第187話
カトレア様の私室に皆で移動する。
彼女の甘い匂いが籠もって……
なくてケモノ臭がします。
毎回思うのだが……
この動物達も毎回移動しているのかな、カトレア様と一緒に?
前に見た子熊が少し成長していた。
扉を開けて入った時に、僕を見付けて。
ガゥっと鳴いて嬉しそうに近寄ってくれたが、シェフィールドさんを確認すると……
すまなそうな顔をして、脇を走り抜けて行ったよ。
僕は抱き上げようと手を広げていたのだが……
そこにチョンとウサギ達が飛び乗る!
干支だから?
シェフィールドさんは先程から、微ヤンデレ化している。
室内の動物達に緊張が走っている。
何故か救いを求める目で見詰められた……
「ちっ治療には動物達は……
ルイズ、動物達を連れて庭で遊んであげて。
さぁさぁこのお姉ちゃんが外に連れて行ってくれるからね」
そう言うと、大人しく動物達が扉から出て行く。
猫・犬・狐・子馬・鳥各種……
僕を見詰めて頭を下げたり舐めたりスリスリしたり……
全部が部屋を出てから両腕に抱えたウサギをルイズに渡す。
「避難誘導よろしくね」
と言ってルイズの背中を軽く押す。
ルイズは嫌々出て行ったが、動物達からは感謝の気持ちがヒシヒシと伝わってきた。
もしかしてカトアレさん、全員(匹?)と使い魔契約してないかな?
妙に僕とも意志疎通が出来るんだけど……
「さて、お姉ちゃん治療お願いね」
カトレア様をベッドに腰掛けさせてから、治療の開始をお願いする。
「いいわ。
今回は、指輪の力で貴女の体を調べて悪い所を探します。
そしてその部分を再生……
作り替えるわ。
これは痛みが発生する。
耐えなさい」
精神操作と違い肉体の治療には、ラウラさんの時みたいに痛みを感じるのか!
カトレア様に耐えられるのか?
「お姉ちゃん、カトレア様に耐えられるの?
ラウラさんの時は、彼女は元軍人だったから……
耐性が強かったんだよ」
思わず聞いてしまう。
「ツアイツ、他の女にも優しいわね……
多少の苦痛は和らげられる。
しかし肉体再生なんて何が影響するか分からないから……
生きたいのなら、耐えなさい」
カトレア様が僕の手を握り締めて
「お姉さん耐えるから大丈夫よ。
有難う、心配してくれて……」
ニッコリと微笑んでくれました。
「では精神集中の邪魔にならないように僕らは出ましょう」
ヴァリエール夫妻やエレオノール様に外へ出る様に促す。
アンドバリの指輪を見咎められても困るし……
カリーヌ様の威圧感もハンパないから。
シェフィールドさんの集中の妨げにならない様に……
「ツアイツは残って……
他の人は出て行ってくれないかしら。
精神集中の邪魔よ」
カリーヌ様が何かを言い掛けたが、治療の邪魔なら仕方ないと出て行く。
何回か深呼吸をしてからシェフィールドさんが治療を開始する。
前回と同様に両手に一つずつの指輪を嵌めてカトレア様の頬にそえる……
「始めるわ」
両方の指輪が淡い光を放つ……
今回は長い。
もう15分以上は経ったかな。
「見付けた!
これね……
では再生を開始するわ」
シェフィールドさん精神力の高まりを感じる。
同様にカトレア様の表情に陰りが……
何かを耐えている様だ。
しかし不用意に言葉を掛けるのは危険だから。
じっと2人を見守る。
「くっ……つう……
あ……あっ……」
苦痛なのか呻きをあげまじめた。
「もう少しよ。
我慢なさい、治療は上手くいっているわ」
シェフィールドさが励ましの言葉を掛ける。
しかし……
美女が呻いているのって、何かエッチィです。
病みつきになりそうな高揚感が……
邪な瞳で彼女らを見詰める!
「うっ……くぅ……
あっ……あん……あぅ……」
うっすらと汗をかいて苦痛に耐えるカトレア様。
僕の中の何かが覚醒した感じがする!
「あっ……あっ、あーっ」
一際大きな声で喘いでからカトレア様がベッドに倒れ伏す。
同時に指輪2つも砕け散った!
「お姉ちゃん、どうだったの?」
此方も荒い息をしている……
「成功よ。
もう問題無い筈……
しかし、流石に疲れたわね」
シェフィールドさんは何かをやり遂げた爽やかな笑顔だ。
「ツアイツ、お姉さん達を食い入る様に見てたわね?
イケない弟くんね」
気怠そうにベッドから起き上がり、色っぽく
「ダメでしょ、メッ!」
的な雰囲気を醸し出すカトレア様。
辛かった筈なのに、観察されていたのか?
「いえ、そんな事は……
皆さんを呼びましょう」
そう言って、そそくさと部屋を出る。
やはりカトレア様は苦手だ……
僕が皆さんが待つ応接室に行って治療が無事に済んだ事を伝えると、ヴァリエール夫妻達が、カトレア様の私室に走っていった……
暫くは家族でカトレア様の病気が治った事を喜んでもらおう!
彼らと入れ違いで部屋を出たシェフィールドさんが応接室に入って来た……
「お姉ちゃん、お疲れ様……
今回の治療は大分掛かったね。
大丈夫?」
ぐったりとソファーに座るシェフィールドさんを気遣う。
彼女は深くソファーに座り背中を仰け反らせながら伸びをした……
体を解しているのかな?
「ツアイツ、大丈夫よ。
でも流石に人体の一部を再生するのは疲れるわ……
でも、2つの指輪の制御には大分馴れたわ。
これならジョゼフ様の記憶操作もバッチリよ。
「主と使い魔、愛の記録」
何巻までインストール出来るかしら?
うふふふふ……」
そう言って、シェフィールドさんは微ヤンデレ化し始めた。
ジョゼフ王とのストロベリる記憶に思いを馳せているんだろうな……
ジョゼフ王の言った、シェフィールドさんの思いの行方は4:6で僕にも向けられているって言ったけど……
どうみても貴方の方だけだと思います。
少なくても2:8位ですよ。
思わずガリアの方向に向けて手を合わせ心の中で祈ってしまった。
「ジョゼフ王よ、ご愁傷様です。
そして僕の幸せと安寧の礎(いしずえ)となって下さい。
貴方の尊い犠牲は忘れません……」
僕はガリアに、ジョゼフ王の治療に立ち会う前に修羅場が待っている。
ルイズ、キュルケ……
そしてモンモランシーにイザベラ様の事を説明し、対ロマリアに向けてガリアの魔法学院に転入する事を……
彼女達への待遇。
出来れば一緒に来て欲しい事をハッキリと伝えなければ……
レコンキスタなんかより、こっちの方が難解だよね!