第150話
イザベラ様、男の裸(上半身)を目撃す!
二階の客間ってどれだい?
片っ端から開ければ良いか。
此処も違うねぇ……
此処も違った……
「此処かい?」
三部屋目の扉を開けた途端……
裸のツアイツが居た!
「はにゃ?
すっすまないね。
覗くつもりは無かったんだよ」
思わず扉を閉めてしまう。
うーまさか裸で居るなんて寝る時は裸派なのかい?
それは、ちょっと恥ずかしいd
「イザベラ様?
もう大丈夫ですよ。
入って下さい」
感動の出会いが、ぐだぐだだよ全く……
「ああ、入るよ……」
アイツは、上半身が包帯だらけだった。
「アンタ、その傷……
痛くないの?
無理してんじゃないのかい?
何だよ!
そんなに酷い傷なのに、のこのこガリア迄来てさ……」
何だ?
視界が滲んでるよ……
「イザベラ様?
見た目が酷いですが、大した事はないんですよ。
二週間もすれば、傷跡も残らず治りますから」
何を微笑んでるんだい!
「全治二週間ってのは、普通は重傷なんだよ!
何で……
そんな体で、私に会いに来たんだよ。
絶対安静だろうに……」
なに、勝手に手を引いて椅子に座らせるんだい。
なに、勝手にお茶とか煎れて……
なに、ハンカチで涙を拭いてくれてさ。
なに、向かい合って座るんだい……
ナニナニナニ……
「心配してくれたそうで。
イザベラ様を久し振りに見れたので、苦労が報われた感じがしますね」
なにを爽やかに笑ってるんだい。
痛いんだろ?
我慢してないのかい?
うー、何か言いたいのに何も言えないなんて……
「イザベラ様?
もしかして、傷跡とか見せられて怒ってます?」
怒る?
私が、なんで?
こんなに傷付いてるのに、私の為に来てくれたアンタに?
「……怒ってないよ。
その、アレだよ。
レディに裸を見せ付けるのは、紳士としてどうなんだい?
……いや、ガリア迄来てくれたのは嬉しいよ。
本当だよ」
くっ、アンタの顔がまともに見れないよ。
無事な顔をもっと見たいのにさ。
「紅茶、冷めますよ?」
「あっああ……
紅茶好きなのかい?
私も好きだよ。
気分が落ち着くからさ」
SIDEカステルモール&ジャネット
大の大人と年頃の娘が、扉に張り付いて中の様子を窺っている。
「誰?
ねえ、アレ誰?」
「イザベラ様。
初々しいですな。
しかし、もっとガツンと行かないと!
ツアイツ殿は、アレで結構鈍いんですよ」
「てか、アレがイザベラ様?
ウッソー別人じゃん!
何時もの腹黒さが微塵もないですよ?
アレが恋する乙女かぁ……
変われば変わりますね」
「全くですな。
しかし、イザベラ様の方がツアイツ殿にベタぼれ!
これは何とかしてあげたいのですが……
今夜は無理でしょう。
ツアイツ殿からアプローチが有れば、或いは」
「子作りまで進むk
イッタイ、何するのよ?」
「黙れ!
下世話な想像をするな」
「アンタだって覗き魔じゃん!」
「これは見守っているから問題無いのだ!」
小声で貶し合う2人。
しかし目線は部屋の中から外してはいない。
何処までも覗き屋根性が、据わっていた……
いっぱいいっぱいイザベラ様
ツアイツの煎れてくれた紅茶を飲む。
ふう……
大分落ち着いたね。
「その……なんだ。
少しは心配したんだよ。
無事で良かった」
上目使いで見れば……
何だい、その微笑みは。
うー嫌な女だね私は。
もっと素直に嬉しさを表現出来れば良いのだけど……
「有難う御座います。
イザベラ様は、お変わりは有りませんか?」
変わり?
有るよ!
アンタを心配し過ぎて大変だったんだよ。
「うー……
変わりはないよ。
普段通りさ、何の問題も無いね」
「そうですか。
少し残念ですね?
もっと悲しんでくれt」
「勿論、凄く心配したし悲しかった!」
思わず叫んでしまった!
「そうですか。
嬉しいです」
こっコイツ、タラシだ……
口説いてるよね?
私、口説かれてるよね?
つまり私は、コイツにとってそう言う対象に見てくれているんだよね?
「明日、竜騎士団詰め所に来るって言ったが……
アンタは重傷だ。
だから駄目だよ。
明日は絶対安静だ。
私がまた夜に会いに来るからさ」
やっと、ビックリした顔が見れた!
「イザベラ様が危険です!
深夜に出歩くなんて。
僕の方から……」
ふふん!
自分の体の心配をしな、アンタはさ。
「心配しなくて平気さ!
ここは私の国だ。
それにアンタは病人だよ。
私にこれ以上、心配させたくないなら言う通りにしなよ。
良いね?
私が明日の夜に、アンタに会いに来るんだよ!」
本当は抱き付く位はしてあげるべきだけど……
怪我に響くからね。
「分かったね?
では、明日の夜にまた来るよ」
そう言って部屋の外に出る。
もっと話したいけど、無事が確認出来たから今夜はこれで満足だ。
余り長居しても、ツアイツの体調に響くからね。
明日は何か見舞い品を持ってこようかな……
SIDE覗き魔カステルモール&ジャネット
気配を遮断して中を伺っている。
スキルとしては、無駄に一流なのだが……
「かーっ!
見てられないですね。
また明日、私が会いに来るとか言ってますよ」
「ツアイツ殿は、この後アルビオン王国に向かうのだが……
今夜は、相談は無理か。
しかしツアイツ殿はナチュラルに口説いてるな。
アレで口説いてないって言うなら、相手の女性が可哀想だ」
「えっ?
墜としに入ってるんですよね?
てか、ナチュラルにあの言動だと刺されますよ?
私が同じ事を言われたら、明日は結婚式でオーケーですよね?
ですけど……」
「流石はツアイツ殿。
我が主に相応しい御方だ」
「「こっちに来るぞ!
隠れろ」」
音も無く扉から離れる2人……
お帰りイザベラ様
「ジャネット、帰るよ。
カステルモール、話が有るから一緒に馬車に乗りな」
「「はっ!」」
帰りの馬車の中で、今夜の事を考える。
どうしたら、ツアイツをモノに出来るだろうか?
「カステルモール、ジャネット。
私はツアイツが欲しい。
協力してくれ」
遂にイザベラ姫が、ツアイツ争奪に参戦表明をした瞬間だった!