メリークリスマス!
突然閃いて二時間で仕上げました。
自分でも途中から何を書いてるのか分からなくなった作品です(笑)
今年一年、皆様には本当にお世話になりました。
来年も宜しくお願いします。
クリスマス記念電波作品
「どうして、こうなったんだろう?」
無駄に豪華な大広間。
天井に煌めくシャンデリア。
見慣れた此処はトリステイン魔法学院の大食堂だ。
テーブルの上には数々の美味しそうな料理。
勿論、ワインもシャンパンも沢山用意されている。
壁面の本棚には漢の浪漫本が沢山並んでいる。
まさに夢の祭典?
だが、だがしかし……
この会場には見渡す限りにムサい漢の群れが。
綺麗どころは独りも居やしないぞ。
今日は前の世界ではクリスマス。
元ネタの宗教的意味合いなんて関係ねー!
偉人の誕生日なんて知らねー!
な恋人達の性の饗宴の筈なんだけど。
「何故、何故だんだ?
僕はロイヤルなハーレムを築いた筈だ。
なのに何故、独り者の祭典の主賓として此処にいるのかな?」
僕の隣にはイザベラもルイズもキュルケもモンモンも、妻兼護衛のジャネットすら居ないんだけど。
確かに会場の外にはボインズナイトが警備を固めてはいる。
メイドは居ないが執事は居る。
完全なる男祭り……
思わずオッパイ教祖として眩暈がした。
立食形式の会場故に壁際にしか椅子は無い。
なので壁際の椅子に崩れる様に座る。
ハァーと溜め息をつく。
無駄にクッションの良く効いた椅子に深々と埋まって思う。
何故こうなった?
「ツアイツ殿、嫉妬団の宴へようこそ!
歓迎しよう。
我ら名も無い独り者達の尊敬と嫉妬・賛美と畏敬を集めし者よ……」
そこには煌めく蝶の仮面をし口に薔薇を喰わえたシャツのボタンが全開の男が立っていた……
「いや、お前ギーシュだろ?
幾ら仮面をしても服装で分かるぞ。
久し振りだな」
「ふはははは!
私はギーシュなどと言うお洒落な紳士では無い。
だが、だがな。
彼の噂は知っているぞ。
何でも美しい婦人達の注目株の花咲ける美少年だが、愛する女性を教祖に奪われたそうだ……」
嗚呼、モンモランシーとか呟いているが
「そもそも奪ってないから!」
大体最初からギーシュはモンモランシーに相手にすらされてない筈だ。
でも原作では呆れられながらも二人はくっ付いたんだよな。
確かにギーシュからすれば略奪愛か?
それから暫く名も無い男と言い張るギーシュの愚痴を聞いた。
後日、友達のギーシュの為に合コンを設定すると約束すると彼(本人)は去って言った……
◇◇◇◇◇◇
教皇ヴィットーリオが行方不明としてモヤモヤが残ったロマリアとの趣味を主張する戦いを終え、晴れてワクワクドキドキのハーレムライフを満喫する事が出来ると思ってた。
既にハルケギニアで僕らの「変態と言う名の紳士達・漢の浪漫本ファンクラブ」に立ち向かえる程の性癖を掲げる勢力は無い……
大国ガリアに、正妻の実家に複数の側室と転がり込んで楽しめたのも束の間。
次期ガリア王で有り、巨大趣味組織の教祖の僕に暇など有る訳ないよね?
しかも組織の下部構成員の中で不穏な動きが有ると報告を受けた。
ファンクラブの上級会員の殆どが、己の性癖に合った伴侶を得ていた。
ワルド殿にジョゼット。
カステルモール殿にエルザ。
モット伯には翼人の翼っ娘が。
しかもダッシュ殿はロリっ子を集めた孤児院の院長だ。
心の友で有るウェールズ殿に至っては、先程ゲルマニアとの婚姻外交が成立した。
アルブレヒト閣下の提示した三人娘との合同挙式だ。
合同挙式に関しては、僕が前例を作ったからなぁ……
ファンクラブの上級会員ばかりが幸せな伴侶を娶ってばかりでは、下級会員は面白くは無いよね?
だから、こうしてくすぶっている連中を一同に介して宴会を開いた筈が……
ドンドンドン、パフパフパフ!
「嫉妬団の宴inトリステイン魔法学院☆ドキドキハーレム王ツアイツ教祖を囲む会」
ドッカーン!
と言う訳ワカメな魔宴となり果てていた。
しかも僕以外が仮装してるって、闇討ち上等?
「これはこれは、巷で噂のハーレム王様では有りませんか!
是非一献……」
ワイン瓶片手に呂律が怪しい中年が近付いて来た。
グラスを差し出すとワインを注いでくれるが……
「零れてます、零れてますから……」
ワイングラスから零れる程に注いでくれた後に、隣にドカっと座る。
妙にフサフサなカツラを被るこの男は……
「コルベール先生。
お久し振りです。
お元気でしたか?」
「なっ?
私はコルベールなどと言う学者様では有りませんぞ!
タダの独り者の寂しいオヤジですぞ」
次はこの人かよ……
この人の活躍を潰し彼女を奪ったのは僕なんだよね。
隣に座り頭を垂れる姿は、哀愁の漂う冴えない中年でしかないな……
「ハーレム王様……
私は最近良くブリミル様の啓示(電波)を受ける(受信)のです。
本来なら妖艶な美女を娶り趣味の発明を堪能出来る筈が、何かの拍子で変わってしまったと!
私、私は……」
うなだれた拍子にカツラがスルリと床に落ちる。
記憶に有る頭部よりも更に毛が抜けて地肌見えている。
苦労しているんだな、学院長がアレだし……
「コルベール先生。
一度ガリアの研究機関に遊びに来ませんか?
学術的なお仕事を専門にされると他の生活面が疎かになるとか。
我がガリアの研究機関にはコルベール先生と志を同じくした男女が集っています。
このトリステイン魔法学院よりは出逢いの機会も多いですよ」
コルベール先生と話が合うとなると、専門的な会話が成り立つ女性じゃないと駄目だよね?
「わっ私は……
でも、そのコルベールと言う学者様には良いかも知れませんな。
研究を共に出来る女性ですか……
ふむふむ、ではお願いします。
彼に遅咲きの花を咲かせてあげて下さい」
そう頭を下げて去っていった……
僕はキラリと光る頭部から目を逸らせた。
この場所は辛い。
宴は半ばだが、逃げよう。
ベランダから飛び立とうと窓を開けようとしたら、両肩を掴まれた。
「「これはこれは教祖様。
どちらへ行かれますかな?」」
振り向けば微笑みを浮かべる地味な眼鏡と……誰かだ。
眼鏡はレイナールだと思う。
だけど隣は誰だっけ?
「えっと……
レイナールと、誰だっけ?」
「ヴィリエだ!
いっいや違うぞ。
僕は至高の風メイジ、ヴィリエ殿では無い」
「僕も皆の人気者レイナール殿じゃない」
力一杯否定しているが、どう見ても彼ら以外の何者でもないけど……
「あっ!
教祖様、やっと見つけましたぞ。
実はお願い事が……」
「教祖様ー!
僕のお願いを聞いてー」
筋肉と肥満。
ギムリとマルッコリヌ?だっけ?
四人に取り囲まれてしまった。
皆さん目がね、ヤバい輝きをしてるんだよね。
これは逃げないと危険かも……
「「「「オッパイ教祖ツアイツ!
モテナイーズとか変なグループ名を付けながら、自分だけモテモテになりやがって!
嫉妬の力は無限のパワー!
我らが逆恨み、その身に受けてみよ」」」」
トリステイン魔法学院の脇役四人衆が手をワキワキさせながら迫ってくる!
「ちょ、ごめんなさい!
ギムリ、首を絞めないで……
マルッコリヌ、僕はカジっても食べれないから。
レイナール、無理に眼鏡を掛けさせないで。
だっ誰かタスケテー!」
「ツアイツ……ツアイツったら。
どうしたんだい?
ほら……起きなよ……」
イザベラの声で目が覚める。
目が、覚める?
今のは夢だったのか?
ベッドから上半身を起こして周りを確認する。
ガリアでの僕とイザベラの部屋だ。
両手で顔を擦ると額にビッシリと脂汗をかいていた。
手がベタベタだ……
「ツアイツ?
悪い夢でも見たのかい?」
イザベラが優しく背中を撫でながら聞いてくる。
淡い魔法の光に照らされた寝室を見て、さっきの事が夢だと分かって安心した……
夢に出てきた彼らは、トリステイン魔法学院の友人達だ。
暫くご無沙汰だったし、本来原作で少なからず活躍するのだが、僕が居る為に脇役にすら成れなかった連中だ。
「イザベラ……
新しい事業を思い付いたんだ。
結婚活動を支援する、略して婚活だ!
モテナイ男達を救済するんだ」
夢の中だと理解しても、彼らの嫉妬に狂った目は恐ろしかった……
ならば僕を恨まない様に、早く結婚相手を探させるべきだ!
「貴族相手の商売なら無理さね。
貴族の婚姻とは、家と家の繋がりなんだ。
それを無視して相手を宛てがうのは良くないよ。
貴族が結婚出来ないのは本人の資質よりもお家の事情さね。
さぁまだ少し寝れるから……
明日はトリステイン魔法学院から使者が来るんだよ。
ツアイツには久し振りに旧友と会えるんだ。
寝不足の顔じゃマズいだろ。
全くツアイツの発想は何時も驚くけど、今回のは駄目だね」
そう言ってイザベラが額の汗を拭ってくれた。
明日……
トリステイン魔法学院の使者だと?
確かに報告書は読んだ。
使者には僕と親交の有る連中だから楽しみにしてねって……
まさか、まさか正夢じゃないよね?
隣に眠るイザベラの胸の谷間に顔を押し込んで、深呼吸をしながら心を落ち着かせる。
甘いミルクの様な匂いを深々と吸い込んだら、先程までの自分の行動が随分と滑稽だと思う。
「嫉妬のパワーは無限大……
まさか、ね」
僕は頭を優しく撫でてくれるイザベラの手の感触を楽しみながら、深い眠りについた。
翌日、オールドオスマンを代表にコルベール先生・モテナイーズの連中が訪れて、僕をトリステイン魔法学院主催のパーティーに招待してくれた。
一学年の途中からガリアの魔法学院へ転入してしまったが、偉大な僕の功績を称える為に名誉学生としてパーティーに招待したい、と……
でもしつこく誘う彼らの暗い目の輝きが、夢の中の連中と同じだったんだ。
アレは、アレはヤバい目だった……