幸せワルド計画挿話17・第二部
焚き火を囲み、これからの事を相談する。
すっかり世話役になっているダッシュ……
食器を片付け、食後のお茶を用意しお茶請けまで並べている。
「「ダッシュ、コイツを甘やかすんじゃないよ!」」
本体ワルドとロングビルが、互いを指差しながらわめいた。
「お茶のお代わり有るが……」
無言でカップを差し出す2人。
因みにダッシュはお金持ちで有る。
アルビオン貴族工作時に、ロングビルが盗んだ金の三割を貰っているから。
流石の彼女もただ働きはさせられなかった。
本来ツアイツに半分渡すつもりが、要らないと言われたので独り占めでも良かったのだが……
独身適齢期ギリギリの彼女には持参金がついてます!
トリステイン郊外に庭付きの屋敷が買えるくらい。
「それで、今夜も忍び込むのか?
いつ、私はミス・ジョゼットに会えるのだ」
落ち着きなく、お茶請けの乾燥果実を食べるワルド……
「落ち着きな。
もう少し、彼女の性格なりを調べないと……
実際、桶と会話する不思議ちゃんなど対応が難しくないかい?」
黙り込むワルドズ……
「今度は私が行こう」
ダッシュが提案する。
「まぁアンタは、散々アルビオン貴族の屋敷に潜入したから慣れてるか……
んじゃ頼もうかね」
本体より信頼している、アルビオン以来の相棒に頼むロングビル。
本体は無言だ……
「では、暫く休憩しようかね」
各々体を休ませる為に楽な体勢を取る。
「全く、妙齢の美女が野郎2人と野宿なのにさ。
貞操の心配をしなくて良いってのも納得出来ないね……」
ブツブツ言っているロングビルを訝しい目で見るワルドズ。
「「育ち過ぎだよ。
乳も年齢も!」」
良く出来たダッシュも性癖は本体基準だった。
夕暮れ時に、ダッシュは起き出した。
音もなくグリフォンを操り修道院に向かう。
狙いは夕食後の彼女の行動だ。
腹も満ちて寝るまでの自由時間こそ、最も人間の本性が出ると睨んだ。
昼間、ロングビルが修道院の間取りを調査していた為、狙いを付けた場所を目指す。
運良く?修道院の子供達は、夕食を終えて沐浴の時間だった。
「ふっ……計算通り」
ニヒルな表情をしているが、やってる事は覗きだ!
彼の視界では、ショタにはモザイクがかかり、ロリは輝いていた!
何故、修道院に男の子が居るのかは分からないが、子供だから小さいうちなら良いのかとスルーした。
「中々の眺めだな……
あの銀髪のロングの娘がジョゼットか?
なる程、本体の好みだが、アレはフェイスチェンジの力によるもの。
つまり紛い物で仮初めの姿!
故に私が見ても問題はないだろう。
それに見事にストンな体型だな。
フムフム……
お尻に黒子が有るのか」
無駄に性能の高い変態を本体を持つ遍在も、やはり無駄に変態だった。
「しかし、ボディチェックは済んだが問題は性格だな……
おっ!
彼方のレディも中々の逸材だぞ」
ダッシュの覗きは続く……
「いかん、いかん。
ロリボディを堪能してしまったか……
では寝室に向かうか」
風を読み、気配を風と同化出来る彼にとって、女子供しかいない修道院内を彷徨く事は無人の野を行くが如し。
さくさくと、子供らの寝室へ向かう。
「ふっふっふ……
此方から美少女の匂いがするな。
ふむ、ここか」
ダッシュ、的確にターゲットを追い詰めていく。
ドア越しに中の様子を伺う。
どうやら四人部屋みたいだ。
「ねぇジョゼット。
最近あの格好良い人来ないね?」
「ジュリオ兄様の事?」
「そう。
竜に乗って颯爽と来る人!
格好良いよね」
「…………」
「どうしたの、変な顔してるよ?」
「私達の知っているジュリオ兄様は死んだわ。
兄様は……
教皇様を受け入れたの。
だから、もう」
「教皇様って?
ロマリアのヴットーリオ様の事?」
「そうよ。
あんなヒラヒラした服を着せるなんて……
もう兄様は居ないの。
姉様?」
「そっか……残念だね」
「良いの。
諦めたわ、どうせ私達は外の世界には出れないのだから……
それに変態なんて死んじまえ!」
そっとドアから離れて修道院を後にする。
どう言う事だ?
ミス・ジョゼットは、ジュリオが「男の娘」化した事を理解している……
何故だ?
ロマリアの魔の手が既に、この修道院に及んでいるのか?
そして、彼女はジュリオを「男の娘」にした教皇に隔意を持っている……
しかし、特殊な性癖に対して嫌悪感が有るのか。
これはカリスマな変態で有る我らには、荷が重いやもしれん。
どうする、本体?
どうしたら良いのですか、ツアイツ殿。
でも得られた情報は多い。
我ら3人で良い知恵が出なければ、遍在を増やして協議すれば良いか……
2人の待つアジトまで帰るとしよう。
この世界のジョゼットは、慕っていたジュリオを特殊な性癖に巻き込んだロマリアが嫌いだ!
しかも変態として、一括りに嫌っていた。
これは、変態と言う紳士の頂点に居る我らは……
不倶戴天の敵ではなかろうか。
ジュリオはジョゼットに男の娘の姿で会いに来たのだろうか?
謎は深まるばかり……
さほど時間も掛からずに、本体と合流する。
「お帰りダッシュ。
どうだったんだい?」
「ダッシュ、彼女の情報を掴んだか?」
矢継ぎ早に質問する2人に先程の件と、自分の推測を話す。
「…………………」
「ツアイツ様の情報では、ロマリアの介入には時間が掛かるって話だったけど?」
「彼女は教皇と確かに言った。
それに姉様とも」
「駄目じゃん!
頭の天辺からつま先まで変態なアンタらじゃ無理だよ」
「「失礼な女だな!
我らは変態ではない、ツアイツ殿に認められし紳士なのだ。
勘違いも甚だしいぞ」」
ユニゾンして、己の正当性を主張するが……
「じゃあ、どうするんだよ?
紳士さん達ならさ」
考え込むワルドズ……
「本体よ。
出せるだけ遍在を出せ!
知恵が無ければ、皆で考えれば良い。
3人で駄目なら5人。
5人で駄目なら10人だ」
「任せろ、ダッシュ!
ユビキダス・デル・ウインデ……
風は遍在する」
「いや、本体基準だから1人脳内会議と同じ……」
本体、ダッシュ……
そしてワルドA・B・Cが現れた!
「我らワルダー5人衆」
ポージングをキメた瞬間、後ろの地面が爆発し、5色の煙が舞い上がる!
「ツアイツ様、帰りたいです……」
ロングビル、涙目だ!