挿話32話お留守番タバサさん
イザベラ執務室
最近政務を手伝わされる関係か、割と馴染んだ部屋……
普段イザベラが座っている執務用の机に座っている。
私は彼女の身代わり。
フェイスチェンジで顔も変えて、胸にはタオルを巻いて誤魔化している。
背は変えられないから、誰か来ても椅子に座って立たない。
ツルペタでストンだが、悔しくはない。
デカくなるとイザベラに纏わり付いている変態に興味を持たれるから。
まだツルペタ好きの変態の方が数が少なくて安心の筈だ。
イザベラ、無事だろうか?
いずれミスタ・ツアイツとアルビオン王国に同行した事は公表するつもりだが、現段階ではバレない様にと身代わりを頼まれた。
報酬はお母様の治療……
それはミスタ・ツアイツが見付けたそうだ。
彼って何者なんだろう?
他国の貴族を洗脳しまくり、何がしたいのかと思えば趣味の友達を増やしてる?
ハルケギニア中の変態の大本締めになりたいの?
考えていても、手はペンを握り紙に何かを書いていた。
変態、怖い
ワルド様はロリコン
友達も怖い
色キチガイだ
イザベラは好き
竜騎士団も変態
お母様と変態達が誰も知らない所へ行きたい
何を書いているの?
深層心理か願望か……
紙の無駄遣いをしてしまった。
クシャクシャと丸めてゴミ箱へ投げる!
机の上は、整理整頓がなされている。
決裁の済んだ書類は全て右のカゴの中に……
これを定期的に何回かに分けて回せば、いかにもイザベラが政務をこなしている様に見えるだろう。
王宮及び国内の男の浪漫本ファンクラブの連中は、カステルモール団長の仕掛けた
「イザベラ祭り」
で蜂の巣を突っついたみたいに盛り上がっている。
だから執務室に籠もっている風にしている。
カステルモール団長は
「これもツアイツ殿をガリアに迎え入れる準備だなのだよ諸君!」
とかファンクラブの変態を前に演説してた……
既にガリア全土に、変態が溢れ出し始めた。
首を振って怖い想像を消して、周りを見る。
生真面目で几帳面な従姉姫の性格を表してか……
壁には絵画等も掛かっていないし置物も無い。
普通は高価な調度品を並べ、貴族の格を表すものだが何も無い。
視線を隣に続く扉にやると……
「イザベラファンクラブ本部」
「……見なかった事にする」
あの変態達の詰め所?
イザベラ、すっかりガリアの変態達のトップだ。
部屋の中には人の気配がするのは……
「……居るの?」
思わず呟いてしまった。
「「「はっ!待機しております。
何かご用命でしょうか?」」」
あの、竜騎士団の面々。
クーデレとかロリッ子とか不思議な言葉で、ミスタ・ツアイツに洗脳された連中……
ツンデレもえー?
とか言っていた連中は、全てイザベラに付いて行った。
「……何でもない」
そう言うと、あの妖しい部屋の中に戻って行った。
彼らも私が替え玉と知っていてフォローしてくれるらしいが……
正直、怖くていやだ。
「シャルロット様、実はあの連中に興味が有るんですか?」
「シャルロットお姉ちゃんも、ツアイツお兄ちゃんにフィギュア作って貰いなよ。
エルザも固定ファンが出来たんだよ」
イザベラが補佐として付けてくれた、北花壇騎士団の同僚……
元素の兄弟の一員、ジャネット。
白黒の派手な服、快楽主義の変態。
そしてカステルモール団長が、独りでお留守番出来ないから。
そう言って置いていった幼女。
皮膚が弱いとミスタ・ツアイツが全身スーツをプレゼントした。
着ぐるみウサギ……
「……かわいい」
膝に乗せてナデナデする。
変態に囲われた私の最後の癒やし……
「エルザ、フィギュアってなに?」
気になる単語が有ったので質問する。
確か私の安全の為にイザベラを売ったのもフィギュアだったはずだ。
まさか、こんな幼子のフィギュアまで?
エルザはお腹のポケットからビスケットを取り出し頬張りながら
「前にツアイツお兄ちゃんをガリアに拉致った時、移動中に暇だからってエルザのフィギュアを作ってくれたの!
ツアイツお兄ちゃんたら、エッチだからエルザに恥ずかしいポーズとかさせるんだよ。
でも大きなお友達は喜んでくれるんだって!
毎月売上の一割が貰えるから、エルザお金持ちなんだ」
大きなお友達?
エッチなポーズ?
お金持ち?
ミスタ・ツアイツは一体この子に何を?
「いーなーエルザちゃん!
私もフィギュア作って欲しいな。
で、毎月幾ら位貰えてるの?
ねえねえ?
お姉ちゃんに教えて!」
ミス・ジャネットのあからさまな質問に、エルザは両手の指を折ながら考えてる。
指で数えられる位って!
まさかピンハネされてる?
「んーとね。
5タイプあるんだ。
スク水・ブルマ・ゴスロリ・ワンピ・それにボンテージ!
一体が7エキューで月産が各50体で合計250体。
毎月完売で予約分を捌けないって言ってた。
だからエルザのおこずかいは175エキュー!
凄いでしょ?」
毎月平民の一年分以上のおこずかい?
「凄いじゃん!
エルザちゃんお金持ちなんだ!」
膝の上で可愛く
「えへへへ!」
とか笑ってるけど、これは大問題。
「旦那の稼ぎも凄いけど、将来は安泰だね。
いーなー、私の妾入りはイザベラ様が許可しないだろうし……
シャルロット様からも頼んで下さい」
「……何をどっちに?」
この女、ミスタ・ツアイツの妾になりたいの?
「勿論、フィギュアの件ですよ!
妾の件は相談するより既成事実っしょ!
ツアイツ様って女性のお願いには弱そうよ。
ああ、世界を手に入れかけている男って良いわぁ……
絶対退屈しないし!」
「そう、ガリア王になるから?」
イザベラと結婚すれば、いずれ大国ガリアの王。
世界に一番近い位置……
「違いますよ!
男の浪漫本ファンクラブが、ツアイツ様の教団の信者達が……
ブリミル教に取って代わるんですよ!
腐れ神官共を粛正です」
楽しそうだよねー?
とかエルザちゃんと笑ってるけど……
ブリミル教を駆逐?
アレも嫌いだけど、あの変態達が正当化される教団が世界を掴む?
「ミスタ・ツアイツ……
世界を変態に染める?
でも、お母様の為に我慢する」
お母様さえ治してくれるなら、ハルケギニアが変態の巣窟になっても良い。
何かを得る為には、何かを失う覚悟が必要。
それが変態帝国の設立でも構わない。
基本的に変態でも、女性に優しいし紳士的では有る。
平民にも人気が高いし、見てるだけなら危険は無い。
何よりお母様の為だから……