第188話
応接室で、微ヤンデレ化したシェフィールドさんと向かい合わせに座っています。
彼女はクネクネと不思議な動きをしています。
多分妄想中なんだろう……
僕の方はハーレム宣言をビシッとルイズ達に説明する為に……
その説得方法を考えています。
頭を抱えて悩む僕と薔薇色の甘ったるい妄想に浸る彼女……
ワルド殿は微ヤンデレ化が始まって直ぐに部屋を出てしまった……
窓の外を見れば、動物達と戯れていますね。
現実逃避か?
ワルド殿と動物達って似合わないです。
いや本当に……
でもワルド殿にとって、ヴァリエール一族は微妙に苦手意識が有るのかな。
口約束とは言え、一度はルイズと婚約をしていた様な感じがしていたのに、有耶無耶で破棄になったし……
いや婚約者だったっけ?
僕のルイズに醜い肉塊がぁ!
とか最初の頃は叫んでいたから、多分そうなんだろう。
でも領地経営ではヴァリエール公爵と手を結んでいるのだから、まだ縁は深い筈だ。
等と考えていたら、カトレア様を伴って皆さんが応接室にやってきました……
微ヤンデレ化、トリップ中のシェフィールドさんの肩を揺すって現実世界に呼び戻す!
「お姉ちゃん、戻って来て!
ヴァリエール夫妻が来たよ。
早く、お願いだから……」
「嗚呼、ジョゼフ様そんな……
まだ昼間ですよ。
えっ義理弟も一緒?
嫌ですわ、ジョゼフ様も好き者ですわね!
体が保ちませんわ……」
とか妖しい台詞を呟いていたシェフィールドさんを強引に覚醒させる。
因みにヤンデレ化の時は、お姉ちゃんと呼ぶと此方に意識を向けてもらい易いのです。
黒目がだんだんと正常に戻って来た。
もう平気かな?
「こほん……
カトレア様、快癒おめでとう御座います。
それで体に違和感などは有りませんか?」
シェフィールドさんの痴態を取り繕う様に話題を振る……
ヴァリエール夫妻達は、何か見てはいけない物から顔を背けるような態度だったが
「先ずはお礼を言わせて頂こう。
シェフィールド殿、感謝する。
娘の、カトレアの病気は完全に治ったようだ。
お抱えの水メイジにも様態を確認させた。
問題は無いそうだ……
最も彼には何故、治せたのかは解らないらしいな。
流石はツアイツ殿。
君が居なければカトレアは後何年も生きられなかっただろう……
有難う。
1人の親として、本当に感謝している」
そう言って夫人と共に頭を下げてくれた。
「ツアイツ君、有難う。
私、何か生まれ変わった感じがするわ。
シェフィールドさんも感謝していますわ」
カトレア様はポワポワ具合が強くなったみたいだ。
「ツアイツ、ちい姉様を治してくれて有難う。
もう平気なのよね?」
ルイズが抱き付いてきた……
最近スキンシップが少なかったせいかな?
良く抱き付いてくるよね。
見上げれば、エレオノール様はハンカチで目頭を押さえている……
鬼の目にも涙?
いえいえ、麗しい姉妹愛ですよね。
「その指輪を調べられないのが残念だわ。
きっとどんな病気も治せるわよ!
んー勿体無いわね。
本当に駄目なの?」
研究者の血が騒ぐのだろうか?
上目使いでお願いしてくるし、両手をワキワキと動かして残念さもアピールしてくる……
「指輪の件は本当に秘密でお願いします。
結構危ない橋を渡ってますからバレると大変なのです……」
そう言って頭を下げる。
ジョゼフ王を治したら、水の精霊に返さなくてはならない。
ド・モンモランシ家との盟約の件も有るし、水の精霊は僕の命尽きるまで待つとは言ったが、早く返した方が良い。
勿論、保管には今後気を付ける様に提案して……
「じゃもう用は済んだわね?
ツアイツ、さっさとガリアに帰りましょう!
早くジョゼフ様に……」
早くジョゼフ王とストロベリる関係になりたいお姉ちゃんが急かせてくる。
もう此処に居る必要も無いと言わんばかりだ!
「お姉ちゃんごめん。
もう少し待ってくれる?
キュルケやモンモランシーも来るんだ。
彼女達と話が有るから、それが終わったらで……」
シェフィールドさんは一瞬嫌な顔をしたが
「ああ、そうね……
早く女関係を清算して帰りましょうね」
清算じゃないです!
「いや清算じゃないですよ。
丁度良い機会ですし、ヴァリエール夫妻にもお話が有ります。
僕は夏休みが明けたら……
ガリアの魔法学院に転入するつもりです。
今回の件で、ロマリアとの……
教皇ヴィットーリォとの関係は最悪でしょう。
ブリミル教に対抗出来る、教祖とアイドル。
ここトリステイン魔法学院では対応が悪い。
なのでイザベラ様と手を組みロマリアと敵対します。
勿論、負けるつもりは欠片も有りません。
勝つ為にです。
出来ればルイズもガリアに付いて来て欲しい」
対ロマリア戦!
十年計画だが、早めに行動した方が良いだろう。
「お父様、お母様。
私はツアイツと一緒に行くわ。
良いでしょ?
イザベラ姫に負けるつもりは欠片も無いのよ」
カリーヌ様が思わず席を立ち上がったが、こちらも正面にシェフィールドさんが立ち上がる。
「あら、サウスゴータの再戦をする気かしら?
ツアイツを私達から奪ってガリアで囲うつもりかしら?
この子は私の愛弟子で義理の息子!
只では渡さないわ」
能面の様なカリーヌ様……
言っている事は大変嬉しいのですが、取る取らないの話ではないn
「あら?
前回はあのまま戦えば私が勝っていたのに……
今日はそのつもりで来てるのよ此方も。
大量の高純度火石で、この領地ごと焼き尽くしてくれるわ!」
うわぁー、お姉ちゃん本気モードだ!
「「戯れ言は勝ってから言いなさい!」」
神の頭脳VS烈風セカンドステージは要らないんです!
「お姉ちゃん、嫌いになるよ……
今日は治療だけだって言ったよね?
僕に嘘をついたの?」
この一言は両刃の剣だ!
これで止めてくれれば嬉しいが、僕への依存度が高まってしまう危険な一言……
「じょ冗談よ、ツアイツ。
お姉ちゃん本気じゃないわ!
このオバサンが常識知らずだから……
つい口が滑っただけ。
だから嫌いにならないで」
カリーヌ様をそっちのけで僕に縋ってくる。
ああ、ヤンデレさんに突き放す系は駄目だ!
分かっていたけど……
「うん。
信じてたよ、お姉ちゃん。
カリーヌ様も本気じゃないですよね?
ヴァリエール領が更地になる所ですよ、本気で言っていたら?」
カリーヌ様も少し冷静になったみたいだが、額に井形を浮かべている。
オバサン発言か?
「ガリアに行くと行っても今までと変わりません。
元々ゲルマニアから通っていたではないですか。
だから、お願いします」
そう言って、人外頂上決戦を回避しルイズをガリアに連れて行く事を承諾させた。
気になったのは、エレオノール様とカトレア様が抱き合いながら此方を見て、クスクス笑っていた事。
物凄く気になりました……