第30話
アカデミー応接室にて
現在テーブルを挟みエレオノール様・アンリエッタ王女と向かい合って座っている。
僕の右側にはルイズ、左側にはオールドオスマンだ。
「アンリエッタ姫、何故学院の生徒を名指しで召喚などしたのじゃ?
しかもミスタツイアツはゲルマニアの貴族……
問題ですぞ?」
「あら?
私はただお友達とそのお付合いをしている殿方をお呼びしただけですよ?」
「私の研究の成果をミスルイズ経由でお教えするのは構わないと申しましたが正式にアカデミーで研究なされるというのは我がハーナウ家の功績をトリステイン王国が奪う……
と認識して宜しいのですね?」
「えっ?
そのような大袈裟なお話ではなく幼少の頃よりのお友達のルイズが暫く見ない間に……
その胸が大きくなったので出来れば我が国でも悩んでいる女性達の為に代表してミスエレオノールに研究して貰おうと……」
「アンリエッタ姫はエレオノール様に正式に豊胸化の研究をしろ!
と仰るのですね?」
「ええ……
彼女も悩めr「姫様……そのような浅はかなお考えでこの様な暴挙にでられたと?」
「アンリエッタ姫よ……
彼女にその様な研究を表立ってさせるのは……
その、配慮が足りないのぅ」
「彼女も貧乳d「オールドオスマンは黙って下さい」……しかしのう」
「お主の浅慮の所為でヴァリエール公爵家にゲルマニアのツェルプストーとハーナウの両家が動いておるぞ」
「ヴァリエール家は2人の娘が巻き込まれた事にゲルマニア側は自国の研究成果を奪われたと思っておる」
「私はその様な考えは……」
「私はこの豊胸化技術を世に出すつもりは(今の所)ありません。
なので姫様の要望もルイズ経由で個人的にならと認めました。
しかしアンリエッタ姫はそれを裏切りトリステインの国益としてこの研究を盗もうとしている……
と解釈しましたが」
「ミスタツアイツそのような考えは有りませんでした……
私は……」
「姫様は実は偽t「ちょーっとまったールイズそれはいっちゃダメダー!」
「姫様にその気は無くても廻りはそうは思わないのが貴族社会です……
しかし困りました。
こう表立って行動されては」
「ツアイツ殿……
少しご相談が有るので別室にてお話したいのですが?」
エレオノール様がそう持ちかけてきた。
流石だな。
落とし所を模索する相談だな。
「ではルイズも一緒に……
オールドオスマンはアンリエッタ姫のお相手をしてもらって宜しいでしょうか?」
「ワシ……
要らない子かのう?」
「いえその様な事は……
姫様暫く時間を下さい」
「わかりました。
では暫し休憩としましょう」
「ではツアイツ殿とチビルイズは私の研究室に来てちょうだい」
「オールドオスマン……
私はこの様な大事になるとは思ってませんでした」
「アンリエッタ姫よ。
お主の立場を考えるんじゃ。
お主のお願いはトリステイン王国の命令と同じ重さがあるのじゃよ」
「私にはお友達にお願いすることもできないのですか?」
「お主のお願いには強制力が付く……
それを受けた側の事も考えるんじゃ?
今回の件は他国の研究をアカデミーにさせようとしたのじゃよ。
ミスタツアイツは立場上ゲルマニアの国益を損なう事は出来ん。
じゃが理由はどうあれ断ればトリステインの馬鹿者貴族達はアンリエッタ王女に無礼を働いたと思い彼を非難し自分の良い様に動き出す可能性が有るのじゃ」
「その様な事は……」
「残念ながら無い……
とは言えぬな。
彼はこの国でも成功しているから敵も多いのじゃよ。
それに身内を大切にするタイプじゃ。
今回は自国の研究成果を奪う役目にエレオノール殿を選んだ。
そしてミスルイズを交渉の場に同席させた。
何か有れば彼女等も当事者になってしまう」
「そんな……
どうすれば?」
「それは……
多分エレオノール殿が落とし所を探してくれるはずじゃ。
しかしミスタツアイツは最悪の状況も想定し動いている。
つまりこの交渉が決裂しても周りを守れる準備と覚悟が有るのじゃ」
「準備と覚悟ですか?」
「アンリエッタ王女に足りないものじゃよ。
上に立つ者ほど重責が掛かる。
それを受け入れる覚悟が必要じゃな」
「ああ……
前にルイズが私に言った言葉……
「姫様はお立場と心構えがアンバランスだ……
立場が人の心を強くする……
一国の王女としての強さが有りますか?
権力ではない自身の強さですよ」
……と言われました」
「ほぅ!
それをあのミスルイズが?
中々の言葉ではないですかの」
「思い人の受け売りだと言ってましたが……
それがミスタツアイツの覚悟なのですね」
ぐふふ……
ワシ教育者として活躍してるのう!
エレオノールラボ
「ツアイツ殿どう言う事ですか?」
「エレオノール様……
実はアンリエッタ王女の胸にはパットが入っていてその本来は微妙な大きさなのです」
「うん。
先日学院に来た時に確認したわ。
微妙な大きさなのよ」
「しかしお目当てのウェールズ皇太子は大きい胸が好き……
だから豊胸技術は確実に欲しい」
「そんなどうしようもない理由でこの騒ぎなの?」
「仕方ありませんよ。
エレオノール様はアンリエッタ姫の胸の秘密を知らなかったのですから。
何か有ると思いますよね?
僕だって最悪の事態を想定して手を打ちましたし」
「最悪とは戦争って事?」
「いえ断った場合に王女のに対し不敬だと先走った貴族が居た場合の迎撃措置ですよ」
「貴方は……
本当に用意周到ね。
しかし今回は裏目に出たわね」
「ええ、まさかこんなおバカとは思わず話を大きくしてしまいました」
「困ったわね……
アンリエッタ姫の胸の件は秘密でしょうし……
あとは貴方の成果を正当な金額で購入するかね」
「成る程、それなら多少強引ですが納得出来る理由ですね」
「でも豊胸技術は不味いわね……
私だってそんな研究は嫌だしアンリエッタ姫だってそんな研究を推し進めたなんて……」
「普通に考えて無理ですね。
アンリエッタ姫の肝いりの研究が豊胸?
駄目でしょ?
対外的にも」
「他に何か無い?
トリステインに渡しても良い技術系の物って?」
「んーいきなり言われても……」
「どれも利益に絡むものだし……
超々ジェラルミンはこれからの主力商品だし……」
「なにそのジェラルミンって?」
「最近安定した生産が出来る様になった鉄より軽くて丈夫な金属です」
「それ教えてもらってないわよ?」
「すいません。
来月から売り出す馬車の外装に使う金属でアルブレヒト3世にも献上する品なので」
「他にはなにか無いの?」
「ねぇ?
ツアイツってトリステインでも凄いファンが居る脚本家でしょ。
だから姫様が新作を希望してお願いしたってのはどう?
アカデミーには演出の技術的な相談が有って私が同行したのは直接他国の貴族と接触しない為の紹介者って事で……」
「「凄いこじ付けだけどそれしかないか(わね)」」
「それで行きましょう。
ルイズはアンリエッタ姫の豊胸指導をツアイツは私と新作の演劇について打合せを」
「むー私のアイデアなのに私が損してない?」
「ではウチの劇団を誘致して下さい。
それとトリステインの劇団と会わせて2つの劇を競演させましょう」
「そうね。
そちらの劇団だけでは角が立つからウチの国の劇団も同時に公演させるのね」
「新作を競演し出来る事なら定期的に興行したいな」
「貴方は……
本当に強かね。
既に継続的な興行まで話を進めるなんて」
「だって面倒臭い既得権を持つトリステインの劇場や劇団には姫様というか王宮が対処してくれるんでしょ?」
「まぁそうなるわね。
アンリエッタ姫も胸の秘密は知られたくないから必死になるわね」
「なら最大限に利用させて貰わないと……
大丈夫、ヴァリェール家も一枚咬んでよ!」
「本当に……
貴方は何と言うか本当にルイズと同い年なのかしらね?」
「どうです?
エレオノール様も役者デビューしてみませんか?
沢山のファンが付くと思いますよ」
「それは無理ね。
私にも立場が有るし子供時代の貴方とミスキュルケとは状況が違うわよ」
「そうですか残念だなぁ……
それだけ美人なら人気が出るのは確実なのに」
「そ、そそそそんなに言うなら考えてあげてm「駄目でしょ?
大貴族の跡継ぎが役者なんて!
如何してもっていうなら私が出演するわよ」
なによチビルイズは姫様の胸の心配だけしてなさい!」
エレオノール様とルイズが2人してほっぺの引っ張り合いを始めた……
本当に仲の良い姉妹だよね。
そういえばカトレア様にも久しく会ってないな……
この新作の脚本を書いたら物語にして贈ろう!
君の意味深な台詞で長女と三女が姉妹喧嘩を始めたのに次女の攻略を考えちゃ駄目でしょ?
2国間であわや戦争開始かも知れなかった問題でオールドオスマン&アンリエッタ姫組は深刻に悩んでいたがこちらの当事者達は呑気だった。