挿話42・シェフィーとジョゼフ甘々日記(出逢い編)
ツアイツから、我が主との愛の記録を捏造し……
いえ、腐れホモ野郎の汚らわしい記憶を消し去る為の治療としての正しい(都合の良い)記憶を上書きする。
そう素晴らしい提案を聞いてから、少しずつ考えて来た甘い甘い物語……
私とジョゼフ様は、使い魔法召喚の儀式により初めて会った。
急に呼び出され、キスによる契約を強制的に結ばされた……
しかし、私はジョゼフ様を愛してしまった。
逞しい体、素敵なお髭……
型に嵌らない行動。
子供の様に純真で残酷。
それでいて誰にも負けない知謀の持ち主。
でも周りは愚鈍でツマラナい連中……
そんな孤独の主従だが、大きな転機を迎える。
先ずは、この出会いの記憶から修正する!
私達の出会いは、想いは……
契約などと言う無粋な物では無いのです!
そう私達の理想の出逢いは……
捏造編・私と主様の出逢い(ハート)
◇◇◇◇◇◇
あれは有る晴れた普通のどれかの日……
私は綺麗な花が沢山咲くと言う山の麓の一寸したオアシスに居た。
私の周りには摘んだ花で作ったお花の首飾り等が並んでおり、そこはまるで私という淑女を際立たせる花のステージと化していた!
そのステージの中心で物思いに耽る……
美女に惹かれて小鳥達が集まり、肩や膝にのり囀っている私を祝福する音楽の様に。
しかし、たおやかな花には虫が寄ってくるもの。
薄汚い乱暴者三人に絡まれる私……
「ようよう!
姉ちゃん、遊んでくれよ」
「こんな所で花に埋もれてないでよぉ!
俺達とイイ事しようぜ」
「ほら、こっち来いよ!」
薄汚い男達は、私の手を掴んで森の中に連れ込もうとする。
抵抗する私……
嗚呼、無惨にも花が散らされようとする時に
「待て待て待てぇ!
下郎共、その美しき御婦人から離れろ。
臭くなるだろうがぁ」
早速と駆けつけるジョゼフ様……
「何だとぉ?
お前ら、あの貴族様をやっちまえ」
汚い言葉を叫びながら襲い掛かるゴミをバッサバッサと撫で斬りにするジョゼフ様……
残りは兄貴分のゴミだけ!
「きっ貴様、何者だぁ?」
「黙れ!喋ると臭いだろう」
そう言って最後の乱暴者を袈裟懸けに斬る!
そして刀を一振りして付いた血を払うと、カチッと鞘におさめた。
◇◇◇◇◇◇
あっ!
白馬の用意を忘れたわ……
まぁ良いか。
それにジョゼフ様は一般的な魔法が苦手。
記憶の中で魔法を使っては、辻褄が合わないから刀にしたけど……
意外と刀も良いわね。
でもジョゼフ様って刀は使えたかしら?
まぁ良いか、普通に振る程度は使える事にしておきましょう。
ツアイツだって、エロ剣をそれなりに使えてたし……
さて次は初めての会話ね。
ここはジョゼフ様が私に一目惚れしたって事が良いわよね。
◇◇◇◇◇◇
「レディ、怪我は無いですか?」
刀を鞘におさめながら近付いてくる。
「はい……
大丈夫です。
その、有難う御座いました」
両手で体をかき抱きながら、弱々しくお礼を言う。
そんな私を凝視するジョゼフ様……
「そっそんなに怯えなくても大丈夫だ。
俺は何もしない。
その、なんだ……
家まで送ろう。
また襲われるかも知れないからな」
そう言って私の手を掴み立たせようとする。
その力強さに、思わず彼の胸に引き寄せられる……
「あっ……すみません」
恥ずかしくて離れようとしても先程の恐怖で腰が抜けてしまい、彼に縋りつく。
「おい!
大丈夫か?
どこか怪我をしたか?」
「いえ、その腰が……」
そう言いうと
「なに?
腰をどうしたのだ?」
心配してくれたのだろう……
しかし、その逞しい手で私の腰から尻を撫で回す。
「あっあの……
大丈夫ですから……
ただ腰が抜けただけで……」
遠慮なく触り捲るジョゼフ様の手を押さえて、腰と尻を撫で回すのを止める。
「むっそうか……
しかし、お前の手は柔らかいな」
今度は手をニギニギするジョゼフ様。
「よし!決めたぞ。
お前は今日から俺の物だ。
俺の名はジョゼフ。
このガリアの王だ!」
◇◇◇◇◇◇
ヨシ!
出逢い編は、これで良いわね。
恩人なのだが、見初められて拉致される。
これならジョゼフ様が私に一目惚れな訳よね。
しかもジョゼフ様を少しエッチィ様に変えるわ!
そして次は、お城に連れてこられた私に襲い掛かるジョゼフ様ね……
「うふふふふ、あははははぁ!
ここからはツアイツの男の浪漫本の出番!
激しいのを……
いや最初だし甘々なのが良いわね」
◇◇◇◇◇◇
ジョゼフ様に連れ去られ、王宮の一室に押し込められた。
呆然とする私をメイド達が風呂に入れようとする。
「あっあの?」
突然の成り行きに付いていけない私。
「ジョゼフ様のご命令です。
貴女を綺麗に着飾らせろと……
先ずはお風呂にて肌を磨き髪を整え、ドレスに着替えて頂きます」
テキパキと私を磨いていくメイド達。
私はなすがまま……
気がつけば、豪華な部屋のドレッサーの前に座らされて髪を梳いて貰っている。
「綺麗な髪ですね。
まるで黒曜石みたいに艶やかですわ」
お世辞でも嬉しい。
しかし、私は一体どうなってしまうの?
「あっあの……
私はどうなってしまうのですか?
私は……」
櫛を持つ手を止めて、申し訳なさそうに
「貴女はジョゼフ王が見初めて連れてきたお方。
私達では分かりません。
どうかジョゼフ王にお聞きになって下さい……
では終わりましたので、大食堂までご案内致します」
そう言うと、扉が開いて別のメイドさんが2人並んで立っている。
「では、ご案内致します」
そう言うと、また私を何処かへ連れて行く。
広い廊下……
床は見た事も無い絨毯が敷き詰められている。
踏むのが恐ろしい位にフカフカだ。
それに壁には絵画が、天井には精巧な硝子のシャンデリアが連なっている。
所々に置かれている壺も像も高価な感じだ。
案内をしてくれたメイドさん達が、一際大きな扉の前で
「此方でジョゼフ様がお待ちです」
と、私を部屋に案内する。
中に入れば……
30m位の長いテーブルの先に、先程の方が座っている。
「わっ私、どうすれば……」
思わずオロオロしてしまうが、室内に待機していた別のメイドさんが椅子まで誘導してくれる。
案内された椅子を前に、ジョゼフ王を見れば……
王様って感じの衣装を着ているが、借り物の私と違い良く似合っている。
「おお!
見違える程、美しいなお前は。
その様な髪の色をした女は初めて見たぞ」
社交辞令でも嬉しいと思った。
「あっありがとうございます」
それから私達は初めての食事を共にした。