幸せワルド計画挿話20・第五部
まるで暴風の様な出来事だった……
突然の変態の襲撃。
信じて、裏切られた人がまた裏切った事。
そして、助けてくれた筈のボロボロの人……
この人は、トリステインの魔法衛士隊の隊長と言っていた。
何故、トリステインの貴族がこのガリアの孤島にいるのかしら?
あのロマリア密偵団の変態集団とも、因縁が有りそうだったわ。
そして秘密にして欲しいって……
国に捨てられた私が、国に配慮しないといけないの?
駄目だわ。
思考が纏まらない……
でも、この人は恩人だと思う。
あの変態集団もそう言っていたし……
あれ?
なんで、あの恥ずかしい格好の変態は、わざわざこの人が恩人だなんて言ったのかしら?
それに、あの連中と同じ臭いがするの。
実際に嗅いだ訳ではなくて、存在感が……
あの気色悪いポージングとか。
ジョゼットは思考に耽る余り、ワルドを放置プレー中だ!
「うぐっ……はぁはぁ」
ワルドの呻き声で我に返る。
いけない、またやっちゃった!
この考え込むと周りが見えなくなる癖は治さないと駄目ね。
取り敢えず、隊長さんを寝かせて顔の腫れを冷やせば良いのかな?
当然膝枕などせずに、ワルドのマントを畳んで枕に……
そして内側の刺繍を見てしまう。
「これは、私?
違うわ。
今もガリアで、のうのうと生きている姉さん?
では、この人は……」
肌身放さず着けているマントの内側には、振られたにも関わらずミス・タバサのウェディングドレスバージョンの刺繍入り。
上級会員の嗜みとして、常に身に着けている癖が災いした。
「やはりこの人も、私の秘密を知っているの?」
折角、現実に引き戻されても思考の海へと沈んでいった……
ワルド、放置プレー続行決定。
「はぁはぁ……イテテテテ……
あいつ等無理しやがって……」
ワルドは自力で覚醒した!
看病フラグは、たたなかった。
ワルドが、まだ朦朧として周りを確認出来ない内にマントをそっと返す。
「えーと、有難う御座います。
助かりました。
それで、貴方は?」
先ずは情報を集めよう。
SIDEワルド
何やら体中が、バキバキと痛い……
あいつ等、手加減を知らないのか?
僅かだが、気を失っていたらしい……
気が付けば、私を見下ろすミス・ジョゼットが居た。
「えーと、有難う御座います。
助かりました。
それで、貴方は?」
彼女は私の隣に座り、見下ろしたまま質問してくる。
銀色の髪が重力に負けて垂れ下がるのを左手で、かき上げながら……
「可憐だ……」
「はぁ?」
「いや、すまない迷惑をかけたね……イテテテテ」
起き上がろうとするが、全身の痛みに思わず呻いてしまう。
「大丈夫ですか?」
ミス・ジョゼットが手を貸してくれて、何とか起き上がり向かい合って座っている形になる。
「有難う。
いや恥ずかしい所をみられたね。
もう大丈夫だ」
にっこりと微笑むが、彼女は赤くなってくれない。
私には、ニコポ・ナデポのスキルは無いのか……
「あの……
隊長様は……」
「ワルドで良い。
私はジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。
トリステイン王国で、魔法衛士隊の隊長をしている」
「ワルド様ですか……
何故、その様な方がガリアの孤島に居るのですか?」
美少女にワルド様と呼ばれると……
ゾクゾクっとくるな。
しかし、どう言えば良いのだ?
この質問への回答はシミュレーションしてないぞ。
「ああ……
その、何だ……つまり」
「ワルド様は、私の素性をご存知なのですよね?
あのロマリアの変態集団とも……
因縁が有りそうでした。
何故なんですか?」
真剣な表現で、問い詰めてくる。
嗚呼……
美少女に詰問されるのに、快感を覚えるとは。
はっ!
私が、サードステージに進化したのか?
しかし、どう誤魔化したら良いのだ……
「……何故、教えてくれないの?」
ヤバい、ミス・ジョゼットが泣きそうだ!
「話は長くなるが良いかな?」
彼女は無言で頷く。
「ミス・ジョゼット。
私が君を、君の存在を知ったのは……
大恩有る年下の友人からだ。
彼はゲルマニアの貴族だが、有る事件を切欠にガリア王家と関わる事になった。
彼はそこで、ジョゼフ王に趣味(オッパイ・回春)の遊戯(性癖戦争)で競う事となり……
その関係で、イザベラ王女、タバサ……
ミス・シャルロットと懇意にされている」
突然の話に、ポカンしていたが、シャルロットの名前に激しく反応した!
「シャルロット……
私の姉さん、そして捨てられた私と違い、のうのうと生きている女」
その目に、暗い感情が見えた……
あの目は、絶望と怨念の入り混じった危険な目だ。
「辛い話になるが、聞いて欲しい。
君の父上は、ジョゼフ王に隔意を抱き(本当は、近親相姦&同性愛の相手として好意を抱き)粛正された。
君の母上は幽閉され、家は不名誉の烙印を押され……
君の姉である、ミス・シャルロットは偽名を名乗り北花壇騎士団として働かされている」
「私を捨てた人達は、没落したの?
私には、本当に帰る家はないんだ。
あはは……
捨てられた家の事なのに、悲しいなんてヘンね」
私は彼女を抱き締めた……
彼女は抵抗せずに泣いている。
柔らかいし、良い匂いがするし……
はふぅ、幸せだ!
「我が友人は、君の家の再興に尽力している。
そこで、君の存在を知ったらしい……
ロマリアは、ホ〇国家となり、始祖の子らの国々に男の娘思想を広め始めた。
君の身に危険が迫っているのもその為だ。
王家の血を引く君を抑えるには意味が有る」
余り、セクハラ紛いの包容はマイナスと思い、彼女を解放する。
「それで……
ワルド様は、私をどうしたいの?」
「勿論、妻に……
いや、ツマり保護と言うか、私と共にゲルマニアに来て欲しい。
そして友人と会って欲しいんだ。
彼なら、君を悪い様にはしない。
力になってくれる筈だ!
それと……
君に色々と教え込んだのは、ジュリオだね?」
ミス・ジョゼットは黙って頷き、そして考え込んでしまった……
済みません、ツアイツ殿。
私には、説得は無理です。
丸投げする様ですが、彼女の説得をお願いします。
ワルドは、ジョゼットの説得を諦め、全てをツアえもんに託す事にした。
の〇太の様に……