第170話
対レコンキスタ会議!
ウェールズ皇太子のぶっちゃけトークに皆が固まった……
そんなに嫌なんだと!
「私は、私の覚醒した漢のカンを信じる。
アンリエッタ姫は……
このアルビオン王国にとって厄災でしかない。
言い過ぎかも知れないし、ツアイツ殿はアンリエッタ姫とも友誼を結んでいるのかも知れないが……」
しどろもどろに、脂汗を滲ませながらウェールズ皇太子は独白する。
「「なら、益々トリステイン王国軍の来る前にレコンキスタを倒さないと、駄目じゃないですか(だろう)」」
見事にイザベラ様とハモる!
「トリステイン王国軍には、烈風のカリンも参戦しているよ。
後方から彼女が1人ででも不意を突けば、レコンキスタ軍本隊は崩壊するかも知れないね。
どうする?
レコンキスタ本隊の壊滅……
この大恩をもって、婚姻外交をアンリエッタ姫が望んだら?
アンタ、その要求を跳ね返せるかい?」
ニヤニヤしながら、イザベラ様がウェールズ皇太子を追い詰める。
周りの家臣達も状況を考えているのか、溜め息や首を振ったりしている。
まぁ無理だろうね?
国を救ったの聖女の要求だし、ウェールズ殿の気持ちを考えなければ、悪い事では無いと思う人が多い。
実際に婚姻してしまうと、皆さんが大変だけど……
「ウェールズ様、ここは我らに任せて下さい。
僕自身もアンリエッタ姫に狙われる身。
互いの為に、ここは一つ……
それに、あくまでも我々は王党派の補助。
決戦は皆さんが行うのですから!」
イザベラ様と交互に攻められてウェールズ皇太子の気持ちもぐらついているのだろう……
しかし煮え切らない態度に、イザベラ様が不機嫌になっていく。
指でテーブルをコンコンと叩き出した……
ああ、イライラしているんだな。
「男だろ!
シャキッとしな。
アンリエッタ姫との婚姻を断りたいならさ!
それとも何かい?
実はアンリエッタ姫を気に入ってるのかい?」
そしてキレた!
まぁまぁとイザベラ様の肩に手を置いて宥める。
しかし、この「渇!」が駄目押しになったのだろう。
ウェールズ様が立ち上がった!
「ツアイツ殿、イザベラ姫……
私も腹を括りましょう。
皆も良いな?
ここは彼らの提案を受け入れる。
この一戦にアルビオンの未来を賭けるぞ!」
「「「分かりました!」」」
話が決まれば行動は早い!
「しかし、その前に歓迎の宴を催そう!
我らが心の友と、その……
なんだ、えーと……」
チラチラと此方を見ながら、何かを言い掛けている。
「何だい?
言い難くそうに。
一国の皇太子だろう?
シャンとしな」
彼女の肩に置いた手を凝視しながら
「イザベラ姫とツアイツ殿は、その……
アレな関係何ですか?」
アレ?何だろう?
「ごえつどうしゅうな関係さ!」
イザベラ様は呉越同舟が凄く気に入ってるみたいだ!
立場の違う者が同じ環境下で協力する……
確かに間違ってはいないけどね。
何故か違う意味で捉えている気がするんだけど。
ウェールズ殿も何だか分からない顔をしているし……
「イザベラ姫、ごえつどうしゅうとは何なのですか?
聞いた事が有りませんが……」
「ああ、ウェールズ殿それはですn」
「ずっと一緒って事だよ!
さぁさぁ詳細はあんた等で決めなよ。
正面決戦は王党派で勝たなければ意味は無いんだ。
乗ってきた戦艦は貸してやるからさ!
周りが気にならなくなれば正面に集中出来て簡単だろ?
じゃツアイツ、邪魔だから私達は部屋に戻ろうか」
何か凄い事をサラッと言われた様な?
皆さん固まってるし。
「そっそれは、おめでたい事ですね。
後の打合せは我らで進めておきますので、2人でお部屋でお休み下さい。
そうでしたか……
お二方が!」
「やはりツンデレプリンセスはツアイツ殿と……
なる程、婚前旅行か」
「流石は巨乳派教祖はやる事が違いますな!」
なっなっ何言ってるんですか!
「イザベラ様、ご冗談を……
周りが本気にしますって!
いや笑ってないで……」
本当に楽しそうに笑って部屋を出て行こうとする。
慌てて追いかけるが
「流石の教祖もツンデレプリンセスには勝てないのか……」
「既に尻に敷かれていますな……」
「同じ姫でも、アレくらいハッキリと自分の意見を述べられて、しかも納得出来る内容だ!
はぁ……
彼方が羨ましい」
とか、言いたい放題言われてしまってる?
追いついて問い質せば
「良いだろ?
別に間違ってはいないんだから。
それとも違うのかい?
私とは一緒に居たくないとか言わないよね?」
と笑顔で言われてしまったよ。
ああ、確信犯だ。
そして外堀が埋まっていくのを実感する。
僕が彼女に告白する前に、多分状況は固まっているんだろう……
この辺の遣り取りは上手いんだよな。
取り敢えずイザベラ様の部屋で話しながら歓迎の宴を待つ……
イザベラ様付のメイドさん達は気配が読めない。
座れば直ぐに紅茶の用意がされているし……
「どう思う?
発破を掛けたけど、あいつ等トリステイン王国軍より先に倒せるかね?」
スッとお茶請けの焼き菓子が出される。
「大丈夫ですよ。
我々は負けませんし……
ヤバいなら側面からレコンキスタ本隊に攻撃を加えますから」
ポリポリと焼き菓子を頂く。
「タイミングだが……
トリステイン王国軍がダータルネスを墜とすまでは様子見だね。
出来れば彼らに逃走する傭兵の相手を押し付けたい。
散らばって逃げ出すゴミ虫の処理は面倒だからね」
イザベラ様も優雅……
では無いが、焼き菓子を食べながら喋ってもサマになっている。
やはり血筋かね?
「その辺の情報……
タイミング良く分かりますか?」
「大丈夫だよ。
彼女達の使い魔の鳥達は情報収集に役立つ。
タイミングはバッチリさ!」
えっ彼女達ってメイジだったの?
「メイドさんで有り、護衛も兼ねているんですね?
流石ですね。
ただ者では無いと思ってましたが……」
もしかしたら、僕よりも強いのかも知れない。
ニコニコと佇む彼女達に、一抹の恐怖を覚えた……