第141話
こんにちは!
ツアイツです。
昼食後に、ツェルプストー辺境伯が到着しました。
「義息子よ!
不用心だぞ、怪我を負うとは。
君は今回の件の要なんだぞ」
会うなり、挨拶もそこそこに叱られました。
「すみません。
油断しているつもりは無かったのですが……」
取り敢えず、応接室に通してお茶を出す。
ソフィアが、紅茶を入れて皆に配るのを待つ。
メンバーは、父上とツェルプストー辺境伯と僕だけ……
これは、ゲルマニアの問題だから。
「義父上、お呼び出ししてすみません。
この有り様で動けないもので……」
左腕を上げてみせる。
「大体の話は、手紙で読んだが……
アレか?
トリステインの姫とは、オツムが足りないのか?」
頭に人差し指を当てて、クルクル廻すジェスチャーするが……
「はぁ、何とも……」
「息子に言われても、何ともならんな。
しかし、当初の計画通りにウェールズ皇太子に押し付けるのは無理かもしれん」
父上がフォローしてくれる。
「ウェールズ皇太子にジェームズ一世が、想定より大分出来が良いですね。
彼らは愛すべき変態です。
あの紳士達に、アンリエッタ姫1人で立ち向かっても無理でしょう……」
溜め息と共に言う。
「我らの助力を待たずに暴走したのだ。
これからは、我らの利益にも関わるからな。
まぁ残念だったな、アンリエッタ姫は……」
無言で頷き合う父上ズ。
既に、アンリエッタ姫を見限ったか。
「しかし、実情はアルビオン王国の王党派の損失は軽微ですし、民意の殆どを得ている。
レコンキスタに加勢するは、時勢を読めぬ愚か者よ」
「僕は、当初アルビオン王家を甘く見ていました。
彼らは我らゲルマニアの同盟国として申し分ないですね。
だから、出来るだけ力になりたいのです。
僕は、ガリアでイザベラ姫にお会いした後にアルビオン王国に行きます!」
イザベラ姫に誠意を見せて、ジョゼットの件も相談する。
時期的にガリアに着くのは、トリステインの売国奴が捕まった頃だろう。
失敗すれば、レコンキスタは勢いづく。
アンリエッタ姫が増援を送らなければ、ゲルマニアを頼るしかないが……
此方も閣下を説得した後に動員だから、時間が掛かる。
ならば、戦意高揚の為にも僕が顔を出す方が早い。
僕が前線に居れば、シェフィールドさんも当然居る。
カステルモール殿もイザベラ隊も力を貸してくれる。
ワルド殿もダッシュ殿もだ。
そして、ゲルマニア貴族たる僕がアルビオン王国に助力する事は、同盟国だから文句は出ない。
もし文句を言われたら……
後から来た、ゲルマニア正規軍に手柄でも何でも譲れば良いだけだ。
僕達は何もしていない。
だから文句を言われる筋合いは無い。
王族の紳士2人が僕の実績を知っていてくれれば、褒美などくれてやる。
「馬鹿者!
戦地に息子を送れるか!」
「そうだぞ。
義息子よ、危険過ぎる」
うん。反対された。
「危険は承知してます。
しかし、作戦は詰めの段階まで来ています。
サウスゴータは決戦の地。
流石に墜ちれば、王党派も負けるでしょう。
勝つには増援が欲しい。
しかし、トリステインはアンリエッタ姫の暴走により不確定だ。
ゲルマニアだって、義父上のこれからの交渉次第。
此方の成功は疑ってませんが、正直時間が掛かる。
最速で効果の有るのは、僕が乗り込む事により、付いて来てくれる面々……」
「ああ、あの女か……
確かに五千人程度の増援より確実か」
「それとガリアから、竜騎士団長とイザベラ隊なる名前はアレだが、どうみても精鋭中の精鋭が30人も来ている。
ワルド殿も遍在をトリステインに配置しているが、頼めば本体が同行してくれるだろう……
そう言う事だな?」
流石に僕の切り札の事もバレてら……
「そうです。
遊撃隊として、レコンキスタの横っ腹に食らいつく戦力としては申し分ないはずですよ。
何たって、トライアングル以上のメイジが34人も居るんですから」
「確かに、一撃離脱の破壊力としては申し分ないか……
しかし、何故ガリアに寄るのだ?」
「今回カステルモール殿がウチに来たのは……
例の仮病、今はちゃんと怪我してますが。
それを聞いたイザベラ様を泣かせてしまいまして……
それで一度顔を見せて欲しいと、彼等が頼みに来たのです。
まかさイザベラ様にまで心配して貰えるとは、嬉しいですよね」
ははは、と笑って頭を掻く……
義父上ズに溜め息をつかれたぞ?
あれ?
もしかして王族を泣かせたのマズかったかな?
「ツアイツよ、そろそろ治療の時間だ。
処置して、また戻ってこい。
てか、少し外せ」
「そうだな。
義息子よ、少しサムエル殿と話が有るから外してくれないか」
やっぱり、大国ガリアの姫様を泣かしたのは不味かったのか……
彼女に会ったら土下座するしかないかな?
「……はい、分かりました。
では失礼します」
父上ズに言われては仕方ないか。
一礼して、退出する。
残された父親ズ……
「おい?」
「ええ……
困りましたな、アンリエッタ姫には」
「違う。
困ったのは、お前の息子だ!
誰が、ガリアの姫を口説けって言ったんだ?
なんで態々、使いを寄越してまで会いに来いとか有り得んだろうが!」
「知らんわ、それにお前の義息子でもあるんだろ。
ああん?
どうするんだ?
アレで傷付きながら逢いに行って、これからレコンキスタを潰す為に戦場に行くとか言ったら……」
「「すがって止める様な姫じゃないぞ!絶対違う対応をしてくる」」
2人して、ソファーに深く座り込む。
「あの姫は、ツアイツ殿が手助けする前はガリアで腫れ物扱いだったんだろ?
それを一躍トップアイドルまで押し上げたんだよな。
今では国民的アイドルだ、しかも有能だぞ」
「ああ、一度は刺客まで送られたんだが……
何だかんだで、今では個人的な贈り物や手紙の遣り取りまでしてる様だ。
フィギュアのモデルを引き受けた時点で、もう普通の関係じゃなかったかもしれん」
父親ズは立ち上がりながら文句を言い合う。
「何で、この世界の姫君達は何かしら問題が有るんだ……
で、どうするんだ?」
「どうするとは?」
ツェルプストー辺境伯は、机を両手でバンバン叩いて
「ツアイツが認める位、有能な姫だ。
きっとゴリ押しじゃない手立ての一つや二つは使ってくるだろう。
お前の息子は女に甘い。
ガリアの狂王を義父上と呼ぶかも知れないんだぞ!
サムエル殿も彼と親戚になるんだよな?
ゲルマニアでの立場とか微妙だし、ウチの娘の旦那でも有るんだ!
影響がどう出るかなんて分からないぞ」
「お前の娘が、もっとツアイツを繋ぎ止めていれば良かったんだろーが!」
立ち上がり、無言で睨み合う……
「「外へ出やがれ!」」
オッサン2人の拳を使った、漢言語の話し合いがもたらされた……
その時のツアイツは
「エーファ、もう少し優しく秘薬を塗って下さい。
しみますよ」
「駄目です。
最近はテファ様とばかり遊んでいる罰です」
と、巨乳メイドと宜しくやっていた!