇ。
本体はマダオなのに」
ダッシュのいれた紅茶のカップを受け取りながら、溜め息をつかれたぞ。
「ダッシュよ……
お前が甘やかしたせいで、この女が亭主関白になったのだぞ。
少しは自重しろ」
ダッシュから紅茶を受け取り、この主婦みたいな遍在を窘める。
「まぁ良いや……
それで、ジョゼットは確認出来たよ。
ツアイツ様の言う通り、銀髪だったね。
フェイスチェンジか……
でも少し変な娘だよ。
桶に説教してたし」
「「桶に?なんでさ?」」
見事にハモってしまった。
「いや、自分で転んで水を零したのを桶のせいにして叱ってたのかな?」
「「…………?」」
「ツアイツ様の男の浪漫本によれば、あのタイプはなんだろうね?
ツンデレとも違う気がしてるんだよ」
「「それは想定外だ!
ツアイツ殿、どうしたら良いのですか?」」
あれだけシミュレーションしたのがだ、ジョゼットはどのタイプにも当てはまらない。
既に作戦は破綻傾向に有った……