幸せワルド計画最終章挿話35・第三部
ワルド&ダッシュ、本日の成果発表会。
ハーナウ家の屋敷で我等にあてがわれた一室だ。
2人で使用する為に共用の居間に別々のベッドルームが2つ。
調度品も高価そうな物が置いてある。
ハーナウ家はツアイツ殿の男の浪漫本及びフィギュアの販売を初めてから、更に羽振りが良い。
普通の貴族よりも無駄使いをしないが、家格を誇示する為の出費なのだろう。
家族の私室はシンプルだが、対外的な部分には金を掛けている。
もっとも価値有る美術品で有り、無駄に成金趣味でないところが凄い。
芸術とは程遠い私でも素晴らしいと思う物だが、逆に気を使う。
こんな物より
「サムエル愛の資料館」のフィギュアの方が素晴らしいと思うが……
中々のゲストルームだろう。
担当メイドもサムエル殿付きのチッパイメイドだ!
流石は師匠は分かっていらっしゃる。
さて恒例の討論会をする。
日々の結果を話し合い対策を練る。
効果はバツグンだ!
「ダッシュよ、遂にジョゼットから抱き付いてくれたのだ!
背中に全神経を集中し、膨らみかけの胸を堪能した……
ぐふふふっ」
思わず至福の時を思い出してしまう。
「良く分からんが……
どう言うシュチュだったのだ?
背中にって事は正面からではないのだろ?」
なる程、説明不足か……
ならばと詳細の説明をする。
ダッシュ難しい顔。
「なぁ本体……
男の子(だけ)が懐いてくれた時に飛び込んで来たのだろ?
その時は父親の様に慕う男の子(だけ)が居た訳だ……
それって父親(の様に慕う男)を取られたくない嫉妬心じゃないか?」
呆れ顔のダッシュ……
「まさか……」
「だが、幼子の様に頭を撫でたら目を細めて喜んだのだろ?
どうみても親子だ……
多分、孤児達を親身に面倒を見ている事に自分の父親(の様に慕う男)が取られるのが嫌だったみたいな?」
おいおい……
マジですか?
「しかし女の子の最初の恋人は父親だと言うし……
お父様みたいな恋人が良いとか……」
なんだ?
その哀れみの籠もった目は……
「父親みたいで、父親ではないのだよ……
どうする?
この人と付き合っていますとか言われたら?
幸いな事にツアイツ殿への憧れは潰しておいた。
テファと言う婚約者が居るのにマチルダにも手を出した。
しかも愛人として囲った訳だからな。
その事実を知ったジョゼットはショックを受けていたがな。
まぁあれだけの大貴族だからハーレムは当たり前なんだよ!
そう言っておいた。
ツアイツ殿もペタンコは守備範囲外だし問題も無いだろう。
逆に喜ばれると思うぞ。
危険なフラグを折ったのだから……
でだ!
彼女の周りに男は本体だけの状況なのだ。
気張らんか!」
ぬう……
「ではどうする?
このままでは駄目なのは分かったが……
異性として意識させる。
これは難問だぞ」
「我に秘策有り!」
ニヤリと笑うダッシュは頼りがいが有るな……
SIDEダッシュ
本当に情けない本体だ。
しかし我ら遍在魔法が生み出した仮初めの存在たる私とサード(トリステイン在住の政務担当遍在)に人格と個性を与え、あまつさえ維持してくれている事には、本当に感謝している。
ツアイツ殿も、他の皆も私達を受け入れて一個人として接してくれる。
こんなに嬉しい事は無い……
本体の情けない部分は、我らを生み出したお陰で能力を吸い取られたのでは?
そう思う時も有る。
しかしロリが絡まねば有能なのだ!
どうするか?
我に秘策有り!
大見得を切ったが、実は何も考えがないのだ。
困ったな、相談するか……
しかし恋愛事で相談出来る相手など、誰が居る?
マチルダ、は無理だ。
襲って、逆に襲われた位だからな。
メイドズ、は微妙だ。
アデーレ様……
そうだ!
サムエル殿よりも強い彼女なら良い知恵を授けてくれるだろう。
これは腹を割って相談するしか有るまい!
※人それを問題丸投げと言います。
アデーレ様に会いに行く……
ちょうど庭の東屋でお茶をしている彼女を発見!
エーファ殿も一緒か……
彼女はしっかり者だし一緒に相談にのってもらおうか。
「アデーレ様……
実は相談が有りまして」
彼女の向かいの席に座る。
すかさず、エーファ殿が紅茶を淹れてくれた……
「何でしょう?」
にこやかに微笑むか彼女は、二十代前半……
いや未だ十代でも通じる容姿、まさに永遠のロリータさんだ。
「実は本体とジョゼット殿の事です。
本体はジョゼット殿の事を本気で想っていますが……
あの様な性格ですし、押しも弱い。
何とかアデーレ様の力添えを……」
そう言って頭を下げる。
「あらあら……
ワルド様が、ですか?
なる程、あの人と話が合うだけは有りますね。
本当に好みがそっくり」
ああ、これがハーナウ家最強たる彼女の力か……
何というプレッシャー!
「あっ……いや、その……
悪い意味では無く、純粋な気持ちで想っていますので……」
プレッシャーが収まった。
「ジョゼットはツアイツが連れてきた娘。
本来ならツアイツの嫁にとも思っていたのですが……
どうやら息子も、その様なつもりは無さそうですね」
彼女はジョゼットの秘密を知っている。
前に本体とツアイツ殿と共に洗いざらい吐かされたのだ。
ガリア王家の血を引く、火種を抱えた少女の事を……
「そうです。
ツアイツ殿とは好みが合わない。
好みが合うのはサムエル殿か本体……
しかし彼女は問題を抱えている。
並みの漢では、彼女を守れないのも事実。
それを含めても相手は本体をおいて居ないはず。
幸いにしてジョゼット殿も本体を悪くは思っていない……
保護者的な愛情を抱いていそうなので、そこをアデーレ様のお力で何とか……」
何とか男女の恋愛感情まで昇華させて欲しい。
もはや土下座でもする勢いで頭を下げる。
「ジョゼットは良い娘ですよ。
私も彼女に幸せになって欲しい。
ツアイツは、あの娘の本当の母親を治療するそうですが……
一度捨てた娘。
しかも片割れは手元に残している。
事情が有れども、その様な母親にあの娘を渡すのは忍びないと思っていました……
分かりました。
あの娘は、私の養女とします」
何か真剣な顔で、とんでもない事を言われた!
ジョゼットが養女?
では本体はハーナウ家と親戚になるのか?
「……それと、先ほどの件と繋がりが有るのですか?」
アデーレ様の真意が分からない……