挿話40・三人娘の暴走!人気者は誰かしら?
夏休み。
両親がアルビオン王国へ、王党派の増援に行ってしまい留守番を強いられたルイズ……
カリーヌから安全の為に外出禁止を言い渡されていたが、出掛けられないなら呼べば良いじゃない。
「肉まん無いの?
じゃピザまんで!」
又は
「パンが無いの?
ならケーキを食べれば良いじゃない!」
くらいのノリで考え付いた。
良いアイデアと思ってモンモランシーとキュルケに手紙を出した。
暇だからウチに遊びに来ないかと……
これが大正解!
レコンキスタを討伐しカトレアの治療をしに来たツアイツに、久し振りに皆が会えた。
その場でレコンキスタは前座。
真の敵はロマリアの教皇と、その神官達だと教えられる。
彼らに対抗する為に、夏休みが明けたらガリアの魔法学院に転入する事になったと……
当然ルイズはツアイツに同行すると言い出し、事前に情報を掴んでいたキュルケは実家とも話をつけていた。
唯一、モンモランシーだけが水の精霊との交渉役という大役を担っていた為に問題が有りそうだったが、何とかなりそうだ……
ヴァリエール家のベランダでお茶を楽しむ三人。
久し振りに友人達と話の花が咲く……
しかし話題は自分達の婚約者の事。
ツアイツ達は既にガリアへと向かった。
ツアイツが居なくなったので、正装を脱いで幾分楽な服装に着替えている。
「イサベラ姫に良い所取られちゃったね?」
幾分悔しそうな顔のルイズ。
如何に公爵令嬢でも一国の王女には対抗出来ない。
「私は元々三番目だったし、正妻は諦めていたから構わないけどね」
モンモランシーはルイズとキュルケに割り込んで来た関係上、正妻は諦めていた。
それに貴族として格下か同列なら業腹だが、王女じゃ仕方ないかと……
「確かにね。
私達が束になっても勝てないでしょうね。
権力・財力・地位……
どれをとっても無理だわ」
改めて現状を確認し考え込む三人……
新しい恋敵は強力だ!
「でもさ……
それ以上に厄介なのが、ファンクラブよね」
その言葉で想い浮かべるのは、黒マント集団と原色のオタファン。
既にイサベラ姫の人気はガリアで収まり切らず国外にも信者が溢れている……
「私のね、腹違いの姉様達もファンクラブが凄いの。
国内外から贈り物や結婚の申し込みが有るのよ」
何と言うフィギュア効果!
「…………私達もさ。
ツアイツに頼んでみる?」
あの恥ずかしい人形が出回り、大きなお友達が量産されるのは女として考える事が多いだろう。
しかしメリットもデカい。
このままイサベラ姫と、まだ会った事が無いテファと言う神胸の娘だけが独占するのは……
「それに原型師はツアイツのみ。
つまり完成品は別として、生身の恥ずかしいポーズや衣装を見せるのはツアイツだけ……
刺激的な衣装で二人きり……
うふふっ、良くない?」
三人の目線が絡み合う。
「「「やりましょう!」」」
ガッチリと手を握りあう。
「でも衣装はどうするの?
ちょっと考え付かないわ」
「そうよね……
今まではツアイツが用意していたと思うの。
つまり……」
「「「男の浪漫本ね!」」」
ルイズが突然立ち上がる。
「お父様の書斎に沢山あるわよ。
アレを見て私達の特徴に似合う衣装の挿し絵を探しましょう。
見付けたら出入りの服屋で仕立てさせるの。
出来た衣装を着てツアイツにお願いしましょう!」
善は急げと、ヴァリエール公爵の秘蔵書庫に乱入!
秘蔵の棚を強引に開ける……
有るわ有るわ、山のように男の浪漫本が。
試しに一冊手に取って読んでみる……
「うわっ!
こっこんなにエッチなの?
前にツアイツの屋敷に遊びに行った時に見付けたヤツと全然違うわよ。
うわぁ……
これは熱狂的な支持を受けるわよね」
前に探した時は、本はエーファ達が、原典(18禁)を隠し写本(15禁)しか手に入れられなかった。
しかし、ヴァリエール公爵の秘蔵本はツアイツより贈られた総てのタイトルが並んでいる。
異変を察知してヴァリエール公爵が来てみれば、愛娘と友人達が自分のコレクションを読んでいる。
「「「オジサマ(お父様)?
良いですよね?」」」
と話し掛けてきた表情は軽蔑の白い目だ……
お前達の婚約者が書いたんだぞ!
と叫びだいヴァリエール公爵。
そんな涙目の公爵を傍目に男の浪漫本を漁り、気に入った衣装を着ている挿し絵のページを切り取っていく。
「ねぇ?
私はこの水着のシリーズが良いわ。
ちょうど水メイジだし、ラグトリアン湖の水の精霊の交渉役だしピッタリだと思うの……」
手に取った本は
「ケンコー全裸系水泳部ウミショー」
その挿し絵はツアイツから贈られた、ぶらじゃとぱんてーその物の水着?を着た女の子だ。
それにソフィアが良く着ているセーラー服……
「ヤバくね?
てかヤバいでしょ?」
「キワドイわ……
貴女本気?」
ドン引きの二人。
「この本によればビキニって言うらしいわ。
これにワイシャツを羽織ったりパレオを腰に巻くの……
扇情的よね?
これで勝負に出るわ!」
男の浪漫本を握り締め、熱血の表情を浮かべるモンモランシー。
瞳の奥に炎が見える気がする……
「モンモランシーは直球、エロモードか……」
「一歩間違えれば痴女ね……」
酷評だった!
モンモランシー涙目だ。
「良いのよ。
ツアイツに喜んで貰えれば……
貴女達はどうなのよ?」
2人に吠える!
「私、私はコレにしますわ」
何故か優雅な仕草で、本を持ち上げる……
「ているず・おぶ・ですてぃにー2」
その挿し絵は赤毛の長髪をツインテールにした、弓を構えた下着ばりの衣装を着た女性。
ナナリーたんだ!
肩と胸しか覆わない鎧にホットパンツ。
やたら長い手袋に太ももまであるロングブーツ……
それに腰からヒラヒラの前全開のスカート?
確かに勝ち気なキュルケに似合いそうだ。
一応、戦装束っぽいから、武門のツェルプストー家にはお似合いか?
「何て言うか……
らしいわね、半裸蛮族をお洒落にしたみたいな?」
「うわっ!
これで戦場に行くの?
直ぐに捕まえたい殿方が溢れそうね。
エロエロアーチャーね」
こちらも酷評だ。
特に先に評価されたモンモランシーは……
例えがひどくね?
「最後は私ね……
私はこれよ!」
ルイズの手には
「ぎゃらくしー・えんじぇる」
ミルフィーユたん!
ピンクの髪の天然さんだ。
彼女は明るくお気楽、天然ボケで周囲に迷惑をかけまくる……
男の浪漫本を読みながら、納得顔の2人。
「「なるほどねー!
でもルイズだけ、可愛い衣装って何で?」」
ツアイツを惹き付けるには、インパクトが弱いのではないか?
「いや、ポロリ担当は2人に任せようかなって……」
えへへ!
っと舌を出して笑っている。
「「フザケルなー!
アンタも露出度の高い衣装を着るのよ」」
そう言って、2人が片方づつのホッペを摘まんで引き伸ばす。
「いらぃ、いらぃよぅ……」
制裁を終えた2人は、ルイズに似合う衣装を探す為に男の浪漫本を漁りだす……
この少し後に新しくシリーズ化されたコスプレシリーズは
「教祖ツアイツの婚約者色々バージョン!」
として、そこそこのヒット商品となる。
余りブレイクしなかった理由には、原型師とモデルが部屋に籠もりっきりで制作が進まない事。
両親からの監修が入り、是正項目が多かった事があげられる。
特にモンモランシーの水着シリーズは、貧巨乳連合教団本部のツアイツ執務室にプロトタイプ・シリアルナンバー001のみが展示されるだけの貴重な逸品だったとか……
しかし着実に新人を世に送り出しオッパイ教団は、その勢力圏を広げていった。