第38話
ワルドは爆発音の聞こえた付近へと急いで向かった。
そして正門近くの市街地の一角で戦闘が有ったであろう場所を見つけた。
2体のゴーレムが絡み合って倒れているがどちらも制御を失いグズグズになっている。
特徴的なフォルム……
確かツアイツ殿のゴーレムか。
王宮貴族にバレると面倒なので破壊しておく。
既に崩壊が始まっているので簡単だった。
これはゴーレム戦に持ち込み例の爆発ブーメランで煙幕をはり逃走したか?
周辺の破壊状況から推測し遍在を3体出して捜索させる。
死体は無い。
血痕なども見当たらない……
上手く逃げていると良いが……
衛士にはツアイツ殿の話は伏せて僕が襲われたという内容の方が問題を起こしたくない彼に配慮出来るか……
しかしこの騒ぎだ。
グリフォン隊にも要請が有るかも知れないので王宮に向かわねば……
ツアイツ殿、ご無事で!
SIDEツアイツ
深夜の薄暗い路地を美女に手を引かれて走っている。
妙齢の美女では有るが相手が大問題だと思う。
しかしどうする?
厩舎には僕の使った馬が僕の名前で預けられている。
このままでは僕が戻らないと連絡が行ってしまう……
不味いな。
「お姉さん、正門近くの厩舎まで向かいたいんだけど……
何処に向かってるの?」
「シェフィールドで良いわ……
そうね馬を何とかしないと駄目ね……
ちょっとこっちにきて」
そう言うとシェフィールドさんは路地脇の窪地の様な空間に僕を引っ張りこむとニッコリと笑った。
「これは短距離だけど転移出来るマジックアイテムよ。
使うには貴方のイメージが必要だけど平気?」
「いやいきなりそんな高価なマジックアイテムを出されても……」
「ほら追っ手が近付いているわ……急いで!
イメージして」
僕は小さい木箱を握らされ厩舎の近くをイメージする……
突然の浮遊感の後、周りを見渡せば見慣れた厩舎が有る。
見渡すと彼女は居ない……
イザベラの手下が僕を襲いジョゼフ王の腹心が僕を助ける?
ガリアの内部で僕の評価は如何なっているんだ?
取り敢えず厩舎に馬を取りに行く……
顔見知りの為か貴族だからかチップの額の所為か特に疑われずに馬を受け取り正門から出られた……
急いで学院に戻ろうと馬を走らせる。
すると並走するもう一匹の馬が……
シェフィールドさんが見事な手綱捌きで馬を寄せてくる。
「有難う御座います。
何かお礼と先程のマジックアイテムの代金を払いたいのですが」
取り敢えず友好的に話しかける。
「良いのです。
主から貴方を手伝う様に言われてますから」
え?
ジョゼフ王が僕の手助け?
なんの冗談だろう?
「貴方の主は何を考えているのですか?」
思わず馬の足を緩めて聞き返してしまった……
シェフィールドさんは嫣然と微笑むと……
「知りたいですか?」
と聞いてきた。
「ジョゼフ王にそこまでして貰う理由が分かりませんから?」
僕は直球で聞いてみた。
彼女は少しだけ眼を見開いて驚いたあと
「噂通りの有能さね。
何時から気付いていたの?」
「黒髪・美女・額のルーン・ローブを着用・名前・マジックアイテムの扱い。
そして北花壇騎士団に襲われた事を総合的に考えて……」
「私の情報ってそこまで流れているの?」
「まぁ色々と僕にも伝手が有りますから……」
「ふふふっ楽しいわね貴方……
また会いましょう」
そう言うとシェフィールドさんは馬首を廻らせ別の方向にと走っていった……
娘に命を狙われ父親からは助けられる?
本当にどういう状況なんだコレ?
この時期にあんな大物が出て来るなんて想像すらしてないぞ。
部屋に戻り梟便にてワルド殿に今夜の詳細を送る。
北花壇騎士団に襲われたが本気で殺しにきた訳でも無い事。
それとジョゼフ王の手と思われる者に助けられた事。
タバサは未だ学院には戻ってない事と、僕が無事に学院まで帰り着いた事等だ。
多分残りの2人にワルド殿も襲われたと思う……
元素の兄弟は作中では4人。
しかし彼なら襲われても撃退又は逃走に成功したと考えるのが普通だな。
僕と違い荒事の本職だし……
最初から逃げを打っていた僕とは全然違うだろう。
これは少し鍛え直して貰わないと不味いかもしれない……
即死亡フラグだったな今夜の襲撃は。
シェフィールドさん……
原作では敵方で厳しい相手だったが最後はジョゼフ王を殺し無理心中を謀ったヤンデレさんだ。
ヤンデレ……
今までに居なかったジャンルだな。
ヤンデレで作品を書いてみようかな……
でも受け入れられるかな?
普通に考えれば病的に押しかける頭のネジが緩んだ女性だしなぁ……
まだハルケギニアでは受け入れられる土壌は無いな……
無理かヤンデレは……
「何なんですかそのヤンデレって?」
え?
振り返ると僕のベッドに嫣然と座るシェフィールドさんがいた……
「……えっと夜這い?」
「違います」
ちょっと怒らせたかもしれません。
「取り敢えず何故ここに居るのか聞いて良いでしょうか?」
「して欲しいお礼を考え付いたから……かしら」
悪戯の方法を見つけた子供のような目で楽しそうに此方を見るシェフィールドさん。
えーと童女のように愛らしいのですがコレがヤンデレの素養ですか?
「伺いましょう……
最大限努力します」
「あら?聞き分けが良いのですね……
簡単ですよ。
貴方の秘書になりたいのです」
「えーと貴方の忠誠度を考えると二君に仕える訳がないので理由を聞いて良いでしょうか?」
「どこまで情報を握っているのかしら?
まだ学生なのに他国の情報を正確に把握しているなんて異常よ」
病んでる貴女に異常扱いはされたくないんですが……
「それなりに有能だとは思ってます……
それで先程の質問に答えてもらえますか?」
「そうね……
我が主がこれから大変になる貴方の力になる様に私を遣わせた……
が最も正しいかしら」
「僕がこれから大変になる?」
「そうよ。
このハルケギニア全土を巻き込む騒乱の渦の中心は貴方と主だわ」
騒乱?
レコンギスタの件か?
アルビオンでの内乱は未だだがもう準備期間に入ってる筈だ……
でもゲルマニアの僕がアルビオンとトリステインの問題に係る意味が分からない……
「もう少しヒントが欲しいな」
「あら?ではもう1つ……
オリヴァークロムウェル」
「なっ?レコンキスタか!」
「貴方って本当に有能ね。
それだけでまだ暗躍中の組織まで辿り着くなんて……
流石は我が主が認めた方ね」
「しかし……
ゲルマニア貴族の僕がアルビオンの内乱に巻き込まれる意味が……」
「もう驚かないけど……
仕込んでいる最中の場所まで特定出来るのね」
「最初の質問に戻るけど……
僕に何を望むのかな?」
「貴方には巨乳派の教祖として美乳派のクロムウェルと戦って欲しいの。
そして全ての敵に打ち勝って我が主の元に……」
「オッパイでクーデターが出来るかー!
乳とは争いを唆す物では無い!」
「でもあの変態坊主はそれで既に幾つかの貴族を取り込みつつ有るわよ」
「因みにジョゼフ王は巨乳派なんですね?」
「そうかもね?
でも我が主は色事には興味が薄いの……
だから争い最後に残った勇者との対面を望んでるわ」
「何故?」
「己が春を取り戻す為に……」
「ジョゼフ王ってEDなの?」
「EDとは?」
「いや男性としての機能が弱いとか淡白とか男女の秘め事に興味が薄いとか?」
「ええ。
その……私にもまだ手を出してないわ」
「それは……勿体無い。
色々と有るんだけど良いのが」
「えっ……どんなの?」
「例えばマイサンの基本サイズを大きく成長させたり……」
「まぁ!」
「これは局部の感度を高める物です」
「えっと……どっちの?」
「男女共です」
「他には?」
「そうですね。
コレなんかは……」
シェフィールドは大人の玩具に興味津々ノリノリだった!