マチルダ&ティファニアルート第2話
待ち合せ場所に行くと既にソフィアが待っていた。
「ごめん遅れちゃったかな?」
まだ15分位前の筈だけと…
男は女を待たせたならこう言わなければならないのだ。
「いえ今来たところですから。」
ソフィアがにっこりと言ってくれた。
「何かデートみたいな会話だね(笑)」
「えっ…そんな私となんて…」
からかい過ぎたのか真っ赤になって下を向いてしまった。
「…そろそろ乗って下さい。」
手綱を握るのは…ロングビルさん!
アレナンデがくいんひしょガイルノカナ?
「え〜と、まだお名前は伺ってませんが学院長室に居た秘書の方ですよね?」
「はい、ロングビルと申します。
一寸お金が必要なので御者のお手伝いもしています。」
たしかにロングビルはフーケ討伐の時に御者をしていたがなにか怪しい…
いや僕が怪しいと思って調べにきたか?
「それは態々…
大変ですね。
では今日はお願いします。
夕方には戻る予定ですが待ち時間は当家に滞在しますか?」
「出来れはお願いします。
では出発しましょう。」
ニッコリと微笑んでくれる。
凄い猫被りっぷりだ。
悩んでも仕方ないので取り敢えず出発する。
馬車の中では貴族用の馬車に乗った事がないのかソフィアが落ち着かない様子だ。
「そんなに緊張しないで楽にしてよ。」
「いえその初めてこんな立派な馬車に乗るので落ち着かなくて…」
うーん初々しいのう(笑)
「じゃ着くまでに雇用条件書の説明をするから隣に座って。」
「えっ…あの…おおお邪魔します。」
「さぁさぁもっと近くに寄って!」
「は…い。」
※ツアイツ悪代官気分満喫中です(笑)
SIDEロングビル
何をやってるのかねぇ?
最初の遣り取りだけ聞いていると完全にスケベ貴族と見初められた村娘みたいなシュチュだね。
メイドも嫌がってないしもしかしてこいつら最初からデキていたから助けに行ったんじゃないのかい?
あっ大人しくなったけど…
もしかして始めちゃってないよねぇ…ナニを…?
そこから零れてくる言葉は…
驚愕だったよ…
嬌声では無かったよ残念なg…ゲフンゲフン。
ハーナウ家の雇用条件とは破格の内容だったね。
終身雇用?
って60歳まで雇ってくれて毎年、お給金が上がり年に2回の特別支給金が有るんだって。
福利厚生?
って病気の時の医療費の殆どを負担してくれてお給金の貰える休みや時間外手当てって所定の時間以上に働くとその分のお給金が別に貰えるんだ。
衣食住完備で支給品には制服やらなんやら色々無料で貰えるんだ…
すごいの一言だね。
しかもこれ妾じゃなくて一般の使用人にだよ。
特に驚いたのは被雇用者の保護の件で…
専用のメイド服にはハーナウ家の家紋が刺繍されていて、他家の貴族から理不尽な無理難題を言われた場合その全ての責任をハーナウ家が持つ…
つまり今までは問答無用だったのが家名をかけて保護してくれる。
これは異常だ…
普通なら他家と揉める位ならその使用人を手打ちにして終わりだ。
平民を守るより自家の存続の方が重要だろう。
あのメイドもこれには吃驚して聞き返していたがあの坊ちゃんはアッサリと
「下の者を守るのは上に立つ者の最低限の義務だ。」
とか言っていたよ。
貴族が平民の為に体を張る…
そんな事は天地がひっくり返ったって有る訳がないのがこのハルケギニアの常識だ。
この言葉を聞いてあのメイドは腰砕けだったね。
私だって面と向かって言われたら…
嬉しいかも…ね。
しかしこの坊ちゃんは危険だ…
テファは守って欲しいけどあの世間知らずな優しい娘に会わせたら…
クォーターエルフが生まれてしまうわ!
絶対にあの子には会わせない!
なんて事を考えていたらもうお屋敷に到着か。
しかしこの屋敷もぱっと見ただけでも…
要塞だね。
付け入る隙が無いよ。
一見して見通しの良い丘の上に建ってるだけだけだ。けどメイド達がお出迎えの準備を始めているのは既にこっちの存在を確認してるからだ。
偽装された物見台に此方を確認する銃窓…
武装兵も常駐してそうだねぇ。
早期に発見出来て狙撃に最適な外壁と…
幅がやや狭いが水の張った堀まで有る。
こりゃ土と水のメイジにとって本領が発揮できる布陣…
防衛戦を想定しているのかね。
あの坊ちゃんは18m級のゴーレムに投擲武装を持たせられるから篭ればそうそう負けないね。
近付く事も出来ずに一方的に蹂躙されるよこりゃ…
どこがお人好しの貴族様だ!
他国にこんな防衛拠点を構えるなんて只者じゃないね。
これは相当なお宝がしまって有る可能性が有るよ。
盗賊の勘がビンビンさ。
※正解…大切な巨乳メイド隊が20人以上守られてます(笑)
僕の馬車を視認した使用人達が出迎えの準備を整然としている。
ヴァリエール家から来たメイドズが正面入口前に2列で並び、扉付近にはナディーネ達が控えている。
メイドアーチの前で馬車を降り赤い絨毯ロードを歩いていく。
「「「「「「「「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」」」」」」」」
一斉に礼をするメイドズ。
「ただいま、皆変わりはないかい?」
メイドのアーチを潜りながら玄関へとむかう。
くーっ前世ではこの感動を味わう事は出来ないだろう至福の時!
玄関前に行くと、
ナディーネ・エーファ・ルーツィア・シエスタが笑顔で迎えてくれた。
「ただいま。
彼女が連絡をしておいたソフィアだよ。」
「皆さん宜しくお願いします。」
「んでこっちがロングビルさん、本来は学院の秘書さんだけど人手不足の為に御者をしてくれたんだ。」
「ようこそお二方、私はメイド達の取り纏めをしているエーファです。
ソフィアさんは私と一緒にロングビルさんはルーツィアと一緒に来てください。
ツアイツ様は少し休まれますか?」
「いや、そんなにのんびり出来ないので仕事するよ。
あとエーファ…ごにょごにょ!」
「まぁ…分かりましたわ。
その様に対応します。」
エーファにロングビルさんには注意と監視をする様に伝えた。
彼女は何か理由が有って僕に接触してきた筈だ。
必ず行動を起こすと思う…
エーファはルーツィアに一言二言話してからソフィアを伴い別室へ、ルーツィアはロングビルさんと警備詰所に向かった。
執務室には綺麗に重要度別に揃えられた書類が積んであります。
そして側には政務の補助に特化教育をしたメイドが4人。
軽くチェックするだけで午前中が終りそうです。
今から直ぐに始めても夕飯までに終るか終らないかだな…
気を取り直し「さぁ頑張ろう。」と皆に声を掛ける。
「分かりましたツアイツ様。」
と返事を返してくれたので先ずは重要度の高い案件から確認する。
SIDEロングビル
この案内してくれるルーツィアと言ったか…
メイド姿の割りに隙が無い…
只者じゃないね。
それにトンでもない凶器を隠し持って…
いや隠し切れずにぶら下げやがって。
テファで見慣れているとは言えどんだけデカイんだよ!
ここのメイドは全員が…デカイね。
なんて考えていたら警備員詰所に連行された?
えっ本性バレてるのかい不味いねこりゃ…
こちらで休んで下さいって両隣の部屋から監視されている気配がするよ。まぁ宛がわれた部屋はそれなりに広く快適だね…
これは取り敢えず信用出来ない相手を監視する部屋かね?
直ぐにどうこうって訳じゃなさそうだ。
今は大人しくしてようかね。
えっ?
この本棚の物語は読んで良いのかい?
これはシンデレラにロミオとジュリエット…
オペラ座の怪人に…
これ新作の風と共に去りぬ…
凄いじゃないか!
こっちの飲み物やお菓子も食べて良いの?
お酒は?駄目…
そうよね飲酒運転になるものね。
こんなに高待遇なら半日でも一日でも待てるねぇ…
はぁ?
何だって…
昼食は坊ちゃんも含めて従業員全員で食べるのかい?
なんだか驚かされっぱなしで悔しいねぇ…