第168話
サウスゴータの領主の屋敷を徴用しているのか、街の高台に有る一番大きなお屋敷に通される。
元々は応接室だったのだろうか?
豪奢な室内に似つかわしくない見取り図や地図に兵の配置が書き殴って有る。
ソファーを退かし大き目の机と椅子……
向かいには、ウェールズ皇太子に侍従のバリーさん。
それと知らない貴族が何人か……
此方は僕とカステルモール殿。
ウェールズ皇太子から現状を説明される。
「ツアイツ殿、遠路はるばるアルビオンまで来て貰い感謝する。
先ずは此方の現状を説明させて欲しい……」
戦況はイザベラ様の調査通りだ。
「分かりました。
実は少し離れた所に両用艦隊の大型戦艦を待機させてるので、サウスゴータに乗り入れて宜しいですか?
その……
ガリア王国のイザベラ姫も乗っておりまして」
サラリと実はイザベラ様も来ています!
と告白しました。
あっウェールズ皇太子他、皆さん固まった?
SIDEウェールズ皇太子
なっ何だと?
ガリアの王位継承権第一位のイザベラ姫を同行させるとは……
ツアイツ殿とイザベラ姫とは、やはり噂通りなのか?
「ツアイツ殿、この様な最前線に女性同伴は……
それとも何か他に意味が有るのですか?」
まさか婚前旅行では有るまい?
いや既成事実作りか?
「いえ……
ガリアのイザベラ姫ではなく、ツンデレプリンセスとして応援にと。
隠密にですが……」
「イザベラ姫の……
ツンデレプリンセスの人気は、アルビオン国内でも高い。
我が父上も、彼女のフィギュアを揃えています。
しかし……
ツンデレプリンセスとして来たと言う事は、当然……」
「ええ、演説なりをするのでしょう。
僕も激励を皆さんの前でしたいですし……
兎に角、待たせてますから呼んで良いでしょうか?」
そうだった。
後方に待機しているんだった。
「ウェールズ・デューダーの名の下に、受け入れを許可します」
ここは、ツアイツ殿へのお礼を兼ねて我が名の下にイザベラ姫を公式に招待しよう。
何れツアイツ殿とイザベラ姫が共に旅をした証明は、我が名において認める。
「ツアイツ殿、これからが大変かもしれないが全力で応援させて貰うよ」
彼の肩を叩き激励する。
「ちょ?
応援は僕の方が……」
心の友よ。
同じ姫でも羨ましいぞ。
「カステルモール殿、イザベラ姫に受け入れ了承の旨を伝えて下さい。
さぁイザベラ姫を迎える為にレコンキスタを牽制するぞ!
空軍よ気張れ!
ツンデレプリンセスが来てくれるのだ」
さぁこれからが本番だ!
レコンキスタよ、このアルビオン大陸から叩き出してやる。
SIDEイザベラ
前方に城塞都市サウスゴータが見える。
散発的にレコンキスタが攻撃してくるが、艦砲射撃で黙らせる。
「カステルモール、このままレコンキスタを潰せそうだね!
ふはははは……
人がまるでゴミの様だよ!」
「イザベラ様、まるで悪人ですよ。
何て言うか……大佐?」
カステルモールが言い難そうに、訳の分からないセリフを言うね。
「私は軍籍は無いし、普通なら総司令官じゃないのかい?」
「いえ……
何となく、目にはご注意を」
「…………?
まぁ良いよ、しかしウェールズ皇太子も律儀だね。
直援の風竜を回してくれるとはさ!」
周囲をアルビオン空軍所属の風竜が旋回し、近づくレコンキスタ側の風竜を寄せ付けない。
両用艦隊旗艦プリンセス・イザベラ号は、悠々とサウスゴータに侵入した!
序でにレコンキスタ側の傭兵にダメージを与えながら……
SIDEツアイツ
何故だろう?
ウェールズ皇太子を応援に来たのに、彼から応援するからと言われたのは……
ジョゼフに課せられた試練を知ってる?
まさかね……
侵入してきた船を見上げる。
うんデカい!
アルビオン空軍旗艦のロイヤル・ソヴリンと、どっちがデカいかな?
暫く見詰めていると、タラップに蒼い髪の少女が現れる。周りからは、凄い歓声だ!
流石は、ハルケギニアで初めてのアイドル。
しかし、イザベラ様は周りをキョロキョロと何かを探すように見ている……
目が合った瞬間、イザベラ様が凄い笑顔で手招きをしている。
何か有ったのかな?
フライで近くまで行くか。
彼女の傍に降り立つと
「ツアイツ、私はフライが苦手だから……はい!」
「…………はい?」
「ニブいね!
抱っこしてウェールズ皇太子の所に運びな。
私に触れられるのは、基本的にツアイツしか居ないんだから……
ほらほら、早くしなよ」
訳が分からないが、イザベラ様をお姫様抱っこしてフライで降りる。
彼女を抱いた瞬間に、先程よりも凄い歓声!
何かヤバい予感が……
彼女は真っ赤になって、僕の首に両手を回して俯いている。
高い所は平気な筈でしたよね?
フライで慎重に飛んで、イザベラ様を丁寧に降ろす。
「イザベラ様、着きましたよ。
もしかして、気分でも悪いのですか?」
船酔いでもしたのかな?
「ああ、ツアイツ有難う!
久し振りですね、ウェールズ殿。
園遊会以来か?
今回はツアイツとお忍びで来たんだが、ツンデレプリンセスとして協力してあげるよ。
感謝するんだね」
パッと顔を上げて僕の手を抱きかかえながら、淀みなく話すけど……
すげーフランクだ!
「あっああ……
イザベラ姫殿下、久し振りですね。
この度は我ら王党派の為にわざわざ来て頂き感謝します。
その……
ツアイツ殿とは仲が宜しいのですね?」
何故、敬語なんだウェールズ皇太子?
「ん、ああそうだよ!
私達はゴエツドウシュウだからね。
少し休んだら、これからの方針を打合せしようか?」
「ゴエツドウシュウ?
何ですか、それは?」
イザベラ様は答えず、さっさと屋敷の方へ歩いて行く……
「ほら、早く来なよ!
ツアイツも一緒にさ、ほらほら」
慌ててバリーさんが先導している。
「イザベラ様……
何てフリーダムなんだ!
ウェールズ殿、すみません。
悪気は無いんです」
「はははっ!
可愛いではないですか。
ツアイツ殿が羨ましいですよ。
戦場まで着いて来てくれるなんて……」
ウェールズ殿は、何故か煤けて見えた……
アンリエッタ姫の相手は大変なんだろうな。