挿話29話対決ガリアVSトリステイン・超女の闘い
「姫様!
ツアイツ様が重傷です。
直ぐに医務室へ」
午後の紅茶を楽しんでいた時に、メイドが血相を変えて飛び込んで来た!
馬鹿な?
レコンキスタの刺客が入り込む余地は無い筈だ。
のほほん!
としててもスクエアのアイツが怪我を負わされるなんて……
持っていたカップを乱暴に置いて叫んでしまう。
「誰だ!
ツアイツに怪我を負わせたヤツは!
ああ?誰なんだい?」
「兎に角医務室にご案内しますので……
早く、こちらです」
王女だから、他国ではお淑やかにしてるつもりだったが駆け出してしまう。
見かねたメイドが私を抱き上げてフライで窓から飛び出し、屋敷の外から一階の隅の部屋にショートカットして医務室に飛び込んだ……
なっなんだい?
この部屋、寒いよ!
体感温度じゃなくて魂が凍え……
メイドが私を庇う様に、前に立ちふさがる!
馬鹿な、此処まで刺客が?
ヒョイと覗いて見ると
「くっシェフィールドと……
烈風のカリン殿かい?
2人共、殺気を抑えなよ。
ツアイツの体に悪いだろ」
烈風のカリン……
初めて会うが肖像画は見たし、冗談みたいな経歴も報告書で知っている。
ツアイツの戦闘の師匠であり、自己チューなババァだ。
容赦の無い殺気を漂わせている2人を窘める。
私だって相手を殺したいんだ……
ツアイツの容体を確認すれば、ベッドに横たわり半身に擦り傷や打撲痕が集中している。
何かに弾き飛ばされて、地面に擦り付けた様な傷だ。
水メイジが4人掛かりで治療をしている為か、寝ているツアイツの表情は穏やかだよ。
彼らは、2人が垂れ流す殺気にも怯む事なく治療に集中している。
額に汗を滲ませながら、両手を患部に当てて魔力を注ぎ込んでいる。
彼らの邪魔をしちゃ駄目だ……
邪魔者の2人を医務室から追い出そう。
「治療の邪魔だよ。
一旦外に出るよ」
2人を促し退出する。
幾らツアイツを害した奴らが憎いとは言え治療の邪魔はやり過ぎだよ、全く。
でも何故睨み合ってるんだろう?
「お前達、ツアイツに怪我を負わせたヤツはどうした?
捕まえたのかい?
まだなら何故こんな所でグズグズしてるんだい!
早く探しに……」
シェフィールドが黙って人差し指でカリンを示す。
まさかトリステイン王国のレコンキスタ派の跳ねっ返りが生き残っていて復讐を……
「この女がツアイツを吹き飛ばしたのよ。
私の大切な義弟に怪我を負わせたわね。
万死に値するわ」
「ふん!
家族の問題に口を挟まないで頂きたいわ。
義息子の浮気癖について少しお仕置きをしたのよ。
他人の貴女には関係ないのよ」
シェフィールドから表情が消えた!
ヤバい、ヤンデレじゃない本気で殺る目だ!
指さしていた掌を握り親指を突き立てて。
そのまま下に向けた。
「殺すよババァ!」
「返り討ちにしてあげるわ!」
シェフィールドが掌を横に振ると、外壁とともにカリンがぶっ飛んだ!
そのままシェフィールドが外に飛び出して行く。
浮気?
まだツアイツは未婚だし、第一夫人は地位・血筋・権力共に私だろう。
お前の娘の方が側室……
つまり私達からすれば浮気なんだよ!
それを私は受け入れるつもりなのに……
烈風のカリン!
胸も小っちゃいが度量も小っちゃいね。
「ふざけるな、ババァ!
シェフィールド、私が許す。
その勘違いババァをぶっ飛ばしな!」
此方をチラリと見たシェフィールドが、グッと拳を上げた!
ああ、新しいお母様は頼もしいね……
しかし、外壁が崩れる程の圧縮した暴風を喰らってもフライで浮いているあのババァ。
まるで堪えてない。
服に付いた埃を払ってやがる。
生きている内に伝説になるだけの事は有るね。
シェフィールドの追撃の竜巻がババァを襲う!
屋敷の城壁を吹き飛ばし、今度こそ有効打を与えたか?
てか、街にババァを吹き飛ばしたな!
「ばっ馬鹿がっ!
市街地に行くな、民衆にまで被害が……
だっ誰か居るかい!
避難勧告をだすんだよ」
これは戦後の協議は揉めるだろうね。
戦災より被害が大きくなりそうだよ……
SIDEシェフィールド
ツアイツが医務室に担ぎ込まれた!
あの烈風のババァが犯人ね。
ツアイツの容体を確認している時に、浮気癖だとかお仕置きだとか言っていたわ。
私の大切な弟に怪我を負わせた罪は重い。
しかし手持ちは風石と火石だけ……
それに牙ゴーレムか。
これは無意味だわ。
心細いけど、他の凶悪アイテムを取りに行く暇が無い。
今直ぐ殺りたいから!
と思っていたらイザベラが来たわね。
私達の殺気がツアイツに良くないと……
そうだったわ。
前もこの女の屋敷でツアイツは倒れた。
やはりこの女は始末しよう……
誰がツアイツを傷付けたって?
目の前のこの女よ。
「この女がツアイツを吹き飛ばしたのよ。
私の大切な義弟に怪我を負わせたわね。
万死に値するわ」
指差して教えてあげたわ……
「ふん!
家族の問題に口を挟まないで頂きたいわ。
義息子の浮気癖について少しお仕置きをしたのよ。
他人の貴女には関係ないのよ」
よし、殺るわ!
親指を突き立てた拳を下に向ける。
ツアイツの教えてくれた挑発的な仕草。
「殺すよババァ!」
何か騒いでいたババァに風石の力をピンポイントで解放する。
建物の外壁を突き破ってぶっ飛ばしてやったけど、直前に不自然な風の塊があの女の体を包んだ。
ダメージは殆ど無いわね。
追撃の為に接近する。
途中、イザベラがエールを贈ってくれたので応える。
私達の幸せの障害は、ここで潰す!
残りの風石を更に練り込んで解放、これは効いたみたいだ。
竜巻に巻き込まれ、ボロキレみたく体を揉みくちゃにしながら城壁に叩きつけてやったわ!
「よしっ!
息の根を止めてやるわ!」
更に追撃をする為に市街地に向かった。
SIDEイザベラ
「こっこんな化け物達が市街地に……
ヤバいよ、これは」
血の気が無くなるとはこの事か。
なっ何か私に出来る事は……
暫し呆然と超獣対決を見る。
「あっ!
シェフィールドが吹き飛ばされた。
あれだけダメージを与えたと思ったのに無傷?
なんてババァだ!」
これは止めないとサウスゴータが崩壊するぞ。
「いっイザベラ様!
これは一体?」
侍従のバリーと、近衛兵かね?
慌てて駆け付けて来たよ。
そして奴らの闘いをみて呆然としている……
「人災ですか……
しかし何故、あのお二方があの様な?」
「烈風のババァがツアイツに怪我を負わせたんだよ。
それに怒ったシェフィールドが闘いを挑んだ。
しかし規格外の連中なだけにあの騒ぎさ……
黙って見ていても終わらない。
バリー、演説で使った拡声の魔法を準備しな!
私が止めるよ」
もはやトリステイン軍でもアルビオン軍でも止められないだろう。
ツアイツの男の浪漫本に有った
「エヴァさん・ハルケギニア版」
アレの人型最終決戦兵器だよ……
暫くしてテラスに拡声器の準備が出来たので、超獣2人に向けて勧告する。
「止めないか、お前達!
シェフィールド、もう十分だよ。
烈風のカリン!
これ以上の抵抗は、ガリアとトリステインの全面戦争に発展するよ。
良いんだな?
此方は開戦に躊躇しないよ!
嫌なら双方手を引きな!」
何故かサウスゴータ市民達や兵士達から拍手が沸き起こった!
救世主?魔獸使い?
嫌だよ、そんな称号は!
ツンデレアイドルだけで十分さ。