第192話
遂にガリアのジョゼフ王の記憶改竄まで漕ぎ着けました!
こんにちは!
ツアイツです。
ガリアまで来る途中でゴタゴタが有りましたが、遂に此処まで来ました!
現在グラントロアの一角、シェフィールドさんの私室?に招かれています。
ここには大量のジョゼフ改造計画の書類が山積みです!
メモ書きから、製本された物まで色々有りますね。
「シェフィールドさん、ラブストーリー決まった?」
彼女は膨大な手書きの原稿に埋もれています。
「ツアイツ、助けて……
お姉ちゃんじゃ上手く纏まらないの」
確かにvol.40も書き溜めたらイベントも選び辛いよね?
「纏めるって……
コレ全部読むの?
僕が、今から?」
ちょちょっと今から全部って、どれだけ時間掛かるの?
「お願いツアイツ!」
ウルウルと上目使いで祈るポーズをされたら、読むしか有るまい。
覚悟を決めて、この甘々な恋愛ストーリーを読む。
「ああ、コレとコレは読まなくて良いわ。
あっこれもダメよ」
途中幾つかの製本をお姉ちゃんが回収していく。
何か表紙に……
「愛、そして3人」
とか
「夫と義弟と花嫁と」
てか危険な単語が!
お姉ちゃんはにっこりと微笑んでいる。
「……あの、それは?」
「ん?」
表情は変わらない。
諦めて本を読み始める。
手始めにvol1から手に取りページをめくる。
………………読んでる。
…………読み続ける。
………読み耐える。
……もう無理、砂糖を吐きそうだ。
「お姉ちゃん、しょっぱい物持ってきて」
せめて塩気を補充したいです。
「ツアイツ?
本を読みながら物を食べちゃ駄目よ」
至極真っ当に切り替えされました!
半日以上を費やし、飛ばし読みでイベントをピックアップ。
それをお姉ちゃんに更に絞って貰い決めました!
「これで良いわね。
完璧よ、ツアイツ有難う」
お姉ちゃんは、とてもご機嫌だ!
「でもお姉ちゃん、全部覚えてる?
コレを持ち込むとジョゼフ王も警戒するよ……」
「…………そうね。
今晩中に覚えるわ。
明日実践しましょう」
胸焼けがする程の甘々ストーリーだ!
これを読んだら、大抵の男は躊躇するだろう……
それ位の強制的拘束力がアリアリな物語。
その主人公になれるお話だから……
そして、いよいよジョゼフ王の治療(洗脳)を開始する。
ジョゼフ王執務室
謁見の間の奥に設えられた歴代ガリア王の執務室。
窓は無く分厚い石に四方を囲まれた完全防備な部屋。
中は魔法の灯りて照らされている。
ジョゼフ王は応接セットのソファーに座りシェフィールドさんの説明を聞いている。
「何人かの先行実験の結果から推察するに、記憶の削除・上書きにはそれなりの時間と痛みを伴います。
出来れば魔法で眠りについて頂いた方が効率的かと……
私も主の苦痛の表情には耐えられません。
ですからお願いします」
そう説明し、深々と頭を下げている。
つまり眠っている内に全てを書き換えたい訳だ。
vol.40からvol.3まで内容を圧縮したけど、オルレアン夫人の時の何倍になるのかな?
ジョゼフ王が僕を見たので、頷いた。
「分かった。
ミューズを信じよう。
起きたら新しい俺になっている訳だな」
そう言って目を瞑る。
僕は杖を取り出し一言断りを入れてから、ジョゼフ王にスリープクラウドの呪文を唱える。
魔法の雲を吸ったジョゼフ王がソファーに前屈みになるのをシェフィールドさんが抱きとめた。
いよいよだ……
因みに部屋の外には、カステルモール殿とジャネット殿が護衛の為に居る。
何となく覗き見してそうだが……
そして、僕達の知らない直属の護衛も見張っている筈だ。
僕はスリープクラウドを唱えたら、不審に思われない用に杖をしまい離れた席に座る。
「嗚呼、主様……
いよいよですわ。
うふふふふふ……
あは、あはは、あはははは……」
お姉ちゃんのテンションはマックスだ!
そして不審者そのもの……
隠れている直属護衛の方々が不審に思うかも!
「おっお姉ちゃん、落ち着いて……
ほら、深呼吸してね。
ほらほら……
ひっひっふー・ひっひっふー」
既に瞳は黒目のみでグルグルだし、不思議なオーラが立ち上っている。
僕なら仕える主人に、この様な人物が近付いたら僕なら止める……
「ツアイツ……
大丈夫よ、少し待っていてね。
私達三人の幸せの為に……
では、いくわよ」
そう言って目を瞑り、長い精神集中に入った。
もはや邪魔にならない様に見守るしかない。
シェフィールドさんの集中は30分近い……
全身に汗をかいている様だし、表情も苦しそうだ。
しかし止められない。
更に10分後……
「キタキタキター!
ジョゼフ様、私の気持ちを受け止めて下さい!」
そう呟くと、眩い光を放ち指輪が砕け散った!
今までで一番の輝きだ。
ジョゼフ王を胸にかき抱いたシェフィールドさんは、満足そうに彼の頭を撫でている……
成功したのだろう。
「お姉ちゃん平気?」
シェフィールドさんは……
穏やかな表情だ、アレ?
ヤンデレ化が治っているよ?
「ツアイツ、ジョゼフ様はどれ位で目を覚ますかしら?」
今回は治療時間がオルレアン夫人より掛かっているから……
「あと一時間位だと思うよ……
成功したみたいだね?」
「ええ、成功したわ。
有難うツアイツ。
ジョゼフ様が目覚めたら私達は愛欲あふれ捲りの家族よ。
さぁでも今は、2人だけにしてちょうだい」
アレ?
不穏な台詞が聞こえたよ?
「じっじゃあ何か有れば呼んで下さい。
客室に居ますから……」
そう言って執務室を辞す。
部屋の外に出るとカステルモール殿とジャネット殿が直立して待機していた。
「ツアイツ殿、成功したみたいですね?」
「ツアイツ様、上手くいきましたね?」何故か語尾が疑問系なんだけど……
覗き見していたんだろうな。
「ええ……
不穏な台詞は有りましたが成功だと思います。
では客室に戻りませんか?」
ガリア王の執務室前で立ち話も何だから……
これで、ミッションはオールクリアーだ!
長かったガリア編も終わってみれば大団円かな?
2人を伴い客室に歩いて行く。
多分、イサベラ様とお付きのメイドさん達も居るだろうけどね。