第36話
おはようございます。
ツアイツです。
トリステイン王宮から正式名な回答が来ました。
僕の提案した(事になっている)ゲルマニアとトリステインの競演による演劇について。
前向きに検討したがトリスタニアの劇場では既得権が複雑でありゲルマニアの劇団を誘致する事は難しい。
しかし脚本としてアンリエッタ王女に献上した物をトリステインの劇団が上演する事は問題ない。
要約するとそういう事だ。
利権が絡むからよその劇団は公演させないが無償で献上した脚本なら此方が好きに公演しても良いよ。
なんとも向うに都合が良い内容だ。
やはりアンリエッタ姫にはまだまだ利権の絡む折衝は難しいという事か……
しかしこれで断るとまた騒ぎ出す連中が居るんだよな……これが。
だから無料で1本脚本を書かなければならないだろう。
しかしアンリエッタ姫個人には大きい貸しが出来る。
ルイズの豊胸技術指導と会わせて二つの貸しが……ね。
最近エロばかり書いているから真面目な恋愛物でも書くか……
それに脚本家として名前が出るから僕の名声は上がるので全くの損ではない。
むしろ脚本を物語として売り出す際の良い宣伝にしかならないだろう。
見に来れない平民には本は売れる。
そして人気の高いアンリエッタ姫が絶賛してくれれば尚更だろう。
アンリエッタ姫が気に入った脚本を演劇し失敗したり不振だったりしても責任は向うだから安心だ。
作品名は「真夏の夜の夢」
シェークスピアの初期の作品でロマンティックで奔放な作風の名作だ。
妖精のオベロン王やティターニア王女が登場し惚れ薬が作品のキーアイテムとなるこの作品はハルケギニアでも受け入れられるだろう。
勿論、妖精は精霊に惚れ薬も水の精霊の秘薬に替える。
内容はとある国の王女と別の国の王子の結婚話が進んでいる。
王女の国の家臣が自分の娘が気に入らぬ若者と恋仲になりそれを引き離なし自分の勧める相手と結婚させたいと王女に相談する。
王女は悩むが自分の結婚式までに娘に親の言う事を聞くか聞かないかの猶予を与える。
娘は友人に相談するがその友人は親が勧める娘の相手に片思いをしていた。
4人は各々の思惑を秘めて魔法の森に向かう。
その森にリアル夫婦喧嘩をしている精霊王と王女が居た。
精霊魔法を駆使して戦う迷惑夫婦は森の半分を破壊しティターニア王女が留めの一撃をオベロン王に見舞い逃走!
ティターニア王女は泉の辺で不貞寝してしまう。
九死に一生を得たオベロン王!
しかしこれでは身が持たぬと部下にティターニア王女に惚れ薬を(この惚れ薬は瞼に塗るタイプ)塗らせ自分に再度惚れさせて有耶無耶にしようと企む。
が、この部下はおバカで森に侵入した人間達4人共にも塗ってしまう。
人間の男2人は相談を持ちかけられた娘の方に一目惚れをしてしまう。
しかもティターニア王女は部下の悪戯で顔をロバにされた男を好きになってしまい大混戦……
トンでもない三角関係のコメディを演じてしまうのだ!
この混乱を納める為にオベロン王は奮闘し目出度くティターニア王女と復縁し人間の男女4人は2組のカップルとなり一件落着。この話にシェークスピアが込めたメッセージとは……
「真実の恋と言う物はどんなに権力の有る者でも決して好都合にいった試しは無い!」
という事だ。
そして僕が込めたメッセージは……
散々振り回してくれたアンリエッタ姫の恋愛にチクリと嫌味を込めた作品だ。
この作品は先ずアンリエッタ姫に献上する。
その際に物語としての版権は此方に有ると言質を取り書面にて確認・サインしてもらう。
あとはトリステインの劇団の腕の見せ所と言う事で……
これは300Pを超える大作になってしまった為に2週間を要した。
この間にミスタバサは学院に戻って来なかった。
ガリアは広くここからグランドトロワまでは大体1000km有るんだっけ?
風竜を使っても時間が掛かるよね。
ワルド殿にはミスタバサが戻ったら連絡を入れる事になっている。
それと先のアンリエッタの軽率な行動に便乗しそうな貴族の調査を頼んだがそれらしい動きをする貴族は居なかったらしい。
行動がいきなりすぎて手を出す事が出来なかったか?
そして困った事が1つ……
学院秘書を電撃退職したロングビルさんだが執筆中は編集者の如く僕の部屋で待機・監視している。
とても有能で困ります。
そして先輩専属メイドのソフィアとは仲良くやっています。
書き上げた原稿をロングビルさんに渡すと手際よくページ数を確認し
「では校正に廻します」
と出て行った。
ロングビルさんを部屋から送り出してふと思い出す……
アカデミーから馬車で学院に戻った時の事を。
ロングビルさんはキュルケとソフィアを屋敷に送る時に序に辞表をオールドオスマンの机に置いて行ったらしい。
僕の部屋に辞表を握り締めて怒鳴り込んできた時には何事かと思った……
ジジイの泣き顔など見たくも無かったのにアップで散々愚痴を聞かされ挙げ句の果てに部屋の本棚にあった男の浪漫本を全て没収して行った。
別に一般閲覧用だからまだストックも有り問題は無かったのだが周りの同級生達はそうではなかったらしく学院長室に直訴に行った。
さて作品を投稿し終わった作家さんの行動とは1つ……
呑みに繰り出す事ですよね。
今夜は「魅惑の妖精亭」
に繰り出しますか!
飲み友達を誘って……
SIDE元素兄弟
イザベラから下された指令……
1つはトリステイン王国魔法衛士隊グリフォン隊隊長ワルド子爵を調べ不誠実な性格なら……
イザベラ様の言葉をそのまま言えば
「モギレ……」
だそうだ。
何処とは言わなかったけど多分アソコだろう。
もう1つはゲルマニアのハーナウ家の次期当主の身辺調査とその秘密を探る事。
「面倒臭ぇよジャネット……
人気の無い所で襲っちまおうぜ!」
「そうだなドゥドゥーの言う通りにしようぜ。
俺は同じ土メイジとして次期当主を襲うぜー」
「馬鹿……
あんた達は黙ってな。
で兄さんとうするの?」
「そうだね、ジャックやドゥドゥーの言う通り一回襲ってみるか?」
「「そうこなくっちゃ!」」
「失敗しても私は知らないよ……」
「奴らは「魅惑の妖精亭」に入ってから2時間位経つし……
丁度襲撃には良い時間になる。
帰り道で襲うぞ」
「あんな店に入る時点で不誠実が確認出来たからね…
モギろうぜ」
「ジャネットとジャックは次期当主を僕とドゥドゥーは子爵を襲おう」
「魅惑の妖精亭」店内
店内にはツアイツとワルド子爵がジェシカとスレンダー4人娘を囲んで盛り上がっていた。
「ツアイツ先生、新作を書き上げたそうですね」
「うん。
アンリエッタ姫に献上したら暫らくすればトリスタニアの劇場で上演される筈だよ」
「すごーい!
でも私達平民には見せてもらえないから……」
「んー上演したら直ぐ出版されるから平気だよ。
一般用だと55スゥで売り出すし貴族用の豪華ハードカバー本で2エキューかな」
「ワルドさまー欲しー買ってー」
「分かった分かった……
任せなさい」
「あらあらまあまあ……
すっかり彼女等と打ち解けてますね」
「んーここに原作者が居るんですけどね?」
「でも先日もグリフォン隊の隊員達を全員引き連れて来てくれたんです。
その時に偶々徴税官のチェレンヌ様がいらして無理を言われたのですがワルド様が解決して下さいました」
「あーチェレンヌ子爵もゴロツキを引き連れてるけど現役魔法衛士隊に適う訳ないね……」
んーここでも原作イベントを1つ拾ったんだね。
「じゃワルド殿達の人気は凄いんだね」
「妬けますか?」
「くす……まさか!
ジェシカが無事なら文句は無いさ」
「まぁお上手ですね」
これから襲撃される2人は何処までも呑気に呑んでいた!
しかも完全にキャバクラで女性を口説くオヤジと女性にたかられるオヤジとして……
しかしジェシカは口説かれ喰われたら最後、黒化シエスタの襲撃を理解していた為に及び腰だ!
誰も夜中に枕元で包丁を研がれたり包丁二刀流で追い回されたくは無いだろう。