第19話
「さて屋敷に着いた。
僕はホストをしたいけど仕事があるので出来ないからルーツィアにお願いするから宜しく。
ソフィアはエーファに色々と教えて貰ってくれ。
では昼食の時に会おう」
「あら手伝うわよ」
「いや幾ら君達でも我が家の機密に触れる問題も有るから悪いけど……」
「あら残念……
折角ツアイツの働いてる姿が見られると思ったのに」
クスクスと笑いながらレディ達はテラスの方に行った。
お茶でも飲んでいて下さい。
僕は仕事をするよ。
SIDEモンモン
「このお屋敷って華美ではないけど洗練されているわね……
機能美っていうのかしら?」
「はい。
ツアイツ様は建築に造形が深くハーナウ家関連の建物の殆どを監修しています」
このメイドの胸凄いわ。
「稼げる男って色んな意味で凄いのね。
羨ましいわ」
「ツアイツはね子供の頃から色々な事を知っていたわ……
演劇、執筆そして既に8歳で普通に大人達に混じって領地経営に参加していたわ」
キュルケが自慢げに教えてくれた。
この中では一番古い付き合いだからね。
「しかし8歳でって凄いわね。
私の8歳の頃って何をしていたかしら?」
「「「ルイズ様お帰りなさいませ」」」
はっ?
何あの乳軍団?
それにお帰りなさいませってどういう意味?
「ただいま!皆元気にしてた?
私は2cm程また大きくなったわよ」
「流石です!
私達も努力して成果は上がってます」
「ルイズ、その乳軍団と凄く仲が良いみたいだけど彼女達はツアイツの家の者じゃないの?」
「ううん。違うわ。
お母様がウチからツアイツの所に送り込んだのよ」
「はぁ?それって……」
ルイズのお母様ってあの有名な烈風のカリン様よね。
それが大量の巨乳メイドをあてがうって……
ヴァリエール家ってそこまでしてツアイツを取り込みたいの?
やはり私が見込んだ以上に有能な婿なんだわ。
もしかしたら他にも秘密が有るのかも……
これは絶対に狙うしかないわね。
あら?
2人共急に黙り込んでしまった私を不審な目で見てるわ。
「何かアヤシい事考えている目だったけど?」
「女の感がイケナい事を考えているって告げてるんですけど?」
「「何か企んでいるなら潰すわよ!」」
「いっいやぁねぇ……
ただルイズのお母様って有名な烈風のカリン様ですわよね?
なんでメイドをそんなに送るのかなーって?」
SIDEルイズ
こっこの女やはりツアイツを狙ってるわ。
いくら実家が貧乏だからって一人娘がゲルマニアに嫁げる訳がないでしょ……
ここは諭してあげるのが友人として大切な事ね。
ついでに私と貴女の絶対的な差を思い知り絶望しなさい。
「おほん……
お母様がツアイツにメイド達を送り込んだのは私が嫁ぐ準備の為よ。
ツアイツはお母様に私をお嫁に貰う許可を得る為に戦いを挑んだわ。
結果負けてしまったけど認められて学院卒業後に挙式になったのよ。
彼女達は先発隊としてツアイツのお世話をしているの。
ついでにツアイツはお母様の一番のお気に入りでも有るわ。
もう二年間もウチに泊まりがけで遊び(しごきと言う訓練)に来る家族ぐるみの付き合いよ」
ふふん!
どう?
ぐうの音も出ないでしょ?
貴女は諦めて指を加えて残念がりなさい。
ツアイツは私が貰っ「ルイズ嘘をおっしゃい!」
「なっなな何よキュルケ?
嘘なんて言ってないわよ」
SIDEキュルケ
ここは退けないわ。
周りがそうだと認めてしまっては不利よ。
「何言ってるのルイズ!
メイド達はツアイツの豊胸技術(写本のお陰で)の結果で皆豊かな胸を手に入れ彼を慕って(教祖と崇めて)率先的に彼の元に行ったんでしょ」
「ちっ違うわよ!」
「それにヴァリエール夫人がツアイツを気に入ってるのは事実だけどエレオノール様もバレバレで気にしているし貴女が最優先ではないし結婚の許可も降りてないわ」
「エレオノール姉様が?
そう言えばやたらと話したがるし呑みたがるし絡みたがるし……
ふっ……
でもあの未来無き胸では無理ね」
「それにね。
貴女達は他国の貴族の娘でしょ。
ツアイツにはゲルマニア貴族の私が一番お似合いなのよ。
貴女達は自分の国の男を探しなさい」
「ルイズだってモンモランシだってクラスの男子から言い寄られてるんでしょ?
知ってるわよ。
それらで妥協しなさいな」
「特にモンモランシはギーシュから熱いアプローチを受けているのは皆知ってるわよ」
「はぁ?ギーシュ?
冗談でしょ。
人は良さそうだけど嫌よ薔薇男なんて。
どう見ても見栄っ張りの浪費家で金銭的感覚は親譲りで見込み無く商才無しじゃないの!」
「男はね……
金よ金なの!
金を稼げない男なんて嫁を貰う資格なんかないの!
それだけの才能が有って若くてハンサムで優しくて次期領主なのよ。
他国の貴族がなによ。
このままじゃ国内の金持ち貴族の年の離れたオヤジかジジィの後妻に収まるなんてまっぴらお断り!
まして若い相手を見つけても有能でなければ駄目だしそんな相手周りには彼しか居ないじゃない。
破産して没落かお家取り潰しになるよりよっぽどマシよ!
はぁはぁはぁ……」
うわぁ……
凄い本音をぶちまけたわ!
でも確かにそうね。
没落中のモンモランシ家の一人娘の婿に同等以上の家格の同世代の貴族はこない。
立て直す自信と能力の有る男もそうは居ないだろう。
プライドや世間体を考え国内の格下貴族で有能な者を探しても精々年上か下手したら後妻かもね。
それが分からずに馬鹿にしたりする貴族も沢山いるのがこのトリステインだから。
ツアイツ位有能な者を持ってきて実績を見せつけて立て直せば元々の有力貴族のモンモランシ家を悪くは言えない。
更にツアイツはヴァリエール家とも親しい。
一人娘でも子供に家督を継がせれば……
考えたわね。
あとは乙女心ね。
私だって有能でもオジサマは勘弁だし。
ただこの子のツアイツに向ける気持ちは動機が不純だけど本物ね。
こういうミーハーでなく実を求めるタイプはしつこいのよね……
厄介だわ。
「お嬢様方お茶とケーキの用意が出来ました」
「「「…一旦休戦にしましょう」」」
執務室にて
メイドに囲まれながら仕事をするのも久々だなぁ……
もう十分稼いだから現代感覚だったら引き籠もりニートでもOKなのに。
しかし前なら可愛い女の子の部下なんか出来なかったけどね。
内政特化メイド4人衆。
右からエーナ・ビーナ・シーナ・デーナ……
某ベアトリスさんの取り巻きみたいな名前ですね。
他の子と違い彼女達は下級貴族の次女以下の子達で本来は上級貴族のヴァリエール家に居たのだがなんの因果か今はウチに居る。
いくらカリン様の命令とは言え彼女達の実家との調整は大変だったよ。
でも苦労以上に有能な子達なので満足しています。
モンモランシ家との交渉はモンモンの強力な後押しで上手く行くだろう。
グラモン家の方は微妙だ……
やはり軍人系の貴族はゲルマニアの貴族に対して隔意が有るな。
まぁこちらはモンモランシ家と違いどうしても接触したい訳ではないのでゆっくり様子を見よう。
場合によってはギーシュの力を借りてもいいかな。
ゼロ戦の解析と転用可能な技術の報告書……
装甲の超々ジェラルミンの安定的な錬金に成功した。
これで強度が有りしかも軽い金属の使用が可能となり断熱材のハニカム構造とかも盛り込んだ耐熱・耐衝撃性能を併せ持つ装甲が出来た。
車輪やサスペンションも転用し乗り心地の改善に貢献しかなりの高性能馬車が出来上がった。
これを完全装甲馬車として改造し完成した1台をアルブレヒト3世に献上する。
今後の顔つなぎと中央への進出の足掛かり程度にはなるだろう。
これらは色々なグレードを用意し貴族から平民まで需要に合わせた性能の商品化を目指す。
コンコン「失礼します」ナディーネが入ってきた。
「昼食の用意が出来ました。
今日は来客がいらっしゃいますので4人分を中庭のテラス席に設けています」
普段は皆と一緒に食べるのだが今日はモンモンも居るし仕方ないだろう。
「ありがとう。
では休憩にしよう」
僕は女の戦いが繰り広げられている事も知らずにテラスへと向かった……