第190話
ルイズに対ロマリア方針を語っている時に、キュルケとモンモランシーが来ました。
何故一緒なのかな?
「ツアイツ、お父様がアルビオンから戻って来てお話を聞いたわ。
イザベラ姫の件もね……」
「ツアイツ、キュルケから詳細も聞いたわ。
色々とね……」
どうにもご立腹感が漂っています。
取り敢えず2人をソファーに座らせ、お茶を飲ませて落ち着かせる。
ヴァリエール邸のメイドさんは全員顔見知りだ。
苦笑を噛み締めながらお茶の用意をしてくれています。
浮気の言い訳をする夫の様な物だと思ってますね?
去り際に「頑張って下さいませ」とか言われたし……
僕も一息つきたかったから黙って紅茶を飲む。
そして上目使いに紅茶を飲む彼女達を観察する。
僕の隣にはルイズ、向かいにはキュルケとモンモランシー……
2人は重装備、つまり正装をしている!
目を伏せて優雅にお茶を飲む姿は一端のレディだ。
「えーっと……
きょ今日は2人共、気合いの入った服装だね。
何処かに寄った後かな?
良く似合ってるよ」
はははははっと誉めてみるが
「「そうね。
誰かさんに、私達の魅力を再認識させたかったからね。
頑張って着飾ったわ」」
と切り替えされた!
「そっそうなんだ!
2人共魅力的だよ、とっても。
勿論ルイズもだよ」
キュルケはチャイナ風なタイトなドレスで髪をアップさせている。
モンモランシーも普段のふりふりドレスではなく、ボディラインを強調するドレスを着ている。
装飾品も見た目で分かる高価さだ……
誤魔化しは不要だろう。
因みにルイズは自宅の為にシンプルなドレスだ。
学院の格好は外ではしない……
皆さんメイジの証のマントは羽織ってるけどね。
お茶を飲んで落ち着いたので、本題に入る。
ロマリアの件は2人にも改めて説明が必要だが、今は後回しだ。
「ちょうど3人揃ったから言っておくね。
僕は夏休み明けに、ガリアの魔法学院に転入する。
これは対ロマリアの、教皇ヴィットーリオ対策でも有るんだ。
僕は僕達の幸せの為にも、教皇と対立する。
自業自得感も有るけど今更だ。
君達にも一緒にガリアに来て欲しいんだ」
「勿論そのつもりよ。
お父様も許可してくれたわ。
夏休み中にアルブレヒト閣下にもお伺いをたてるって。
閣下もアルビオン王国との国交が円滑化した功績。
先のレコンキスタ反乱鎮圧の功績が有るから問題無いだろうって。
ガリアからの外交圧力も有るんでしょ?」
はい、正しく状況を理解していますキュルケさん!
「そうだね。
僕がガリア入りの件も合わせて、イザベラ姫が交渉を開始したから。
問題無いだろうね」
ハルケギニアを二分する勢力で有るガリアとゲルマニア。
しかし内情は、どちらも国内に不安が有る。
だから早期に手を結べるメリットはデカい。
何たって、対外的に二大勢力が手を結ぶんだ。
不満分子だって躊躇する。
反乱を企てても、外交が安定してれば国内だけに力を入れられるし相手側の国からの援助も見込める。
じっくりとゲルマニア内を安定させたいアルブレヒト閣下なら、この話は悪くはないだろう。
「私は……
一緒に行きたいけど、お父様が反対するかも。
家出同然に付いて行きたいけど、私は水の精霊との交渉役だし」
モンモランシーには問題が多い。
彼女は自分だけ取り残されそうな不安を感じているんだろうな。
「モンモランシー……
アンドバリの指輪、確保したよ。
最も最終的に手に入れたのはシェフィールドさんだけど、譲ってくれるそうだ。
その功績でモンモランシー伯爵にお願いしよう。
トリステイン王国に対してはどうするかな?
これは少し考えないと駄目だね……
んーアンリエッタ姫に貸しを作るのは危険な気がするから」
モンモランシーは目をウルウルとさせている。
「それなら平気よ。
ガリアからアンドバリの指輪を譲って貰う条件に、私のガリア入りを入れて貰えれば!
水の精霊と恒久的な交渉を結べるなら安い条件だわ!」
んーイマイチだろう。
「その条件は無理かな?
現在の交渉役のモンモランシーを国外に出すのには躊躇するよ。
もう少し考えよう。
大丈夫、何とかするさ!」
これで婚約者達のガリア同行は何とかなる。
トリステイン王国の件は、モンモランシーには言わないがカリーヌ様がイザベラ姫及びシェフィールドさんに危害を加えようとした事をボカして交渉するかな。
アルビオンでもイザベラ姫は公式にアンリエッタ姫に抗議したんだ。
アンリエッタ姫自体は、トンチンカンな対応で煙に巻いたつもりでも周りの重鎮達は知っている。
これを蒸し返されたくないだろう!
って匂わせれば問題無いと思う。
ヴァリエール公爵にお咎めを……
って言っても、誰が彼を責められるのか?
ヴァリエール公爵は、ド・モンモランシ伯爵、グラモン元帥ら有力貴族と手を組んでいる。
ド・ゼッサール及びワルド隊長もこちら側。
魔法衛士隊の内2つが味方なんだよ。
王宮で彼らに楯突く連中はいないからこれも有耶無耶だろう!
てか、時間を掛ければヴァリエール王朝が興せそうだよ?
アンリエッタ姫はポヤポヤだから、必ず失策する。
今までフォローしていた面々は全てこちら側だ。
うわぁ……
僕の目的とアンリエッタ姫の恋愛成就の為に謀を行ったけど、蓋を開ければ彼女の失脚の段取りでも有るよ。
これはヴァリエール公爵次第だな。
「どうしたの?
難しい顔して……
やっぱり私がガリアへ行くのは難しいかな」
しまった!
モンモランシーがションボリとしてしまった。
「大丈夫。
考え事は、アンリエッタ姫の未来の方だよ。
あの姫様……
しっかりしないと失脚するぞ!
ガリアとアルビオン、ゲルマニアは手を組む。
でもトリステインはどうするかな?
対応を間違えば、国は傾くだろう……
彼女が今度失敗したら、誰がフォローする?
自分の欲望追求に正直な姫様だけど、今度はそれじゃ駄目だ。
外交センス有るのかな?」
皆が顔を見回す。
キュルケは苦笑いだが、ルイズとモンモランシーは不安顔だ……
自分達の国の行く末の見通しが怪しいから。
本当にトリステイン王国の行く末は……
怪しいぞ!