第167話
こんにちは!
ツアイツです。
現在、イザベラ様が僕の腕を枕にして寝ています。
それを監視する様に並んで立っているメイドさん達……
イザベラ様は気持ち良そうな寝息をたてています。
しかし僕は、他の誰かに見られたら首ちょんぱな状況ですし一睡もできません。
メイドさん達からは
「ツアイツ様、意気地なしですわ……」
「据え膳喰わぬは漢の恥では……」
「姫様に何か不満でも?
まさかアレだけの奇態を晒しているのに恥ずかしいのでしょうか?」
と、僕の鋼の心臓でもひび割れてしまうお言葉……
「んー?
おはようツアイツ。
何だい、元気が無いけど……
良く眠れなかったのかい?」
「「「姫様、ツアイツ様は一睡もしておられません。
私達が居ると恥ずかしいそうです」」」
なっ?
その言い回しじゃ、僕がイザベラ様と2人切りで寝かせろって聞こえたぞ!
「ツアイツ……
私は王族だよ。
そんな事はツアイツが、ガリアと言う国を担う位の気持ちが無いと、私は承諾出来ないよ」
ベッドの上で正座して、僕を見詰めるイザベラ様……
その覚悟が有れば、頂いちゃって良いんですか?
「ははははは……
大変有り難いお言葉ですが、考えさせて下さい」
笑って誤魔化す。
一瞬、それでも良いかな?
って考えてしまった。
「その気になったら、何時でも言いなよ。
ツアイツとなら一緒になっても良いからさ」
綺麗な笑顔で言われてしまった。
「えっ……その……」
「今は、そんな事よりレコンキスタをどうするかだよ!
さぁ治療するから、服を脱ぎなよ」
ポンポンと布団を叩いて促される。
見ればメイドさん達が、水の秘薬や替えの包帯を用意して待っている……
「あっすいません。
お願いします」
前回よりも、幾分マトモに包帯を巻いて貰った。
「眠気覚ましにお茶でも飲もうかね?」
時刻は夕暮れ……
特注の窓から、夕日が見える。
イザベラ様は……
僕の事をどう思っているのかな?
端から見れば、可愛いアプローチだ。
僕だって彼女からの好意なら喜んで受けたい。
これからレコンキスタを始末したら、ロマリアと共に戦う仲間でもあるし僕は彼女の魅力を……
イザベラ様を愛おしいと思ってしまっている。
夕日色に顔を染める、この小さな……
それでいて有能で何時も僕が困らせてしまっている姫が欲しい。
しかし、先ずはレコンキスタ……
オリヴァー・クロムウェルを倒し、ジョゼフ王の試練を達成しよう。
彼女はガリアの王女。
それなりの功績が無ければ、結ばれる事など有り得ない。
「イザベラ様……」
思わず名前を呼んでしまう。
「ん、何だい?」
彼女は、見ていた夕日から此方に視線を向けてくれる。
「レコンキスタを倒して、ジョゼフ王の試練を達成したら……
聞いて欲しい話が有るのですが……」
「ん?何だい、改まって……
良いよ。
ツアイツのお願いなら、聞いてやるよ」
貴女が欲しい……
この願いでも聞いてくれますか?
SIDEプリンセス・イザベラ艦橋
イザベラ様と約束をしてから、一夜明けた。
いよいよ前方にアルビオン大陸が見えた。
「いよいよですな。
ツアイツ殿、準備は良いですか?」
クラヴィル殿から念を押される。
「問題有りませんよ。
では、カステルモール殿。
お願いします」
「お任せ下さい。
イザベラ様、宜しいですか?」
イザベラ様は、不敵な笑みを浮かべている。
「この作戦は消化試合みたいな物さ。
我らの勝ちは既に決まっている。
ツアイツ、だから無理はしちゃいけないよ。
これはウェールズ皇太子宛ての親書だよ。
これを読めば、今回のガリア参入の件も怪しまれないから……」
何処までも、先を考えられる姫様だ。
僕が行って説明すれば良いかな?
って思ってたけど、親書が有れば確実だ。
「有難う御座います。
王党派に接触出来れば、一度カステルモール殿は戻って貰います。
それで宜しいですか?」
イザベラ様とカステルモール殿が頷く。
「さぁ、お前ら気合いを入れな!
我らの力を見せ付けるよ」
イザベラ様の号令で作戦がスタートする……
SIDEサウスゴータ
あれから幾度かの小競り合いが有ったが被害は少ない。
お互い消耗戦だが、こちらは防衛側。
被害は軽微だが、回復と補給が心配だ……
「ウェールズ様!
今、ツアイツ殿が到着しましたぞ」
バリーが待ちに待った報告をしてくれた。
「おお、ツアイツ殿が!
それで?」
バリーは興奮している。
「なんと!
ツアイツ殿は、ガリアからの増援を大型戦艦とガリアの竜騎士団団長を……」
ガリアから両用艦隊の大型戦艦だと?
「ははははは……
バリー、毎回驚かされるなツアイツ殿には。
直ぐに会おう、心の友に」
ゲルマニアからの応援の要請だけでは無かったのか?
まさかイザベラ姫から、我らの為に兵を借り入れてくれたのか……
兎に角、この戦況を打開するには嬉しい知らせだ!
館の外に出れば、ツアイツ殿が何処に居るのかなど直ぐに分かった。
あの人溜まりの中か!
彼を歓迎する人達の輪に私も加わる。
「ツアイツ殿、いや心の友よ!
歓迎する。
さぁツアイツ殿はお疲れだ!
今夜は歓迎の宴を開くぞ!
しかし今は落ち着いてくれ」
彼の両手を掴み、ガッチリと握手をする。
「ウェールズ様、お久し振りです。
お元気そうで何より」
隣の武人が竜騎士団団長のカステルモール殿か……
「カステルモール殿もガリアからご足労頂き感謝する」
此方ともガッチリ握手をする。
そして、後ろの風竜を見上げる。
「見事な風竜ですね?
浮遊大陸アルビオンでも、これだけの風竜は珍しい」
ブリュンヒルデが、軽く頭を下げる。
人語、理解してるのかな?
「さぁ立ち話も何ですから屋敷の方に……
皆も持ち場に戻れ!
歓迎会は今晩盛大に執り行なうぞ」ウェールズ皇太子がその場を纏め、漸く屋敷内に入る。
さぁレコンキスタよ。
強力な助っ人が此方には来たぞ!
これからが本番だ。
我らの国から、このアルビオン大陸から叩き出してやる!