第139話
カステルモール殿達の来訪を受け、怪我を負った状態で会う事になった……
しかし、これが正解!
連絡を怠ったガリア勢は、本気で心配してくれたのは嬉しかった。
でも、仮病だったんだ。
テヘッ!
何て事は許されない状況だった。
何と言っても、ガリア王国の姫を泣かせてしまったのだから……
これは、彼らの希望通りに会いに行くしかないだろう。
カステルモール殿とエルザ殿は、父上と話が有ると言って
「サムエル愛の資料館」
に籠もってしまった。
まぁ父上はアレでも有能なので、上手く話をつけると思います。
そして、会報の再開に付録として付ける作品が仕上がった頃に、エーファが部屋に報告に来た。
遂にミス・ジョゼットが我が家に到着したのだ。
出来れば、今日は休んで貰い明日話をしようと思ったが……
どうしても、確認したい事が有ると面会を求めてきた。
呼びに来たエーファに案内されながら、客間に通される。
そこには、ミス・ジョゼットとロングビルさんが……
遅い夕飯を食べていました。
「あっ?
ツアイツ様、すみません。
休憩無しの強行軍だったので……」
慌てて、ナプキンで口を拭くロングビルさんに
「お構いなく。
ゆっくり食べて下さい。
食材に感謝して良く味わって下さいね。
エーファ、僕にも紅茶を」
口をパンパンにして、ローストビーフを食べていたミス・ジョゼットは……
胸を叩いているけど、何か喉に詰まらせてないか?
「ミス・ジョゼット?
水、水を飲んで、水を!」
慌てて彼女の手に、コップを持たせる。
「ングングング、はぁ……
すみません。
お肉の塊とか久し振りだったんです」
何だろう……
食いしん坊なのは、オルレアンの血筋か?
「気に入って貰って良かったよ。
慌てないで沢山食べてね」
「はい!」
元気よくモリモリ食べるその姿は、確かに愛らしい物だったが……
何故か彼女も、原作からは剥離した存在だと感じた。
「ツアイツ様、ワルドズはどうしましたか?
先に帰したんですけど?」
「ああ、例の件だよね。
報告を受けたし、対応も考えたから平気だよ。
それより、お疲れ様!
ロングビルさん」
「あっ有難う御座います。ツアイツ様」
何故か2人の間にほのぼのした空間が出来る。
「ロングビルさんの好きな人って、この方なの?」
まだ、ローストビーフと格闘しているミス・ジョゼットが聞いてくる。
口に物を入れた状態で話すのははしたないよ。
「レディが、口に物を入れた状態で話し掛けたら駄目だよ。
ミス・ジョゼット」
慌てて水で口の中の食べ物を流し込んでいる。
忙しい娘だな……
そして表情が、クルクル変わるし。
今度は真面目な顔だし?
「えっと、ツアイツ様は何故、私を助けてくれたのですか?」
まぁ当然の質問だ。
ちゃんと回答も考えている。
ロングビルさんを見ながら
「大筋は、ロングビルさんから聞いたよね?」
彼女は無言で頷く。
ナイフとフォークを構えたままで……
「えっと……
足りたかな?
デザート食べる?」
「はい!食べれます」
目が輝いている!
シエスタに、御馳走様と言って食器を下げさせる。
新しいカップに紅茶を煎れて貰い、デザートのエッグタルトを用意して貰う。
「では、改めて話を……」
視線が僕の手元のタルトをロックオンしてる?
彼女の分のタルトは、もう無い。
見れば口をモグモグしている……
無言で、タルトを彼女に渡す。
「わぁ!
良いんですか?」
「…………シエスタ。
悪いけど、タルトまだ余ってるかな?」
「まだ、3〜4個でしたら残ってますが」
ミス・ジョゼットを見る。
「まだ食べれm……
全部持ってきてくれる」
もう渡したタルトも完食している。
「食べ終わるまで待つから、ゆっくり食べてね」
そう言えば、ミス・タバサもハシバミ草をサラダボールごと、抱えて食べてたっけ……
女性の胃袋は驚異的だ。
「すみません。
お待たせしました」
ああ……
あのお腹パンパンの姿は、間違い無くミス・タバサの妹だね。
「平気かい?
話なら明日でも構わないけど?」
どう見てもオネムだ……
「色々聞きたい事が有ったんです。
騙されているのか?
利用されようとしてるのか?
何故、私を助けようと思ったのか?
でも、どうでも良くなっちゃいました!」
「えっと、何故かな?」
ミス・ジョゼットは徐(おもむろ)にリングを外した。
魔法の力で変えられていた姿が……
ミス・ジョゼット本来の姿に戻る。
「これが、本当の私です。
ツアイツ様は、私の姉の姿もご存知なんですよね?
似てますか?」
そこには、ミス・タバサとそっくりの美少女が居た。
髪の毛がショートでなくロングだが……
「ああ、髪型は違えど瓜二つだね。
でも何故、教えてくれたのかな?」
ミス・ジョゼットはニッコリ笑って
「ツアイツ様、優しいから……
とても私を騙す人には見えないし。
話に聞く貴族と全然違いますし。
きっと貴方なら、私を悪くはしない筈と信じたの。
これから宜しくお願いします」
そう言って可愛くお辞儀をする。
餌付けか?
知らない内に、餌付けが成功したのか?
「えっと、それは有難う。
取り敢えず聞いておくけど、君はどうしたいの?
アレ?
ジョゼットさん?」
隣に座っていたロングビルさんが彼女を覗き込む。
「寝てますね?
ツアイツ様、すっかり信用されて懐かれてませんか?」
いや、そんな目で睨まないで下さい。
「えっと……
子犬の様な娘でしたね?
人を呼びますから客室で寝かせましょうか」
「こりゃワルドの奴、振られたかねぇ?」
確かに姉妹揃って、色事には疎い感じだね。
「兎に角、彼女はこのままではロマリアに利用されるだけだったから。
ウチに来てくれただけで、良しとしましょう」
「全く、ツアイツ様は甘過ぎですよ?
でもテファが居るんですから、彼女に手を出さないで下さいね」
「まさか!
それより久し振りに軽く飲みませんか?
テファにも、彼女の事を教えてあげて下さい。
友達になって貰おうと……」
SIDEジョゼット
寝た振りをしたけど、上手くいったみたいね。
ツアイツ様といったかな。
悪い人じゃないわ。
それにとっても優しくて、ハンサムだし……
でも、ロングビルさんの良い人なのかな?
あの寂れた孤島で一生を終えるのかと絶望してたけど、私の魔法使いが現れた。
このシンデレラの様に、私を幸せにしてくれるのかしら?