第152話
ド・ゼッサール隊長、部下から慕われる!
マンティコア隊の隊舎にて、隊員達を集めた隊長。
この隊舎、見回すと男の浪漫本がチラホラと置いて有ったり会報やカタログも山積みだ。
残念ながら鋼鉄の規律は、先代隊長の引退と共に廃れていった……
この隊舎からは、現代の漫研やアニメサークルに通じる雰囲気が有る。
つまりは、ツアイツの信奉者が多いと言う訳だ。
「今日、皆に集まって貰ったのは、この隊の未来について……
良い報告と、悪い報告が有るからだ!
さぁ、どちらから聞きたい?」
初っ端から、ぐだぐだな開始だが隊員達は顔を見合わせながら考えている。
「えー先ずは悪い方から教えて下さい」
誰も何も言わないので、仕方無く副隊長が答える。
「悪い話か……
最悪だぞ!
先代隊長の烈風のカリン様が復活した。
先日、私の下に訪ねてこられた……
鋼鉄の規律の実践者。
歩く環境破壊魔。
泣く子も黙る伝説の女傑。
最悪の使者だ……
その内に、この隊舎にも来るだろう」
「えっ?
烈風のカリンって、御伽噺の悪役じゃないの?」
「小さい頃に、親から良く言われたな……
言う事を聞かないと、烈風のカリンがやって来るって。
都市伝説だと思ってた」
若い隊員は、直接会った事が無いから言いたい放題だ……
そして生存中に既に伝説扱いか。
しかし、年嵩の隊員達の顔色は青い。
「たっ隊長!
何を呑気に言ってるのですか?
この惨状を見たら、お仕置きっすよ」
「そうです。
早く片付けないと……
色んな意味で終わりますよ!」
既に席を立ち、周りを片付け始める。
「落ち着け。
それは十分に理解しているが、先ずは残りの話も聞いて欲しい」
手を止めて隊長に集中する。
「良い方の話ですか?」
一方が最悪なのに、それを打ち消す程の良い話が有るのか?
「宿敵グリフォン隊の奴らに勝つ方法が有る。
何時も何時もチッパイ派の癖に、ツアイツ殿に何かと便宜を図って貰ってる奴らに……
巨乳派の我らが、教祖殿に会える可能性が有るのだ!」
「「「おおっ!」」」
皆、身を乗り出す様に話の先を促す。
「これからの話は、トリステイン王国と巨乳に忠誠を誓った漢達にしか話せない……
誓えぬ者は退出しろ」
そう言って、ド・ゼッサール隊長は隊員達を見渡した……
誰一人、席を立たない。
大きく頷くと、話を進める。
「良いか?
アルビオンで話題になっているレコンキスタ……
教祖を害した我らが敵。
奴らは、このトリステイン王国にも毒牙を伸ばして来た。
そう!
アンリエッタ姫の有力貴族の緊急召集は、売国奴の一掃だ……」
突然の話に皆が動揺を隠せない。
「それが、ツアイツ殿の面会に繋がるのですか?
直接の敵討ち的には、ならないのでは?」
「売国奴の捕縛ですよね?
我らだけでは力不足ですよ」
消極的な意見しかでないか……
「アンリエッタ姫は、アルビオン王党派に応援を送るつもりだろう。
つまりレコンキスタに宣戦布告……」
皆が息を呑む。
まさかの開戦か?
「「「…………!」」」
「それに反対する連中の中に売国奴が居る。
見分け方は分からぬが、既に調べはついているのだろうな。
此処まで話が進んでいるのだから……
そして彼らをグリフォン隊より多く捕まえるのだ」
事の重大さに、皆が黙り込む……
まさか、我が国の中にも裏切り者が居るなんて!
突然、ド・ゼッサール隊長が話題を変えた。
「時に烈風のカリン様……
今はヴァリエール公爵夫人なのだが。
彼女には3人の娘が居る。
年増のチッパイ、賞味期間ギリの巨乳美女。
そして、今が旬の巨乳美少女だ!
彼女らの誰かと、ツアイツ殿は結婚するらしい。
カリン様の義理の息子……
つまりは、そう言う事だ」
話し終えてニヤリと笑う。
「つまり、ツアイツ殿はカリン様の義理の息子。
此度の作戦で活躍すれば、彼に会う為の、便宜を図ってくれると?」
「カリン様曰わく、市販されてないブツも有るそうだよ。
しかも多数……
分かったか?
この作戦には、我らマンティコア隊の未来が掛かっている!
総員、気合いを入れろ。
ワルド等には負けないぞ」
「「「アイアイサー!」」」
ここに、信念と欲望で結束した漢達が生まれた!
因みに、彼らは巨乳王女アンリエッタ姫も見るだけなら大好きだった。
上手くすれば、巨乳王女を近くで見れるかもしれない!
彼らの想像の中の未来は薔薇色だ……
ちゃんと、アンリエッタ姫の胸も本物の巨乳になりつつ有るのだ!
「あー皆、その前に隊舎の片付けをするぞ!
カリン様に見つかって、捨てられそうな物は隠す様にな……」
「「「アイアイサー!」」」
皆が一斉に掃除を開始する。
「しかし、ヴァリエール三姉妹がカリン様の娘とは!
誰なんですかね?
ツアイツ殿のお相手は?」
「順当に行けば、年も近い三女だろ?
巨乳美少女と聞くし。
巨乳教祖のツアイツ殿ならお似合いだ」
話題はツアイツの婚約者が誰なのか?
で盛り上がる。
「いや、あの強烈のカリン様だけに売れ残りの長女を押し付けるのかも!」
「あの連続婚約破棄記録更新中の才女だろ?
やっぱ、ツンツンより癒し系巨乳美女か美少女が良いよな!」
「まぁ長女なら受取拒否だな!」
「お前に拒否権なんてねーよ!」
「その前に、我々には声も掛けて貰えないか!」
和やかに笑い合う隊員達。
好き勝手に言っているが、カリーヌとエレオノールに知られたらミンチだぞ?
そして、遂に緊急召集会議の当日を迎える。現王崩御以来初めてだろう、これ程の貴族達が一同に会するのは……
集められた貴族達は、一部を除き理由を知らされていない。
また、暴走姫の思い付きだろうとタカを括っているが……
今回は、トリステイン王国の歴史に残る1日になるだろう。
ハッピーなアンリエッタ姫が周りの者達のお陰で、その名声をハルケギニア中に広める事となる。
国に巣くう悪徳貴族を一掃し、アルビオン王国に救いの手を差し伸べる。
彼女の美貌も相まって、その噂は尾ひれを付け捲って凄い事になっていく。
稀代の謀略女王の誕生は、本人が何も準備をしなかったが、着実に進んでいた!
「遂にこの日を迎えましたわ。
私の、私による、私の為だけの、未来の為に……
この手にイケメン2人をガッチリ掴んでみせますわー!」
アルビオン大陸に吠えるアンリエッタ姫が居た!