第160話
傷を負いながらも何故か笑い転げる男と、懸命に彼を気遣い体をさする女……
これ何てカオス?
「くっくくく……
イタタタ、でも……ふふふふ、いや痛い」
体を労らねばならないのにこの男は。
「もうお黙り!」
強引に口を口で塞ぐ。
コレが私のファーストキスなのだが……
小さい頃にエレーヌと、遊びでしたキスはノーカンだよ!
「んっんー、プハァ……
落ち着いたかい?
アンタ、病人なんだからね!
大人しくしてな」
ふふん!
ビックリしただろ?
でも、結婚を約束した男女なら良いだろ、キスくらい……
あっヤバい、顔が熱いよ。
「いっイザベラ様……
何を……」
「お黙り!
アンタが傷に触るのも構わず笑い転げるからだよ。
それと、2人だけの時はイザベラと呼びなよ、ね?」
コイツが、真っ赤になるのは珍しいね。
変態を公言しても恥ずかしがらない男がさ……
「今夜は帰るよ。
偽装船や人員その他は明日の夜には発てる様に手配しとくから。
私は見送りは出来ないよ(一緒に行くからさ)
キスの代金も上乗せだよ。
言っとくけど、王女のファーストキスだ!
高いからね」
そう言って部屋を出る。
まっまだ恥ずかしくて、心臓がバクバク言ってるよ!
これは、慣れないとアイツとの夫婦生活に支障をきたすね。
具体的には子作りn
「何を扉の外で、泡を吹いているんだい?
ジャネットは……」
扉の外で、うずくまるジャネットに尋ねる。
「いえ、部屋を覗こうとしていたので絞めておきました……」
覗きかい?
全く年頃の女が、恋もせず出歯亀かい……
「カステルモール、ご苦労!
帰るから送りな。
ジャネットも連れてくよ」
馬車に戻れば、エレーヌが熟睡している。
コイツも、最近緩んでないか?
北花壇騎士団員が、護衛の姫を放っておいて寝転けるわ、覗きがバレて絞め落とされるわ……
「まぁ良いか……
プチトロアに帰るよ」
馬車は夜道を走り出した。
公式ファンクラブ会員が完璧に護衛している道をひた走る……
今夜の事は、カステルモール経由で知れ渡る。
暫くはイザベラ祭りの開催だろう!
勿論、アルビオン行きは伏せておくが……
余りに騒がしいので、落ち着くまでプチトロアに籠もる。
不自然ではないだろう。
ちゃんと覗きで得た情報を元に対策を練っていた、主思いの部下だった。
デレデレ完結イザベラ様
先程の事を思い返す……
レコンキスタへの対応。
まぁ問題無いね。
オリヴァー・クロムウェルなど所詮は小物。
私とアイツの仲を取り持つ切欠作りには感謝するが、そうそうに退場しな。
オルレアン夫人とエレーヌの双子の妹。
ジョゼットか……
お父様が、毒を盛ってないと言ってくれた。
これで、心のトゲが一つ取れたよ。
有難う、ツアイツ。
彼女らについては、私が何とかするよ。
偽装して適当な爵位と領地を与えれば良いかね?
それともゲルマニアで爵位を買って与えるか……
エレーヌもジョゼットも万が一を考えて、ツアイツから距離を取らせ私の目の届く所が良いよね。
そして、ロマリアか……
正直面倒だ。
6000年の重みを跳ね返すのは大変だ。
しかし、ちょっかいを掛けて来るならば……
私達の幸せな未来の為に、腐れホ〇野郎の教えなど潰してしまおう。
教皇は手強いが、お前の存在自体がブリミル教に反してるんだよ。
201人の男の娘って何だい?
美少年の群は見てみたいが、全員に女装させて悦に入ってるんだろ?
馬鹿かね、コイツは!
こんな教皇なら、付け入る隙は幾らでも有るね。
何とかなるよ、ツアイツと2人で立ち向かえば……
「ふふふふ……
望み得る最高の結果だったね。
きききき、キスもしたし……」
「イザベラ様……
声に出てますよ。
良かったですね、ツアイツ殿と結ばれて」
何故知ってる、カステルモール?
「まさか、貴様も覗いていないだろうね?」
目を逸らした!
さては、覗いていたね?
「まぁ良い……
両用艦隊を一隻偽装するよ。
最新鋭の船がいいね。
お前はイザベラ隊員達と連絡を取り合い、秘密裏に港に集結させな。
当然、お前も行くんだよ。
ツアイツには内緒だが、私も行くよ!
質問は許さない、分かったな?」
「はっ!
準備万端お任せを……
しかし、留守の対応はどうします?
確実にバレますよ」
そうだった!
「エレーヌ、ジャネット起きな!
大事な話が有るよ」
2人の頬を平手で張る!
良いモミジ跡だ。
「「ひどい(です)イザベラ(様)」」
「黙れ!
職務怠慢で吊し上げるぞ」
黙り込む2人……
「良くお聞き。
一度しか言わないよ。
明日の夜、もう今晩か……
私はツアイツと共にアルビオンの王党派に行く。
これは決定事項だ。
エレーヌはフェイスチェンジを掛けて私の身代わりだ。
ジャネットは補佐をしな」
2人共、ビックリしてるね。
「……それは危険」
「幾ら何でも無謀です!」
「大丈夫だよ。
ツアイツと一緒なら何の問題もない。
それと、今回の件が成功すればエレーヌのお母様の治療が出来る。
ガリア王女として約束する。
だからエレーヌ、頼むよ」
エレーヌが縋り付いてきた。
「本当なの?
お母様が治るって……」
抱き締め返してやる。
背中をポンポンと叩く。
「本当さ。
手段はツアイツが探したんだけどね。
タイミング的には、レコンキスタを殲滅した後じゃないと問題が有る。
だから、私もツアイツと一緒に行くんだ。
エレーヌ、協力してくれるかい?」
無言で頷いている……
多分泣いているんだろう。
エレーヌ、私のお気に入りのドレスに涎は垂らすは、涙と鼻水で濡らすは……
まぁ良いけどさ。
「イザベラ様、私には報酬はないのですか?」
ん?
「王女たる私のラブロマンスの最中に覗きか……
本来なら不敬で処罰だが、許してやるよ。
それと、私達の下で波乱万丈な人生をおくらせてやるから良いだろ?」
「オッケーです!
サポートは任せて下さい」
これで、準備は万端だ!
婚前旅行が、白の国か……
悪くは無いね。