第169話
こんにちは!
ツアイツです。
高所の為か夏でも過ごし易い、ここサウスゴータの領主館の一室で対レコンキスタ会議を行っています。
本来ならば、ゲルマニアの一貴族の跡取り息子でしかない僕が出る類の会議ではないのですが……
イザベラ姫の隣で参加しています。
流れ的には、我らが増援として来たので一気に本体を叩く!
レコンキスタは、約五万の兵力を三カ所に配置しています。
東側に本隊三万、北側に一万。
そして南側に一万。
東側は、平地に整然と兵を展開させている。
本隊で有り、それなりに統率されている。
上空には空中船が3隻。
戦列艦クラスで移動力は低いが、側面に艦砲を多数搭載している。
そしてレコンキスタ側のメイジの殆どが此処に配置されている。
小者が自分の周りに強者を集めたがる典型だね。
北側と南側は条件は同じだ。
平地に兵を展開しているが、統率は悪い。
ただ密集しているだけ……
しかし、城からの砲撃の範囲外に居る。
これは完全に陽動で有るが、我々も兵を分散しなければならない。
西側は大軍を展開出来ない地形の関係と、王都ロンデイニウムとも繋がっている為に少数の偵察部隊だけだ。
切り立った岩山に挟まれた道に兵を展開しても、最悪挟撃されたら逃げ場が無いんです。アルビオン王党派は、ロイヤル・ゾヴリンとプリンセス・イザベラの両船艦を全面に押し出して総力戦を提案した。
寄せ集め軍など、頭を潰せば霧散する……
でも残党兵が二万、国内に散らばるんだけど。
「ここは一気に攻め滅ぼしましょう!」
王党派のモブ将軍が叫ぶ!
「もう我慢の限界だ。
ここで一気に形勢を逆転させ、オリヴァー・クロムウェルを叩く」
主戦派が有利かな?
ウェールズ皇太子は、腕を組んで考えている。
「イザベラ様、どう思います?」
「コイツら平民を大切にしてる筈だよね?」
「そうですが……
逃げ場の無い浮遊大陸で敗残兵が二万人ですよ」
「まぁ及第点では有るけど……
ここは北側と南側を同時に攻めて殲滅。
そして本隊にだよ。
北側と南側を殲滅されて尚、兵を分けるなら馬鹿だ!
しかし、ゴミ虫の如く湧き出す傭兵が集まれば同じ展開だね」
「僕も同感です。
北と南は少数の精鋭を送って殲滅。
その連絡が行って動揺した本隊を主力が攻める。
北と南の戦力は、そのまま敵本隊に進軍。
どうですか?」
「良いね。
それでこそツアイツだ!
しかし我々は客将だからね……
発言は難しいか」
コソコソとイザベラ様と話す。
考え方は僕と同じだ。
補足すれば、一方をシェフィールドさん無双。
もう一方を僕とカステルモール殿とイザベラ隊。
僕は密集した敵への手立てを持っている。
具体的に言えば、ゴーレムの専用黒色火薬アックスの大量投擲だ!
残敵掃討用に各二千人位の陸上兵力を補助として付ければ問題無い。
シェフィールドさんは……
多分、本当の意味で殲滅させるだろうけど。
「なる程、確かに戦力が纏まった今ならば反攻作戦も可能だな……
イザベラ姫、ツアイツ殿。
何か意見は有るかな?」
ウェールズ皇太子が話を振ってくれた。
「我々は応援だ。
だから、余り作戦立案に深く関わり合うつもりはないんだけどね……
確かに戦力が纏まったんだ。
反攻作戦で本隊を潰すのは常套手段だね。
しかし、北と南に別れた傭兵が敗残兵としてアルビオン全土に散らばるよ。
アルビオンは浮遊大陸で逃げ場が無い。
そいつ等の始末は大変だろうね?」
浮かれ過ぎていたのか、皆さん周りを見渡していますね。
「確かに、タガの外れた傭兵など強盗に早変わりだ。
しかし三方同時対応は難しい。
中途半端に攻めても、サウスゴータ本体に攻めいられたら……」
確かに心配はそこだ。
どれかを殲滅しようとして兵を集めれば、残りが手薄な部分に攻城戦を仕掛けてくる。
数が多いから出来るんだ。
「そこは、我々を上手く使って貰えれば良いかと」
会話に割り込む。
「上手く使えとは?」
「北と南の敵軍、合計二万……
我々だけでどうにかしましょう。
後詰めに二千人づつ配置してくれれば、残敵掃討はお任せしますから……
後は、敵本隊をウェールズ殿の率いる主力軍が攻めれば宜しいかと」
皆が黙り込む……
「失礼ながら、大型戦艦も居ますから片方は何とかなると思うが……
同時進攻ともなると、戦力が乏しくはないか?」
戦艦一隻、竜騎士30人だからかな?
モブな将軍から批評された。
「お姉ちゃん、居る?」
声を掛けると空間が歪み、ゆらりとシェフィールドさんが現れた。
僕の後ろに立ち、首を両手で抱きかかえる。
「北と南……どっちが良いかな?」
多分話を聞いていただろうから、端的に質問する。
「お姉ちゃん、北で良いわよ。
本当は東側を殲滅したいけど……
我慢してあげるわ」
まるで二万程度の傭兵など、大した事は無いと言わんばかりだ!
「ツアイツ殿、その巨乳美女は誰だい?
君はイザベラ姫と……
アレなのに、何故また巨乳なんだい?」
若干の恨み節を感じました。
「ある人から派遣されている僕の護衛です。
国家間紛争に介入している僕の護衛……
つまりは国家の軍隊と渡り合える力を持った人。
トリステインの烈風のカリンが互角と評した人ですよ……」
烈風のカリン!
生きる非常識に認められた女性か。
ニコリと微笑む彼女からは想像がつかないだろう。
「しかし……」
んー渋るなぁ。
ならば、もう一つ手を打つかな。
「時に、トリステイン王国ですが……
アンリエッタ姫の手腕により腐敗貴族を一掃!
現在、アルビオンに増援を送る為にタルブ伯領に前線基地を構築しているとか。
ダータルネスが第一目標かな?
彼処を押さえれば、レコンキスタは挟撃される」
この情報には皆さん驚き、喜んだ。
ウェールズ殿も……
貴方にはヤバいんですよ!
「アンリエッタ姫……
ウェールズ皇太子にご執心とか?くくくっ、それはもう手柄が欲しくて奴らの本隊に後ろから食いつくだろうね……
もしアンリエッタ姫が活躍して勝ったら、何を望むのかねぇ?」
イザベラ様に良い所を取られてしまった!
「ツアイツ殿!
これは偽りなき私の気持ちだが……
私はアンリエッタ姫が苦手なのだよ。
彼女が、有る事無い事吹き込んでいるかも知れない。
しかし私は、アレと結婚したくないのだ!
嫌なんだ!」
ウェールズ皇太子の魂の叫びが会議室に響き渡った!