第131話
サウスゴータに集まって居る諸侯軍と平民の前で演説を終えた!
感触としては、悪くはなかった。
しかし、万単位の人々の前での演説とは疲れるものだ……
一息入れる為に、あてがわれた室内に戻どる。
応接室のソファーに座ると、バリーが熱い紅茶を用意してくれた。
「どうだったかなバリー?
私の演説は」
長年仕えてくれた侍従のバリーに問う。
自分としては、高得点なのだが……
「素晴らしい演説でしたぞ!
流石はウェールズ様。
あの言い回しなら、ファンクラブ会員はオッパイと言われずとも理解出来たでしょう。
逆にファンクラブでない平民達は、オッパイを知らなくともツアイツ殿は素晴らしい教義を広めていると思うでしょう」
流石はバリー!
良く理解してくれる。
流石に平民の前で、オッパイは不味いからな……
ボカシて話したのだが、ちゃんと伝わっているだろう。
「そうだね。
ツアイツ殿は、素晴らしき乳の探求者……
しかし平民にそれを説いても理解し辛い」
「これで、我が軍の士気は高まりましたぞ。
いつ反攻作戦を始めますかな?」
最近まで意気消沈していたバリー達も、攻撃が解禁になった為に生き生きとしている。
しかし、良い事ばかりでは無かった。
ロサイスとダータルネスを抑えられた。
それは、アルビオン大陸からハルケギニアへの足をレコンキスタが持っていると言う事だ。
端から見れば、王党派は連戦連敗……
既にサウスゴータまで攻め込まれている。
被害が軽微など関係無く、レコンキスタ有利と思われているだろう……
つまり、勝ち馬に乗りたい傭兵達が、続々とレコンキスタの元へと集結している。
当初は2万だったが、物見の報告では少なく見積もって4万弱だ。
約半月で倍になった。
我ら王党派の攻撃に向けられる戦力は
竜騎士団、風竜・火竜合わせて百騎。
近衛騎士団3百人
近衛歩兵隊4千人
諸侯軍1万5千人
それに戦列艦20隻。
これでも敵の半数だ!
しかし、航空戦力は此方が有利。
士気も高いし、平民の協力も有る。
しかし、近隣の村々に護衛の手を広げる為に、移動力の高い戦列艦を割かねばならず、常駐する歩兵も配置しなければならない。
数的にも、やや不利か?
「しかし……
それ以上に心配事が有ります。
先程の演説で、ウェールズ様は我らが教義を言われました。
ブリミル教のブの字も有りませんでしたな」
「……ブリミル教?
ああ、有ったな。
そんな教えが。
どうでも良いだろホ〇の教えなど!
と、言いたいのだが、すまん。
正直忘れた!」
素直に頭を下げる。
「ウェールズ様……
すっかりツアイツ殿に感化されましたな。
確かに、ブリミル教には手を焼いてますが……
今回の演説をブリミル教の関係者も聞いて居ましたな。
厄介事にならねば、良いですが……」
「全ては、レコンキスタを倒した後の話だ。
それに元とは言え、始祖の血を引く我らに弓を引いたのだよ、彼らブリミル教徒は。
交渉の余地など幾らでも有るさ!」
「ウェールズ様……
すっかり逞しくおなりになられて……」
バリーが、ハンカチで目頭を押さえている。
大袈裟だなぁ……
「私は、ツアイツ殿に覚悟を教わった。
覚悟を決めれば、道は幾らでも開けるのだ」
覚醒した漢ウェールズ皇太子は、ひと味もふた味も違っていた!
SIDEアンリエッタ
刻々と入ってくる情報には、アルビオン王党派の良くない情報ばかり……
ツアイツ様を傷付け、今もウェールズ様に刃を向け続けているレコンキスタ。
この私達の輝かしい未来を壊す不敬者は、全て私の手で何とかしなければ……
秋には、両手に花で演劇を観るのですわ。
私達のロマンスを妨害する事は、万死に値します。
時間は限られているのです!
「アンリエッタ姫、関係者に召集をかけました。
しかし、全員が集まるのには一週間程掛かるかと」
アニエス隊長が、報告にきましたわ。
「一週間ですか……
それは時間が掛かるのですわね。
でも、その時間で出来る事をしましょう!
アニエス隊長。
アルビオンに向かって下さい。
この親書をジェームズ一世陛下とウェールズ様へ、届けて下さい」
それは、あの変態から止められていた捏造ラブストーリーな手紙……
まだツアイツに監修して貰ってない、アンリエッタ姫の妄想逞しい逸品だ!
「ひっ姫さま?
これは、この手紙はまさか……
まだ早いです。
あの男も、タイミングが大切だと言っていたではありませんか!」
「そうですわ。
しかし、ツアイツ様は卑劣なレコンキスタの凶刃に倒れ療養中です……
なれば、その志を継いで、私が私の野望の為に進しかないのです。
アニエス隊長、お願いします」
ギュッと彼女の手を握り締め、目を見詰める……
5秒……10秒……
「分かりました。
銃士隊を何人かに分けて、アルビオン大陸に侵入させ王党派に届けます」
やはり、アニエス隊長は頼りになりますわ。
「有難う御座います。
アニエス隊長、お願いしますわ」
一礼して退出するアニエス隊長を見送りながら考える。
これで、当初の予定とは少し違いますが手紙を送る事が出来ましたわ。
次の手は、ツアイツ様の言われたトリステイン貴族の膿みを出す事。
それには迅速に腐敗貴族を取り押さえなければ……
残る私の手足は、ワルド隊長とグリフォン隊ね。
彼らをこれから集まる主要貴族達との会議の前に展開させて、その場で取り押さえる様にしなければ駄目だわ。
「誰か!
魔法衛士隊隊長ワルド子爵を呼んで下さい。
大切なお話が有ります」
次々と手を打つアンリエッタ姫……
大筋は間違ってなく、大した物なのだが。
連携せずに独断専行が不味かったかもしれない。
「これでウェールズ様のピンチを救い、ツアイツ様の敵討ちが出来ますわ!
上手くいけば、2人の殿方から感謝と求婚を……」
先程までの凛々しい姫君は何処にも居なかった。
ワルド隊長が部屋を訪れるまで、ソファーに座り顔を惚けさせながらイヤイヤを繰り返していた。
暴走特急アンリエッタ号の妄想は、ウェールズとツアイツがアンリエッタを巡り、決闘にまで及び引き分けて友情を育んだ後で、共にアンリエッタに襲い掛かる迄に及んでいた……
「2人同時なんて……
お待ちになって。
でもどちらか1人を選ぶなど、私には出来ませんわ。
嗚呼、この体が2つ有れば2人の気持ちに応えられるのに……」
彼女は非常に豊かな感性の持ち主だった。
しかし、全く有り得ない未来予想図だったが。